四国同盟⑨
フェズ国最強の戦士を連れて来た。
その言葉を聞いて、
「ガハハッ!」
「ガキじゃねえか!」
「腕の太さなんて俺の半分もないぞ。ちんこはもっと小さいんじゃねえのか」
「ギャハハハハ」
ギラグの戦士達は大笑いをした。
「文句がある奴は前に出ろ。全員ぶっ倒してやるよ」
そんな中で、ギヨウは臆することなく、自信満々に腕を組んで相手を挑発する。
「なにぃ!」
「てめえら、生きて帰れると思うなよ」
ギヨウの言葉を聞いて、ギラグの戦士達が興奮する。
「黙れ!」
女王が一喝する。
すると、驚くほど一瞬で騒ぎは収まったのだ。
それほどまでに、女王の力が強いという事である。
「そちらがは、その少年でいいのだな」
そう言いながら、女王が立ち上がり、ギヨウの側へと寄って来る。
「ふむ」
そして、ギヨウを値踏みするように近くで眺める。
(意外と小さいな)
そんな中で、ギヨウはそんな場違いな事を考えていた。
レシヘストは大柄であるが、玉座から降りて来た女王は、下から見るよりも小柄であったのだ。ギヨウと変わらない程である。
ただ、かなり筋肉質ではあるし、どこかミュエネに近いものを感じる体型をしていた。
「では、こちらからは私が出よう」
女王はギヨウの値踏みを終えると、そう言った。
ギラグの戦士達はそれに異論を唱えることはなかったし、ギヨウもどう答えればいいかわからずに黙り込んでしまう。
「なんだ不服か?私を倒せば、この国の王はお前だ。全てがお前の物になる」
更に女王は、ギヨウの耳に顔を近づけて、ささやくように言葉を続けた。
「もちろん私もお前の物になる。この体に何をしてもいいんだぞ。何でもだぞ」
その声は、大きくはなかったが、静寂に包まれたその場では、誰の耳にでも届いた。
そのなまめかしさに、人に寄っては戸惑いを感じてしまうだろうが、ギヨウは平然としていた。
「あんたと戦う事には文句はねえ」
平然と、そう答えたのだ。
「だが、悪いけどこの国をもらうのは困る。あと、あんたをもらっても困るな。仲間になってくれるってんなら嬉しいけどな」
更にギヨウは、笑って見せる。
そのギヨウの様子に、女王はやはり笑ったのだ。
「ハハハッ!」
そして、玉座へと再び座ると、
「では、私がやるのはやめよう。楽しみは後に取っておく性格なんだ」
そう言ったのだ。
「ブアチャガニス」
更に女王は、部下達のいる方を見ながらそう言った。
その中から一人の大男が出て来る。
歳を取った男で、何よりも目を引くのが、肘から先の右手がないことであった。
「私の代わりに、こいつが貴様の相手をする」
ブアチャガニスは女王の隣に立つが、一言も言葉を口にしなかった。
「お前達が勝ったら、同盟でもなんでも結んでやろう。ただし、こちらが勝ったら――」
女王が何を要求してくるのか、フェズ国側は緊張しながら、それに耳を傾けた。
「その少年をもらおう」
その言葉に、流石のゼルバも驚いたような顔をする。
「構わねえ」
しかし、ギヨウは平然と即答したのだった。
「ああ、死体になってしまっても構わないぞ。その場合は私の腹の中に納まるだけだ。はははっ!」
女王は冗談かもわからない事を言って、上機嫌に笑う。
「安心しな。死体にはならないし、負けはしねえ」
そんな女王へと、ギヨウは啖呵を切る。
「だといいがな。ブアチャガニスは前王だ。私が勝って王の座を奪った。最も、私が戦った時にはもう腕を斬り落とされていたがな……」
女王は一転して、寂しそうな顔をする。
全盛期の王と戦いたかったのだと、簡単に推測が出来る。
「決闘は明日にしよう。部屋も用意するし、飯も女もくれてやろう。おっとレシヘストには男か?」
「いらないよ」
レシヘストは、きっぱりと断る。
「その間、こちらからは手出しはしない様に言っておく。楽しい祭りの前に、何か水を差されてもつまらないからな」
女王は、ゼルバの方を見る。
「それで異存はないか?」
「はい、願ってもない話です」
「では、案内をさせよう」
女王の合図で、屈強な男が案内人となってゼルバ達を導く。
「よくやりましたね、ギヨウ」
「勝手に色々決めちまったけど、良かったか?」
「これほど良い方向に向かうとは思わなかったほどです」
ゼルバはギヨウを褒めちぎる。
ギヨウは褒められて照れていたが、
「あとは、あなたが勝つだけですよ」
そう言われて、顔を引き締めると、
「おう!」
そう答えたのだ。




