四国同盟⑧
レシヘストに案内され、ゼルバ達はついにギラグ国の王都に着く。
ただ、王都とは言ったが、レシヘストの説明通り、それはただの村と砦であった。
しかし、村の周りは、物々しく高い柵で覆われており、入り口である正面にはそういったものはないが、代わりに屈強な門番が立ちはだかっているのであった。
「止まれ」
そして、ゼルバ達はその入り口から入るわけだが、当然のように門番が立ちふさがる。
「異国の者のようだが、中に入るのなら俺達と戦え、勝てば入っていい」
「全員でかかって来ても良い」
二人の門番がそう言い、ギヨウは構える。
ここまでの経験上、戦いは避けられないと思ったからである。
しかし、ゼルバは無防備にも一人で前に出た。
「私達フェズ国の者で、外交にやって参りました。通してもらえないでしょうか?」
門番は顔を見合わせると、
「話は聞いている、通ってよい」
互いに道を開けたのだ。
ゼルバ達は、これ幸いにと中へと入って行くが、ギヨウは半信半疑であり、警戒をしながら門番の横を通り過ぎる。
しかし、何事も起こらず、村の中へと入れてしまったのである。
「言ってみるものですね」
「え?」
ゼルバがそう呟き、ギヨウは間抜けな声を出す。
「言葉が通じるみたいなので、言ってみただけですよ。本当に通れるとは思いませんでした」
ギヨウの様子を見て、ゼルバが言い直した。
確信があって、一人で前に出たわけではなかったのだ。
「マジかよ」
そんなゼルバの様子に、ギヨウは呆れてしまう。
「てか、俺らを襲ってきた奴等は言葉が話せなかったけど、あいつらは話せるんだな」
ギヨウは単純な疑問をレシヘストにぶつける。
「部族にもよるけど、いい出の奴は結構話せる奴は多いよ。ここにいる奴等なんかは、ほとんどの奴は話せるだろうね」
「へぇ~、話せるっていい事だな……」
ギヨウは、しみじみとそう思う。
ここに来るまで、散々得体の知れない言葉を喋る奴等と戦わせられたからである。
「話せても、話が通じるとは限らないけどね」
レシヘストがそう言い、ギヨウが苦笑した直後であった。
「おい!いい女を連れてるじゃねえか!誰でもいい、その女をかけて決闘しろ!」
早速、話が通じなさそうな者が、一行へと突っかかってくる。
「今は忙しいんだ。後でにしな」
それに対して、レシヘストがそう叫ぶと、
「ちっ」
男は舌打ちこそしたが、大人しく引き下がった。
「いいのか?」
「所かまわず戦ってるわけじゃないよ。それじゃ村やら部族が成り立たない。決闘を断ることだって出来るよ。もちろん、無理矢理襲われることもあるし、あまり逃げ続けると、後ろ指さされるけどね。まっ、すぐに去るあたし達には関係ないことさね」
「だ、そうですよ。皆さん、喧嘩を売られても買わない様にしてくださいね」
レシヘストが説明し、ゼルバがそれに便乗する。
「しかし、予想は出来ましたけど、案内もつかないのですね。行くところはあの砦だとは思うのですが……」
流石のゼルバにも、こればっかりはわからない。
「それで合ってるよ。あたしが案内するからいいさ」
レシヘストはそう言うと、迷うことなくずんずんと進んでいってしまう。
一行は心配しながらも、その後を追うしかなかったのであった。
♦
砦の中は思ったよりも入り組んでいたが、レシヘストは迷うことなく、進んでいき、女王のいる場所へと仲間を導いた。
女王がいる場所は、普通の国にあるような王の間に近い意匠であり、広い部屋に玉座があり、その玉座に女王が座っていた。
(あれが女王か)
ギヨウは女王を見る。
思ったよりも若い女性である。顔は似ていないが、雰囲気がレシヘストに似ているのは、女性でありながら筋力が凄く、それを誇示するかの如く軽装であるからであろう。
「お前、見たことあるな。誰だったか……」
入って来たゼルバ達に対して、女王はいきなりそんな事を言った。
その目線の先は、レシヘストである。
「ン・ビンガ族の族長の娘。レシヘストにございます。お久しぶりです女王様」
「おお!そうか、そうか!どっかで見たことがあると思ったわ!」
そのやり取りにギヨウは驚くが、声までは出さない。
「で、そちらの者達は、フェズ国の者か?」
やっとゼルバ達を見て、女王が言う。
「はい、お目に書かれて光栄でございます、女王様。フェズ国将軍ゼルバと申します」
ゼルバの言葉を聞いて、女王は急に笑いだした。
「はははっ!まさかここまで辿り着けるとはな、どこぞで野垂れ死ぬかと思っていたわ。はははっ!」
シュハラエセナ女王は楽しそうに豪快に笑う。
実際に、ゼルバは事前に文書を持たせたものを何人も送ったのだが、戻ってきたのは一人だけであった。
そして返事は、来れる者なら来れば良い、だったのだ。
「我々としても、とても楽しい旅となりました。感謝いたします」
もちろん、部下が死んでいるのだから、ゼルバからすれば楽しいというのは嘘である。
ゼルバは、シュハラエセナ女王が喜びそうな言葉を選んで口にしているのだ。
「ほう、なかなか豪胆な奴だな」
「ありがとうございます。早速で申し訳ありませんが、我々の話を聞いていただけないでしょうか?」
普通であれば、こんなに早く交渉に入ることはない。
だがゼルバは、ここに長居する気もないし、回りくどい交渉は無意味だと考えた。
「ああ、話してみろ」
「我が国は、フェズ国、ベザ国、ア国、ギラグ国で同盟を結び、エルエ国へと侵攻したいと考えております」
「断る」
即断であった。それは、始めから決まっている答えだったのであろう。
そして、それは予想通りではあるが、ゼルバは渋い顔をする。
「はははっ!」
そのゼルバの顔を見て、女王が笑うと、
「「「ガハハハ!」」」
周囲にいた女王の家臣達も馬鹿にするように笑った。
ゼルバはそれに腹を立てることなく、話を進める。
「そう言われると思いまして――」
ゼルバはそこで言葉を切ると、立ち上がり、ギヨウの側へと来る。
そして、ギヨウを連れて女王の前へと行き、言ったのだ。
「我が国最強の戦士を連れてきました」




