マキュニシェの戦い⑫
ギヨウとオグルブは戦っていた。
戦い続けていたのだ。
「オオオ!」
「ヌウンン!」
一騎討ちが始まってから、六日目となる。
その中でもこの日は、特に激しく討ちあっていた。
ギヨウは、ゼルバに背中を叩かれ激励されたと言う事もあったかもしれない。
もしくは、野生の勘で戦の終わりを感じ取っていたのかもしれない。
なんにせよ、今日、互いに勝利をつかみ取りに来ているのは明白であった。
「ギヨウ!」
そして、その瞬間に、ギヨウの耳にその声が届く。
「勝って!」
ギヨウはそれに言葉では答えなかった。代わりに剣で答える。
そして、聞こえて来る声援は、シルルのものだけではなかった。
「ギヨウ、君なら勝てるよ」
副長のジェスの声だ。
「隊長!」
「勝てよ!」
それに、ダンレンやボズル、レシヘストなど仲間達の声もである。
「「「おおおおおおおお」」」
それは重なり合い。大きな声援となってギヨウの体を震わせた。
「オグルブ様!」
「勝利をこの手に!」
だが、それはギヨウだけではない。
オグルブにも、仲間達からの声援が送られるのだ。
オグルブもまたその声援を受けて、体を震わせた。
そして、互いに気持ちを乗せた渾身の一撃を放ったのだ。
「うおおおおおおお!」
「ぬううううん!」
甲高い金属音を出して、互いの武器がぶつかり合う。
そして、互いの武器の刃で押し合う形となる。
「おおおおお!」
「おおおおお!」
意地と意地である。
互いに引くことはない。
そして、互いの力は拮抗しており、互いの武器が動くこともなかった。
その時、ギヨウの背中が熱くなる。
ゼルバに激励され、押された背中である。
いや、それだけではない。
仲間達の声が、もういなくともシンザやダククガの仲間達の手が、ギヨウの背中を押してくれるのだ。
「うおおおお!」
だからこそ、少しづつギヨウの剣が、オグルブの矛を押し出したのだ。
そして、ついにギヨウの剣はオグルブの矛を押しのけ、オグルブの体を剣が斬り割いたのだ。
オグルブは正面から体を斬り割かれ、おびただしい量の血を吹き出す。
(勝った)
ギヨウは確信する。
それは油断であった。
「おおおお!」
オグルブは体を斬り割かれながらも、弾かれた矛を持ち上げ、剣を振り下ろした格好のギヨウへと矛を振り下ろした。
「しまった!」
防ぐことは出来ない。
ギヨウはそう考える程、鋭い一撃であった。
しかし、その一撃は途中で止まる。
「ふっ、小僧。お前の勝ちだ」
オグルブ自信が止めたのだ。
それは、自分の敗北を認めたからこそ、相手を道連れにすることをオグルブの誇りが許さなかったためである。
そして、オグルブは力尽きて落馬した。
「ギヨウの勝ちだ!」
シルルが叫び、
「勝った……」
「隊長が勝ったぞ!」
「「「オオオ!」」」
仲間達が勝ちどきを上げた。
「勝ったか」
「あいつ、やったな」
「やりおったわ小僧」
それは、離れたところにいるセロガやセニオガネス、ガンビカ達にも届き、フェズ軍全体を鼓舞することになる。
「まだ終わってねえぞ!敵陣を目指す!ミュエネを救出するんだ!」
勝利の余韻にも浸らず、ギヨウが号令をかける。
それは、ミュエネが審判だからこその言葉であった。
「おおおっ!隊長に続け!」
そして、もはや勝敗は決していた。
大将を失った部隊と、勢いづいたフェズ軍では、どちらが優勢かは語るまでもなかった。
更に言うなら、この戦いの裏では、ロヤの策は失敗し、秀の将ジアヒスも失われていたのである。
そのため、間もなくしてエルエ軍は壊滅することとなったのだ。
ロヤは、悲しみに暮れる暇もなく、悔しさで心を満たしたまま、エルエ軍を撤退させることとなったのである。
ここに、マキュニシェの戦いは、フェズ軍の大勝で終わったのである。




