表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/395

新天地①

 戦いが終わってから三日ほど馬を走らせ続けた。

 その道中は、ゼルバの持つ領地内を駆け抜けることとなり、行く先々の村で、領主であるゼルバは歓迎され、特に何かが起こるようなこともなかった。

 ギヨウは、戦いに巻き込まれただけであり、ゼルバが本当に良い者なのかはわかっていなかった。

 しかし、領民に慕われる彼を見て、改めて、ゼルバの人となりが上辺だけのものではない事を理解した。


 そして、三人はゼルバの城へと着く。

 それは、城壁に囲まれた街に、立派な城である。


「すっげぇなー」


 直前に高台から全容を見たときに、思わずギヨウもそう呟いてしまうほどの壮観さであった。

 それと同時に、隣にいるゼルバがこの城で一番偉い城主であるということも、どこか現実離れした感覚であった。


 そして今、その城下町の大通りをゼルバ達は通っている最中である。


「なあ、なんで顔隠してるんだ?」


 ゼルバもシルルも、近隣の村でもらったフードのようなもので、顔を隠していた。


「騒ぎになると面倒ですからね。早く城に戻らないと家臣達が心配しますので」

「それもそうか」


 ギヨウ達は、そのまま街の中を馬で歩いて行く。

 ゼルバが顔を隠しているおかげで、すんなりと城の前までたどり着くことが出来る。


「やっぱすげぇな」


 目の前の城を見上げると、ギヨウは改めてその立派さに圧倒される。


「待てぇい!」

「何者だ貴様ら!」


 城の入り口まで来たギヨウ達は、城の門番に矛を突き付けられ止められる。

 当たり前だ。三人のうち二人が外套で身を隠しており、怪しい事この上ない。


「落ち着きなさい。私です」


 ゼルバがフードを取ると、門番達は驚き、戸惑った。


「ゼルバ様!」

「それに、シルル様も!気づかず申し訳ありません!」

「いえ、顔を隠していたのですから、気付かれては困りますよ」


 ゼルバは怒るわけもなく、むしろこの平和な場所に置いて、真面目に仕事をしている門番を褒めたいほどであった。


「この馬を厩へお願いします」


 ゼルバは馬を降りると、城内へと平然と入っていく。当然だ。自分の城なのだから。それは、シルルも同じである。

 だが、その巨大な城を前にしたギヨウは、少し落ち着きがなくゼルバの後へと続いたのだった。

 


     ♦



「ゼルバ様!おかえりなさいませ!」


 城の中を歩いていると、全ての人間がゼルバに頭を下げ、ゼルバの帰還を歓迎しする。


「皆、私の留守の間よくやってくれましたね」


 その人間全員に、ゼルバは返事を返していくのであった。


 そして、一際大きい部屋へと出る。

 そこには、ゆったりとした服を着た人間が何人か既に待ち受けており、その中央の奥には高価そうな装飾が施された椅子がある。

 

(城主の間みたいなやつか?天守閣?)


 頭の悪いギヨウでも、あの椅子にゼルバが座り、下にいる従者たちが跪くことくらいはわかった。

 だから、ギヨウはシルルに着いて途中で横にはけて、ゼルバは真っ直ぐと歩いて行くと、奥の椅子に座った。


「ゼルバ様!よくぞ無事でお戻りなられました!なんでも、従者が二人しか残らなかったとか……」


 ゼルバが椅子に座ったのを見計らって、最も近くに立っている従者が話しかける。


「そうですね。私の領地内で襲われるとは、どこから情報が漏れたのやら……」


 そのゼルバの言葉に、従者たちはざわつきだす。

 ゼルバの予定は、再機密事項なのだ。つまり、この中に情報を漏らしたものがいてもおかしくないという話になるからである。


「まあ、それは考えても仕方がありません。それよりもベルベン」

「はい、おやすみですか?」


 ベルベンと呼ばれたのは、先ほどから話しているゼルバに最も近い位置にいる従者である。

 そして、ベルベンは言われるまでもなくわかっていると言った感じの態度を取る。


「いえ、そうなのですが……その前に、どこかに余っている土地と家を探して置いてください」

「はっ?何故そのようなことを?」

「あそこにいる者が、私達の命を助けてくれたのです。その褒章をあたえないといけません」


 ゼルバがギヨウを指さすと、その場にいるシルル以外の者全員がギヨウの方を見る。

 それは、なんだかギヨウには居心地が悪かった。


「なので、客間も一つ用意して、彼を休ませてあげてください。それでは、私も疲れたので休みます」

「なるほど。任されました」

「それでは各自、再び仕事に戻りなさい」


 ゼルバの号令で、全員がゼルバに一声かけてから部屋から出て行きだした。


「おい、こっちだ」


 ゼルバは休むと言ったが、返答で忙しそうである。

 そんな中、シルルがギヨウに声をかけて来た。

 ギヨウは、黙ってシルルに導かれるままに着いていく事にする。


 シルルは広い城の中を迷わずに歩いて行き、一つの部屋の前で止まる。


「ここがお前の部屋だ」


 その部屋の扉を、シルルは開けてくれた。


「え?そうか」


(あの従者のおっさんが部屋を手配するって言っていたような……)


 どうにも話が違い戸惑うが、ギヨウは素直に部屋の中へと入ることにした。

 そして、部屋の扉が閉まったのだが、シルルも中へと入ってきてしまった。


「なんで入って来たんだよ?」

「変な事を考えるなよ。話があるからだ」


(確かに美人だが、そんなことは考えねーよ)


 ギヨウは、元々女にはそんなに興味はないし、こんなつんけんな態度を取る女にはもっと興味がなかった。


「馬鹿な事言うなよ」


 だからそう返したのだが、それにシルルは激昂する。


「馬鹿な事とはなんだ貴様!私に魅力がないというのか!」


(ああ、めんどくさい事になった……)


「悪い悪い。いいから話があるなら早くしてくれ、疲れてるんだ」

「私だって疲れてる――まあいい。話が進まないな」


 シルルは咳ばらいをすると、話の本題を言う。


「ゼルバ様が何を言ったのかはわからないが、貴様は将軍にはなれないぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ