諦めない心 34
「はぁ・・・はぁ・・・恨むなら恨んでくれレン」
俺はレンに自分の情けなさを謝りながらなるべくレンを揺らさないようにかつ出来るだけ急いで走っていた。
結局俺は人間を殺すと言う行為を出来ずレンを抱えて村人の群れをジャンプで飛び越えて村を飛び出してきたのだ、走る途中でたまに立ち止まりレンに回復アイテムを使い体力を回復させてまた走り出す。
緊急用に用意していたアイテムは全て使ったので今は残り少ないDPを削って新しくアイテムを作っている。
走っていると定期的に警告文が表示されるようになった、そこに書いている文字はドローンの耐久力低下を知らせるもので、通常ならドローンの修理を済ませば終わりなのだがいくら回復させてもレンの命を脅かしている首輪の修理・除去が出来ないので警告文を眺める事しか出来ない。
「くそ!街はまだかよっ!!!」
どうしようもないイラつきが溜まって行きついついレンを抱きかかえる手に力が入ってしまう。
しかし次に出てきた警告文が俺に現実を突きつける。
『警告 ドローンのエネルギーが低下しています』
『警告 ドローンが活動限界です』
『警告 ドローンのエネルギーを補充してください』
『警告 ドローンのエネルギーを補充してください』
「邪魔なんだよ!!警告するならエネルギーを補充させ・・・補充?」
まてエネルギーって確か機械なら電力などの事を指す、それは機械が電気で動いているからだ。
もちろんその機械が核エンジンなどで動いているなら核の事を指す、ならば人間を動かしているエネルギーとは血を指すんじゃないのか?
いや、流血しているならまだしもこれは魔法で死にかけている・・・となると血ではない。
だかシステムがエネルギーと表示して補充してくださいと言うのなら何かで代用できるはずだ。
未だに次の街は見えないしレンはほとんど虫の息だ、これでは間に合わない。
なら一か八かかけてみるしかない!
レンの改造画面を開いて耐久力を表示させる・・・・文字化けしている中にMAXとある、なら耐久力は関係ない。
機械であれば電池などをセットする場所は何もないがタップしてみる、すると文字化けしてぐちゃぐちゃで読めないが何かがある。
「これは・・・なんだ?何が動力になっているんだ・・・・」
試しにぐちゃぐちゃのアイコンをタップしてみると項目が出てくる、出てきた中に『エå—åŒネ‘ ギ鬢mj補充åŒる』を見つけた。
流石に読めないが分かる文字だけ抜き出すと”エネギ鬢補充る”になる鬢は読めないが・・・
選択してみると『補充できるアイテムがありません』と出てきて下にズラッとエラーコードが並んでいる。
やっぱりアイテムがないと補充は出来ないのか・・・・絶望してひとつ前の画面に戻ろうとウィンドウを消す瞬間読める文字が目に入る。
本当にずらりと並ぶ訳の分からない文字列の中だったが、人間は分かる文字があれば勝手に脳が判断して読める様に見えると言うもしかしたらそれのおかげだろうか。
そこに書かれていたのは『他の対象からエネルギーを補充しますか』と言う文字だった。
その文字を選ぶと新しく小さいウィンドウが現れ【はい】【いいえ】と選べる画面が出てきた。
すぐに【はい】を押そうとして手が止まる、どういうものか分からないが奴隷の首輪がレンの生きることに必要な何かを削っている中で俺がそれを代わりに与えるとなると俺の命も危険になる。
「って何考えているんだ、レンが死ねば俺は生きる希望を無くすって事だぞ」
そうだ10層のボスでのトラウマも今こうして嫌々ながらも笑いながら生活の為に働いているのもすべてレンがいるおかげだろう、そのレンを失えば俺はニートに逆戻りだ。
こんなファンタジーで人間の命や尊厳が軽い世界でニートになればそれは死を意味するだろう。
俺は自分のバカな考えを鼻で笑いながら【はい】を選択した。
「!? あ・・・がっ!」
【はい】を選択した瞬間喉に板でも挟んだかのように息が詰まり心臓を握られたかと錯覚するような苦しみに捕らわれレンを抱えていた腕から力が抜け俺も横に倒れてしまった。
しかし俺が倒れたと同時に
「・・・・っはぁ!!!!」
数十分、溺死する寸前まで水の中にもぐっていた人間がやっとの思いで水面から出てきたかのようにレンが息を吸った。
「はぁはぁはぁ・・・お、おかあさんとろせふくんは・・・っ!? ごしゅじんさま!?」
ゆっくりと身体を起こそうとするがまだ苦しみは残っているらしく鉛の様に重く鈍い身体を引きずりながら俺の元までくる。
まるでほぼ空になっていた水槽に俺の生命力と言う水が入った水槽をつなげお互いの水が同じくらいになるまで流れていく水の様に俺の生命力が吸われていく。
しかし、レンが動ける様に俺も次第に慣れてくる。 恐らく俺が苦しんだのは急激に減って行った生命力のせいだろう。
「くぅ・・・はぁ・・・はぁ・・・その首輪の魔法で・・・・死にかけていたレンを・・・俺の命で時間稼ぎしてる・・感じだ」
「どう・・して・・・そんな」
「いまはそんな・・ことを言ってる・・・・時間はない・・・隣町までくっ!行くぞ!!!」
身体の感覚が徐々になくなりつつあるがそれでも身体にムチを打って何とか立ち上がる。
2人の人間が顔を真っ青にして倒れこんでいるなんて情けない姿だ。
なんとかレンを抱き上げる、今回はさっきまでのお姫様抱っこではなく本当に抱きしめる様に抱っこする。
「ごしゅ・・じんさま・・?」
「いくぞ・・・・ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
そうこの抱き方にも考えがあっての事だ、先程までの様に持続して走る事は今の俺には無理だ確実に数歩で倒れてしまう。
ならば一度だけでいいから全力で前へジャンプすればいいのだ。
ボゴォオオォオオォン!!!!
全ての力を足に入れてゲームでの筋力アップの効果を最大まで使っての大ジャンプだ。
地面をえぐっりまるで自走砲の砲弾の様に放物線を描いて飛んで行く。
「レン」
「はひぃ」
凄いスピードと落下の浮遊感でレンは俺にしがみついたままこわばっている。
「着地出来る・・・自身が無い・・・エージスつかえ」
「だ、だめ・・・です」
身体が完全に固まってしまって意識を集中できないのだろう俺の胸に顔をうずめたまま首を振っている。
一方そんな事はおかまいなしにどんどんと地上が近づいて来ている。
「俺を・・・殺す・・のか? まもってくれ」
「っ! まもり・・・ます!」
顔は俺の胸にうずめたままなので表情は分からないがエージスがレンの頭に着いたまま青い線を光らして俺達の周りにエージスを展開させる。
ズゥウゥゥウゥン ゴン ゴロン ゴロゴロ
3回ほどエージスに守られた俺達はバウンドして着地する、地面にぶつかってペッちゃんこ・・と言うのは回避できたが衝撃がかなりでかい。
落下中に目的の街が見えていたがまだ2回ほどジャンプしないと届かなさそうだ。
エージスを解除させてもう一度ジャンプの準備に入る、かなりしんどいが休んでいる暇はない俺とレンの命がかかっているんだ。
スゥと息を吸ってキッと気合を入れる、そんな俺をレンは抱きかかえられたまま応援してくれる
「ごしゅじん・・・さま、がんばって」
レンの俺を掴む手に力が入りその言葉に俺もレンを抱く腕に力が入る、下手な事を言っている暇はないのをレンも分かっているのだろうただ純粋に応援してくれる。
「まかせ ろ・・・・んん・・・あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ボゴォオオォオォォォオオォン




