新天地④
ギヨウが自分の土地と家を手に入れたから、更に一か月の時が経った。
シルルは、最初に三日ほど滞在してから帰って行き、それからはギヨウは一人での生活となる。
そして今日も、朝になるとギヨウは目を覚ました。
ギヨウは目を覚ますと、まずは川に顔を洗いに行く。
水場が近いのは、思った以上に素晴らしい事であった。
最も、ギヨウの家を建てた者も、川が近いからこそ家を建てたのだから、偶然ではないのだろうが。
その次は畑仕事である。
ギヨウは、ゼルバから金はもらっている。最初こそ物の相場がわからず戸惑ったが、一年ぐらいは働かなくても生きていける程度の金はもらっていたようである。
とはいえ、何もせずに過ごすという事はギヨウの頭の中にはなかった。
(流石にそれはちょっとな……)
それに、何か不慮の事故のような事もあるかもしれない。
だが、当然ギヨウは畑仕事などやったことがない。
それに、シルルに聞いても、「貴族の私がやったことなどあるわけないだろう」と言われてしまったのだ。
だから、独学でやってみたのだが、上手くいくはずもなかった。
それでも、今は多少はマシな畑を作れているし、植えた野菜も多少はマシに育ってきていた。
それにはもちろん理由があった。
「おーい!ギヨウ!どうだ?」
街の方から、二人の少年が手を振りながらやってくる。
「ああ、今度は大丈夫そうだ」
この二人こそが、ギヨウの持つ畑がマシになった理由であった。
二人は兄弟であり、名前は、ドヴィ・ロシス・シンザと、ドヴィ・ロシス・ダククガという。
シンザの方が兄で、ダククガの方が弟である。
この二人は近くの農家の息子である。
歳が近いギヨウとは、家が近いという事もあり、この一か月で仲良くなったのだ。
二人に、ギヨウは畑について教えてもらい、多少はマシになったという事であった。
「よくあんな状態からこんだけマシになったな」
「俺達に感謝しろよな」
二人ともお調子者という感じの正確であるが、やはり兄のシンザの方がしっかりとしており、ダククガの方はまだ子供という感じである。
「感謝はしてるよ。飯も食わせてもらってるしな」
ギヨウの畑が上手く行ってないのを見て、シンザ達は家の仕事の手伝いに誘ってくれる。
代わりに、少しの給金と、飯をギヨウは受け取っていた。
「じゃあ、今日も行くか?」
「ああ、そうだな」
そして、今日もギヨウはシンザ達の手伝いをしに行く。
これが、今のギヨウの一日の過ごし方である。
もちろん、鍛錬も忘れず続けているのだが、それが発揮されることは、この一か月の間にはなかった。
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それは、その日の夜の事であった。
馬の鳴き声で、ギヨウは目を覚ます。
ギヨウは、寝起きでも迷うことなく剣を手に取ると外に飛び出した。
そとでは、顔を隠した男が四人でギヨウの馬の綱を解こうとしていた。馬が抵抗したので手間取っているのだ。
「おい!何してるんだ!」
ギヨウが飛び出しながら叫ぶと、四人は驚きながら剣を抜く。
「遅い!」
その一瞬の隙をついて、ギヨウは相手よりも早く剣を抜いて、一人を斬り伏せてしまう。
「ぐあっ!」
不幸にも、ギヨウの一番近くにいた男は、くぐもった声をあげて絶命する。
(次は……)
「なんだこいつ、やべえ!逃げるぞ!」
「え?」
ギヨウは次の相手を定めようとしたのだが、残りの三人は一目散に自分達の馬に乗り込んで、逃げ出し始めたのだ。
「まあ、いいか……」
追おうと思えば追えたのだが、ギヨウは馬鹿らしくなって追う事はしなかった。
あまりにも見事な逃げっぷりだったからである。
「どうしようかな、こいつ……」
実害はなかったのだが、家の前に死体が出来てしまった。
「明日考えるか……」
気が抜けたら眠気が出てきてしまい、ギヨウは欠伸をする。
夜中に飛び起きたのだから仕方がない。
そうなると、もう死体の事よりも、睡眠の事の方が大事になってしまっている。
だから、ギヨウは家の前の死体は放っておいて、家に戻ると再び眠りについてしまったのだ。




