新天地③
軽い感じで出発したシルル達であったが、目的地に着いたのは二日後の事であった。
「なあ、結構かかるとは言ったけどよ。かかりすぎじゃないか?」
ギヨウの感覚で言うと、馬を走らせるのならば、半日程度で着くのではないかと考えていたところである。
「ゼルバ様はフェズ国内でも多くの領地を持っている。その中で空き地ともなると城から遠くなるのは当たり前だ」
シルルは自分の事でもないのに、誇らしげに語った。
「それでも、それなりの場所を用意してくれているぞ。感謝しろ」
目的地らしい場所は、それなりに広い街であった。
「まあ、それは……ありがとう」
シルルに感謝しても仕方がないが、ギヨウは一応感謝の言葉を言っておいた。
それに、シルルは満足したのか、機嫌よく馬を街に向かって走らせた。
「まずは、町長に挨拶だ。流石に何も言わずに住み込んだら追い出されるぞ」
「なるほどね」
ギヨウも、軽く馬を走らせる。
この二日で、随分と馬の扱いを上手くなったと、ギヨウは自負していた。
すぐに街へと入ると、町長の家を調べて、そこへ向かう。
「どなたですかな?」
町長は、まさにと言う感じの老人であった。
「ゼルバ様の命で来ました。この書状を」
「ふむ、正式な書状のようですし、私から言う事はありません。どうぞご自由に書いてある土地をお使いください」
「ありがとうございます」
町長への挨拶はあっさりと済み、すぐにギヨウの土地へと向かうことになる。
流石のギヨウも、新しい自分の住処という事となると、かなり気持ちが高揚してくる。
だが、歩いて行くうちにそれは不安に変わっていった。
「なあ、本当にこっちなのか?」
街の中心からどんどんと離れて行っているからである。
「ああ、言っただろう。荒野の土地は余っているだろうが、街のある場所の土地は、離れしか空いてないんだ」
その言葉の通りに、二人は歩いているうちに、街から外に出てしまう。
「なあ、この先にある家って一つしかないんだが」
ギヨウの目に映るのは、街から外れた荒野にぽつりと立っているボロボロの小屋のような家である。
「そうだな。お前にはお似合いだ」
シルルは相変わらず辛辣な事を言う。
「まじか……」
そのボロボロの小屋は、近くに来ても当然ボロボロであり、この小屋がギヨウの家という事になるようである。
「良かったな。川は近くにあるぞ」
「それは大事かもしれないけどな……」
それでも、とんでもない所を寄越されたものである。
「まあ、頑張るんだな。それじゃ」
シルルは冷たく突き放すと、馬に乗って帰ろうとしてしまう。
「いや、ちょっと待て。せめて片づけるのは手伝っていってくれよ」
「嫌に決まっているだろう。私は忙しいんだ」
(忙しくないから、ゼルバに使いに出されたんだろうが)
そう思ったが、ギヨウは口には出さなかった。わざわざ神経を逆撫でする必要はない。
「本当に行くのか?」
「……わかった。片づけだけだぞ」
シルルは仕方なく馬から降りると家へと向かった。
「ありがとよ」
シルルがギヨウより先に家の扉を開けると、それだけで埃が舞い、匂いが流れ込んでくる。
「ひどいなこれは」
シルルは踵を返すと、馬に乗った。
「おい!なんだよ!やっぱり帰るのか?」
その様子を見ていたギヨウは、心配になって声をかける。
「馬鹿!掃除用具を買って来るんだよ。お前は適当に邪魔なもの外に出しておけ」
「お、おう!」
そして二人は、家の中を片付けていく。
元は誰かが住んでいたであろうその家には、先住民の物が多く残っており、二人は掃除をしながら必要なものと不必要な物だけを分けていく。
それは夜になるまで続き、一応は片付いたと言える程度には家は綺麗になった。
「じゃあ、今度こそ帰るぞ」
そして、今度こそシルルは帰ろうとする。
「いや、泊って行けよ。もう夜だぞ」
それをギヨウは止めた。
他意はない。単純にここに来るまでも、夜には馬を走らせていなかっただけのことである。
「私は一刻も早くゼルバ様の元に帰りたいんだ」
「疲れてるだろうし、馬の脚だって休ませないとなんねえだろ。あと、これからどうすればいいか聞きたいんだよ」
それを聞いて、渋々と言う感じで、シルルは馬から降りた。
「明日には帰るからな」
そしてそう言うと、さっさと家の奥の方に布を敷いて自分のスペースを作って眠りだしてしまう。
「俺も寝るか」
その様子を見てギヨウは少し笑うと、ギヨウも少し離れた場所で眠るのであった。




