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四国同盟⑦

 ゼルバ達がギラグ国へ同盟を結びに行った頃、エルエ国王都ルトでは軍議が行われていた。


「それでは、軍議を始める」 


 エルエ王がそう言うが、家臣たちは酷く狼狽しており、エルエ王の言葉は耳に届いていないようであった。

 その理由は単純である。

 フェズ国がベザ国とア国と同盟を結び、ギラグ国とも同盟を結んで、エルエ国へと攻め入ろうとしている報告が間者から入ったからである。


 ゼルバの情報封鎖は完璧だった。

 しかし、それでも情報というのは漏れるものなのである。

 完璧であるからこそ、エルエ国へ伝わるのが遅れたという部分もあった。


「静かに!」


 宰相デゼイルキは場を納めようとするが、その場が収まる事はなかった。

 動揺するのは当たり前の事である。

 自国以外の全てが敵として攻めてこようとしているのだから。


「落ち着いてください」


 だが、そんな中で、その一言でその場が収まってしまう。

 その言葉を発したのは、知の将ロヤであった。

 王の前へと優雅に現れたその姿は、周囲の目には、まるで輝いているように映った。


「メオ国、メナ国を討った時点で、全ての国と敵対することは決まっている事でした」

「それは、そうですが……」


 確かに、それは戦争を始める前からわかっていることであった。

 しかし、実際に全ての国から同時に攻撃されるとなると、怖気づくものである。


「それに――」


 ロヤは凛とした顔で言う。


「ギラグ国が他国と協力することはないでしょう」

 


     ♦



 一方、ギラグ国へと入ったゼルバ達一行は、何度も襲われながらも、ギラグの戦士レシヘストの助けを得て、ついにギラグ国の王都の近くまで来ていた。


「この辺まで来れば、いきなり襲ってくる奴はいないよ」


 レシヘストがそう言い、一行は安堵する。


 ギラグ国は荒れた土地である。

 平地での戦いならいざ知れず、森であったり、湿地や沼地であったり、山であったり、それらで受ける奇襲は精鋭部隊であっても厳しい戦いであったからである。

 そして、実際に五十人ほどいた兵は、十人ほどの犠牲を出し、四十人ほどになってしまっていた。


「なんでそんなこと言えるんだ?」


 ギヨウが単純な疑問を抱く。


「そろそろ……んー、王都が近いからね。はぐれ者は王都の近くには近づかないよ。殺されちまうからね」


 レシヘストが妙な言い方をする。


「王都じゃないのか?」

「そうだね。あんまりそういう言い方はしないよ。女王様の住む地とかって呼ぶかな。あるのは城と言うより砦だしな」

「ふーん」


 自分から聞いておきながら、割とどうでもいい話だったので、ギヨウは適当に返事をしてしまう。


「そういえばさ。女王なんだな」

「意外かい?」

「ん、まあ」


 ギヨウは少し後ろめたくて、明後日の方向を見ながら答える。


「はははっ!私もそう思うよ。長い間、王は男だったからね。でも、今の女王、シュハラエセナが奪い取ったのさ」

「力でか?」


 聞くまでもない事だが、ギヨウは念のため聞く。


「もちろん」


 レシヘストの答えは予想通りであった。


 そこで話は途切れ、一行は更に少しだけ歩く。

 すると、レシヘストの言った通り、遠くに村のようなものと、砦のようなものが見えてくる。


「それで、そろそろ、どうやって交渉するつもりか聞かせてもらってもいいかな?」


 レシヘストがゼルバへと聞く。

 道中で何度か聞いたが、ゼルバはその方法を決めてはいるようだが、もったいぶって話そうとはしなかった。


「そうですね。まあ、そろそろいいですかね」


 ゼルバは観念したようで話し出した。


「ギヨウ。もう覚えてはいないでしょうが、20年間争いがなかったという話は覚えていますか?」

「ん?いや、流石にそれくらいは覚えてるよ。ちょうて――偉い国であるメオ国が各国に争いをやめるように言って、疲弊していた各国が承諾したんだろ」


 ゼルバは急に関係ない話を始める。

 それは、戦に関わる事であるのだからギヨウだって覚えてはいる。


「そうですね。ですが、そこにギラグ国も入っているのはおかしいですよね?」

「まあ……そうだな」


 これほど野蛮な国であるならば、大人しく従うというのはおかしい話ではある。


「私はその理由を徹底的に調べ上げました」

「……」


 レシヘストは黙ってゼルバの方を見る。


「なにせ20年も前の事ですからね、調べるのは大変でしたよ」

「その理由はわかったのかい?」


 わざとらしく、レシヘストが尋ねる。


「はい、それは単純な事でした」

「なんだったんだ?」

「ギヨウにもわかると思いますよ。この国の決まりを考えれば」

「決まり?」


 ギヨウは少し考えるが、すぐに答えを出す。


「力こそ全てか?」

「その通りです。メオ国が出した戦士が、かつてのギラグ国の王に勝ったのですよ。だから、ギラグ国はメオ国の要求を受け入れたのです」

「なっ……!」


 ギヨウは驚く。

 ギラグ国の王とは力で上り詰めるものだという。そのギラグ国の王を倒せるというのなら、かなりの強さのはずである。


「そいつの名前は?今どこにいるんだ?」


 ギヨウは早速ゼルバへと聞くが、ゼルバは首を振った。


「それは、わかりませんでした。ただ、ふらりとやってきた浪人を偶然召し抱えたと言います。その後、メオ国に残ったのか、また流浪の旅に出たのか……」


 話終わりに、ゼルバはレシヘストの方を見る。


「あたしも知らないよ。その話はギラグ国内では有名だけど、その頃はまだ子供だったしね」

「そ、そうか」

「つまり、そう言う事ですね」


 ゼルバはそれで話を締めてしまう。

 しかし、ギヨウはすぐに気付いた。話の答えになっていないと。

 だが、流石のギヨウも、ゼルバが何をいわんとしているのか理解できた。


「つまり、今回も同じ事をするって事か?」

「ふっ、よくわかりましたね。そしてもちろん、その役目を果たすのはあなたですよ、ギヨウ」

「なっ!」


 ギヨウは驚いたが、


「いや……任せとけ!」


 すぐにそう言い直す。

 戦いだというのならば、文句を言う事はないのだから。


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