四国同盟⑩
ギラグ国での交渉を終えたギヨウ達は、村の中にある草で出来た原始的な小屋へと案内された。
そして、その日の夜となる。
「は」
「あ」
ギヨウは翌日の戦いがあるため、一人で小屋を使っていたのだが、
「はっはっ!」
「あっ!あっ!」
(うるせぇ)
そもそも、入り口の扉すらない草で出来た小屋では、周囲の音が丸聞こえであった。
(飯を運んできた女が、やけに露出の高い服だったのはこういうことだったのか)
更に言うなら、その女はギヨウが飯を食べている間、近くでギヨウを見ていて邪魔であったため、ギヨウは彼女を早々と追い払ったのである。
「はっ!はっ!はっ!」
「あっ!あっ!あっ!」
「……」
ギヨウは無言で立ち上がる。
そして、小屋を出て行った。
「どこに行くか……」
場所を考えれば、あまり動かない方がいいのはわかる。
ギヨウの小屋は、全員が止まっている小屋の真ん中の小屋であった。
隣の小屋にはゼルバがいたはずであるが、当然そちらからは男と女のまぐわいの音は聞こえてこず、ギヨウはホッとする。
ギヨウは少し迷ったが、とりあえず入口があったはずである左側へと小屋伝いに歩くことにした。
「ん?」
その先で、ギヨウは仲間を見つける。
ギヨウ達が泊っている小屋の一番端から、少し離れた岩場に座っているレシヘストである。
「よう」
ギヨウはそこへ近づくと、レシヘストの隣へと座る。
「ギヨウか。寝なくていいのかい?」
「うるさくて寝れなくてよ」
「そりゃ、あたしもだ」
レシヘストがにやりと笑い、ギヨウも同じように笑った。
「何か楽しそうですね」
そこに、更にもう一人やってくる。
ゼルバである。
「なんだ、あんたもうるさくて逃げてきたのかい?」
「ふふっ、そんなところです」
ゼルバも二人と並んで座り込んだ。
「まあ、羽目を外していいと言ったのは私ですからね。帰りも長旅になりますからね。休める時に休まないといけません。雑念も無くしておいてもらいませんと」
「そう言うあんたは、羽目を外さないんだね」
レシヘストは、聞きづらい事を平然と口にする。
「私は休むだけで十分ですので」
ゼルバはにこやかにそう言って返すだけであった。
だから、レシヘストはそこでその話を終わりにする。
「それで、明日は勝てそうかい?ギヨウ」
「勝つさ」
ギヨウは自信満々に言い切る。
その態度に、二人は笑う。
「女王にも言われたけど、相手のブアチャガニスは元王さ。しかも、何年も王の座を降りなかった男さ」
「つまり、何年も負けなかったということですね?」
ゼルバが補足し、レシヘストは頷く。
「ブアチャガニスの腕を斬ったのは、メオ国の名前もわからない浪人だって話さ」
「そうなのか。両腕があれば、今も王だったのかな」
「いや、どうだろうね。女王様も相当なもんさ。20歳になった時に王に挑み、命を奪わずに勝ったんだから。それに、それから数年間。一度も王の座を渡してもいないしね」
それがどれだけ難しい事なのか、ギヨウにも理解できた。
「そろそろ静かになる頃だと思います、戻りましょうか」
折を見て、ゼルバがそう言った。
ゼルバからすれば、ギヨウには早く休んで欲しいのである。
「ああ」
それはギヨウも同じなので、素直に返事をする。
そして、三人は戻るために歩き出した。
「私は、ギヨウが勝つと信じてますよ」
そんな中で、突然ゼルバがそう言った。
「勝って同盟を結ばないと、全てが無駄になるからな」
「いえ、そう言う事ではありません」
ゼルバは首を振る。
「これくらいの事が出来ないと、天下無双にはなれませんからね」
その言葉に、ギヨウは小さく笑った。
「任せとけ」
そして、そう答えたのだ。
♦
翌日になり、ギヨウ達は案内をされて、闘技場へと連れて行かれた。
闘技場は、この村の中では砦の次に大きい建物であった。
その外で、ギヨウは待っていた。
戦いを待っていたのだ。
そして合図があり、ギヨウは中へと入って行く。
恰好はいつもの甲冑に、剣だけである。
闘技場の中は騒がしいのは、外から出もわかった。
ギラグの戦士達が観戦しているからだろう。
闘技場の中へと向かうにつれて、その騒がしい声は少しづつ大きくなっていった。




