マキュニシェの戦い⑬
ギヨウは敵を蹴散らし、ついには敵陣までたどり着いた。
急いで駆けて来たため、ギヨウは一人である。
それは、かつてのギヨウの失敗と同じ事だが、それを意識するほどギヨウには余裕はなかった。
一刻も早くミュエネを助け出さないといけないからである。
「ミュエネ!どこだ!」
多くの敵は撤退した後である。
それでも、敵がいるかもしれないのもお構いなしに、ギヨウは大きな声を出した。
「敵か!」
「こんなところまで!」
実際に敵が集まって来るが、その数は大したことはなかった。
「ぐわぁ!」
「うわっ!」
その敵を軽く蹴散らし、ギヨウは走る。
「あそこか!」
そして、一番大きい天幕を見つけると、そこへと向かったのだ。
「ミュエネ!」
そこで、檻の中に入れられたミュエネと、その前に座り込んでいる女を見つける。
「来たね」
ギヨウを確認すると、女が立ち上がた。その目は赤く、泣きはらしたのだと確認できる。
ギヨウは、女の次の言葉を待った。
「我が夫オグルブの武人としての誇りにかけて、この女には手を出していない」
そして女は、鍵を使って檻を開ける。
「ほら、行きな」
女に促されるまでもなく、折から解放されたミュエネは、ギヨウの元へと駆けて行く。
しかし、途中で顔を赤くして立ち止まる。
「なんだよ?」
「別に……助けてくれてありがとう。ギヨウが勝利すると信じてたわ」
何故かミュエネは少しよそよそしく、顔を赤らめたまま横を向いて感謝の言葉を言った。
「ああ、俺にはお前達の想いが届いてたよ。おかげで勝てた」
ギヨウはミュエネの様子がおかしい事に気が付いていながらも、そんな事を言ったのだが、思いの外恥ずかしい台詞だった事に気が付き、ギヨウも顔を赤らめて、照れ隠しに横を向いたのだ。
そのため、何とも言えない空気が流れる。
「お取込み中悪いんだけど……あたしもあんたの妻にしてくれないかい?」
「はあ!?」
その空気をぶち壊す一言を女が言い、ギヨウは驚く。
「オグルブに勝ったのあんたには、その権利があるんだよ。私以外にもここに来るまでにそう言う奴はいなかったかい?」
「ああ、いたな」
女の言った通り、ここまで来るのに降伏した敵は多かった。
オグルブが今までやってきたやり方を、ギヨウが意識せずにしたという事なのだろう。
そういった者達は捕虜として、とりあえず捕えていた。
「いや、でもな……」
「駄目よ」
ギヨウが歯切れ悪く答えたところ、すかさずミュエネが断りをいれる。
「あ、ああ」
「駄目よ、ギヨウ」
そうだな、と答えようとしたところ、ミュエネが念を押してくる。
「悪いけど、駄目だな」
「そうかい、残念だ」
抵抗する様子のない女は捕虜として、ギヨウとミュエネは仲間を待つ。
「大丈夫だったか?」
「うん」
ただ、何故かミュエネはよそよそしいというか、どこか落ち着きがない様子であり、何とも言えない微妙な空気のまま待つことになったのだった。
「ギヨウ、ミュエネ!」
そしてアカツキ隊の仲間達が到着すると、仲間達はミュエネが無事であったことを凄く喜んだのだった。




