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ゼルバ復活⑧

 ゼルバを加えたベルベン率いる軍は、そのままゆっくりと東へと進み、マチェバナン将軍の居城へと辿り着く。

 荒れてはいたが、そこには敵兵の姿はなかった。

 ゼルバの予定通り、ヨギ軍がエルエ軍を追い払ったからである。


「おお……おお!ゼルバよ!」


 ゼルバの姿を見るなり、マチェバナン将軍は両手を広げて、我が子を迎い入れるように、その巨体でゼルバを包み込んだ。


「ははっ、どうしたというのですか、マチェバナン将軍」


 ゼルバが涼しい顔でそう言いいながら背中を軽く叩くと、マチェバナン将軍はすぐにゼルバから体を離した。


「どうしたもこうしたもないわい。儂はお主が死んだとしか知らされておらぬのだぞ。ヨギからお主の名を出された時は、心臓が止まるかと思ったわい」


 マチェバナンが大袈裟に胸を抑えて見せる。

 歳が歳なだけに、あながち冗談にもならない。

 ゼルバは、マチェバナンの後ろで退屈そうに茶番を眺めているヨギを見る。


「ヨギにも、私が生きているのは教えていなかったのですがね」

「なにい!」

「ええ!」

 

 皆それぞれが驚く。

 中でも、特に大袈裟に驚いていたのは、ヨギの補佐ベルェッだった。

 ベルェッは、信じられないと言う目で、隣にいるヨギを見ていた。


「簡単に推測できることだ。驚くようなことではない」


 ヨギは、すかしたような態度でそう言うが、もちろん容易な事ではない。


「あなたが敵ではなくて、本当に良かったですよ」


 ヨギが敵では、この策は成功しなかったという事になるのだから。


「ちなみに、もし私が死んでいたら、どうするつもりだったんですか?」

「その時は、エルエ軍に投降していたな」


 ヨギはしれっと言う。

 その言葉を口にするだけでも背信行為である。

 言った相手が相手なら、この場で斬られても仕方がない。


「ははっ、あなたらしいですね」

「困った奴じゃの」


 だが、ゼルバもマチェバナンも笑ってそれを流すだけだった。

 マチェバナンなぞ、その場合死ぬことになるのは自分になるというのに。

 だが、実際にはそうはならなかったから、笑い話で済ませるのである。


「さて、積もる話もあるのですが、そろそろ我々は行っても良いでしょうか?」


 来て早々、ゼルバはそう切り出した。

 それはつまり、急いでいると言う事を示しているに他ならない。


「なんじゃ、急ぐのう。どこへ行くんじゃ?」

「それは、もちろん、王都へ」


 その答えが意味するところを、マチェバナンは理解はしていない。


「そうか。ではな、皆の衆」


 だが、それ以上は何も聞かずにゼルバ達を送り出したのだった。

 それを聞いて、ゼルバ達はその場を去ろうとする。


「待て」


 しかし、ヨギがそれを止めた。


「どうかしましたか?」

「その小僧が、千人斬りのギヨウか?」

「ええ、そうですよ」


 中々口を挟む余地がなかったため、黙っていたギヨウだったが、ここでもゼルバがギヨウより先に答えてしまう。


「どうだ?こいつと交換しないか?」

「ええ!」


 そう言ってヨギが差し出したのは、自分の補佐のベルェッだった。


「ちょっと、酷いですよー」


 ベルェッは暴れながら抗議する。


「申し訳ありませんが、ギヨウは私にとって大事な仲間ですので、お渡しすることは出来ませんね」

「ふっ、そうか。残念だ」


 ヨギは、あっさりと引き下がった。


「もういいぞ、早く行け」


 更にそんな事を言う。

 どこまでも自分勝手な男である。


「それでは、また、お会いしましょう」


 そして、ゼルバ達は今度こそ、その場を後にしたのだった。

 


     ♦



 それから、少し移動した先で、


「では、私は王都に向かいますので、あなた方は一度帰ってしまってください」


 ゼルバはそんな事を言った。


「ん?王都に行くんだろ?俺も行くよ」


 ギヨウが答える。


「いえ、あなたは家にでも帰って休んでください。これから戦続きになりますし、あなたは三千兵隊長になるのですからね」

「ああ、ん?なんだって?」


 自然ととんでもない事を言われて、ギヨウは聞き返す。


「あなたは三千兵隊長になりますよ。私がします」

「そうなのか?」

「四傑将の一人の首を取ったのですから、当然の出世でしょう。むしろ、もっと上げたいくらいです」


 それは、そうなのかもしれない。


「とりあえず、休めるうちに、休んでおいて欲しいのですよ」


 そこまで言うのなら、ギヨウも引き下がるしかなかった。


「ああ、わかった。何しに行くのかわからないけど、気を付けてな」

「そちらこそ」


 そうして、ゼルバだけが別れると、


「さて、最後の仕上げと行きましょう」


 ゼルバだけが王都へと向かったのだった。

 


     ♦



 ゼルバが王都へと着いた頃には、王都では既にゼルバが蘇ったことが噂になっていた。

 そこに、本物のゼルバが来たのである。


「あっ」

「ゼルバ様!」

「ゼルバ様だぁ!」


 民達は、すがるようにその死んだはずのゼルバをあっさりと受け入れたのである。


「みなさん。私が死んだ、処刑台へ来てください」


 ゼルバはそう言いながら、王都でしばらく馬を走らせたのだった。

 処刑台に来いなど、奇妙な話ではあるが、民達はその言葉を疑う事はなかった。


 ゼルバ自身が処刑台へと来た頃には、多くの民衆が、その処刑台へと集まっていたのである。

 ゼルバは、その処刑台の上へと登ると、民衆に向かって演説を始めた。


「皆さん!お久しぶりです。突然ですか、私はこの処刑台で一度死にました」


 民衆はざわつく、死んだと言われても、今、目の前に生きたゼルバがいるのだから。


「私の魂は天に上り、しかし、すぐに帰ってきました。何故なら、神が私にまだ死ぬべきではないと言ったからです」


 ゼルバは顔色一つ変えず、堂々と語る。


「そして、つい先日、私はついに蘇ったのです。神より、この国を守れと言う、天命を受けて!」


 はっきりと言えば、荒唐無稽な話である。

 だが、他に縋るもののない民には、それで充分であった。


「うおおおお!」

「ゼルバ様ぁ!」

「我々を救ってぇ!」

「ありがたい、ありがたい!」


 民衆たちは、それぞれ思いの丈を口にする。


「皆、私と共に戦いましょう!」


 そう言って、ゼルバは演説を締めくくった。


「「「ゼルバ様!ゼルバ様!」」」


 それだけで、民衆たちは、何度もゼルバの名を呼んで奮い立ったのだった。

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