奴隷と主人
ついに、ついに来てしまった。
この時が!
いつもの様にレンに起こされて食事を取る。
しかしいつもの様に呑気な気分ではない。
「ご主人様今日は二度寝しないんですね」
「うん」
「うん?」
パンをかじりながら装備画面を弄る。
武器はSCAR、アタッチメントにグレポンとレーザーサイトにレッドドットを付けドラムマガジンを着けている。
手榴弾も作ったし四連式M202ロケットランチャーもアイテムにしてボックスに入れている。
抜かりはないはず準備は万全だ
ダンジョン10層へ転移して洞窟内を見渡す。
そう一度来た場所だ、なにも怖くはない。
「ご主人様?」
ハッとレンを見ると少し歩いた所でついてきてない俺に気付きこちらに振り向いている。
「な、なにをしてるんだ! 離れちゃいかん!そばにいるんだ!」
「え!?は、はいご主人様」
ダッシュでレンの真後ろに立ってから切羽詰まった表情で注意するとレンは嬉しそうに顔を赤らめている。
そんな事に気付かない俺はキョロキョロと周りを見ていた
こえーよこえーよぉ!腕が痛くなってきた胃も痛いよ、やだなぁ帰りたいなぁ
前回の10層での死にかけた事は若干トラウマになっていた、しかし10層を飛ばして11層に行って前の様なことにもなりたくない俺は結局10層をしっかりもう一度クリアすることにしたのだ。
そんな俺の気持ちを知らないレンは軽い足取りで奥へと進んでいくのでビクビクしながらついて行くしかなかった。
「止まってくださいご主人様、敵です」
そう言われ前方を見ると亀が2体、鳥が2体居た。当然俺達には気付いていない
「お、おう。 じゃあ俺は奥の亀をやる、レンは空の鳥をやれ」
「はい」
2人で射撃体勢に入り俺が「撃て」と合図を出すとレンが鳥に射撃を開始する。
それに気付いた敵がこちらに向かってくるが少し外しているが鳥はすぐに倒した流石レンだ。
一方俺はコッキングレバーを引いて薬室に弾を入れ忘れて居たので発砲出来なかった。
俺が発砲していないことに気付いたレンが即座に狙いを変えて亀の頭に髪飾りを飛ばす。
飛んで行った髪飾りは何度も亀の周りを飛びながら一点をレーザーで照射する、威力が低いので即と言う訳にはいかなかったが物の数秒で亀は血を吹きだして倒れ、とどめにレンが眉間に数発撃ちこむ。
「よし、これで撃てる あれ?」
レバーを引き終えて武器を構えるが鳥も亀も死んでいた。
どうやら遅すぎた様だ。
「あの、ご主人様」
「・・・なんでしょう」
「どうかしたんですか?もし体調が悪いなら今日は」
レンは心配そうにこちらを見上げてくる。
これは本当に体調を心配しているのだろう、レンは俺が死にかけた場所が10層とは教えてない。
「いや、何というか・・・怖いと言うかびびってしまってな」
「怖いと言うのはモンスターや戦闘が怖いと言う事ですか?それでしたらこれからは私一人で」
「いや違う違う、そんな事言ってるとまたヒキニートなってしまう。 そうじゃなくてこの前の死にかけた時に来ていたのがここ、10層なんだよ」
言いにくそうに頬を掻きながら言うと、あぁ・・なるほどと理解したと言う表情をして優しそうに微笑んで俺の手を握る。
「大丈夫です、ご主人様がそのひきにーととかになっても。 それに何か危険があれば私が盾になりますから安心してください」
「じゃあ安心だな!」
「はい!」
「んな訳あるかあああああ!死ぬなや!」
「きゃん!」
剣道の面の技の様に勢いよく踏み込みレンの脳天にチョップを食わらせてやる
今日初めてのゴブリンを倒してアイテムボックスにしまっていると。
「そう言えばご主人様、ゴブリンの素材ってかなり少ないんですよ」
「へーそうなんだ」
見た目からして素材になる部分なんてなさそうだからな、しかし少しでも金になるしボックスにしまえる俺は荷物がかさばったりしないからどうでもいい
「はい、ですのでゴブリン程度なら私にも解体できるかもしれません。解体の手数料が少しだけですけど浮きますよ」
「マジで?じゃあ頼む!」
手数料なんて気にしてなかったがその分お金が増えるならやらないわけにはいかない。
俺の許可を得たレンはナイフを取り出してゴブリンの近くにしゃがみナイフの刃を近づけていく。
「・・・・まって!」
「はい?」
ナイフの刃がゴブリンの死体に触れる寸前
「ちょっと待ってくれ」
何となく血まみれの姿でゴブリンの臓物を頭上に掲げて「取ったどー!」と言っているレンの姿が頭の中で出てきて咄嗟にレンの腕をつかむ。
流石にそんなレンを見たくはない
「俺にそう言う趣味は・・じゃなくて解体はいいよ」
「でも解体ができる様になればダンジョン内で食料を調達出来る様になって攻略がはかどりますよ」
むむむ、冒険先で食材を確保してその場でとれたての新鮮な肉を焼いて齧り付く、一度は体験してみたい事だがゴブリンなんかの肉は食いたくないし食べれる生き物が出たらでいいだろう。
それに
「いや今はいい、それに食料は・・」
「?」
デジタルプリントを起動させて明太子おにぎりを作って渡してやる、俺のお気に入りおにぎりだ
あくまでも”デジタル”プリントなのでゲームでは食料や水を作れたがこの異世界ではどうなのか正直俺にも分からない。
「食ってみろ」
毒見もかねてだけど
作られるところを見ていたので怪しい物を見る目でおにぎりを見ていたが匂いを嗅ぐとちゃんとお米の味がしたんだろうか、おにぎりのてっぺんをちょっとだけ食べると目を大きく見開いた。
「ど、どうだ?」
「こんなおいしいお米食べたのは初めてです!」
おいしいお米ってイメージではコンビニで売っているおにぎりを作ったんだけど・・・
もちろん無添加として作ったが、この異世界からしたら普通のお米もいいもの扱いになるのかな
一口食べたレンはおいしいおいしいと言いながらパクパク食べている。
にこにこと食べていたがいきなり真顔になっておにぎるの具と俺の顔を何度も交互に見だした。
「んー!んん!んーんー!」
なんだなんだ?と思いおにぎりを見ると薄い桃色をした明太子があった、どうやら中の具にたどり着いたんだな
「・・・・それおにぎりの具だ、明太子って言うんだ俺の好物だよ」
「んん!?・・・ん!」
未だにもぐもぐと口に入れたお米を噛みながら俺にどうぞと言わんばかりにおにぎりを突き出している。
俺が好物と言ったからだろうか?おいしいから食べてみろと言った雰囲気だがそのおにぎりは俺があげたものだし、ほしけりゃ自分で作る。
「いらん、全部食っていいぞ。」
「ん!」
嬉しそうにまたおにぎりを頬張りだす。
「ご主人様!おいしかったです!」
「ん?食い終わったのか」
レンが食べている間一応周りの警戒をしていた俺にレンが話しかける。
なんか髪飾りもピクピクと動き出しそうにしている、レンの感情が高まってるせいか?
「あれはな俺の出身地・・・みたいな所で高級食材・・・・・の安いものだ」
「あ、あれで安いものですか・・・」
明太子は高い物から安いものまでピンキリで、値段の張る高級明太子とかは豪華そうな箱に入ってるからなぁ俺もネットでしか見たことないけど。
「たまにはああやって俺の地元の食べ物食べさせてあげよう」
「ほんとで・・・・ゴホン!ど、奴隷にそんな贅沢はだめです」
顔を赤らめながら急に態度を変えるが思いっきり目が泳いでいた。
しばらく進むと前回トラップだった大きな広場が見えてきた。
結局あればボスとして大量の雑魚を引きつれていたのか、ボスの寸前の広場がモンスターハウスのトラップだったのかどっちなんだろう。
とにかく前回何が起きたかレンに説明しておく。
「なるほど、前回はここで退路が塞がれて大量の敵が出てきたんですね。 もしモンスターハウスだとすると一度ご主人様が突破した以上すぐにまた罠になっているとは思えませんが・・・」
「まぁ何度も同じことしてたら罠じゃなくなるしな、それでもこの先に11層の入り口があったんだ」
そう、10層のクリアをするなら結局ここを通らないといけない。
「でしたら私が先に入りますのでご主人様はここで待っていください」
そう言って一人で広場に歩いて行く。
「おい待てよ、じゃあお前が帰ってこなかったらどうするんだ」
「その時はここは危険と言う事で11層から攻略をすれば」
二度目の奴隷商人とあったときのレン呼び出しが道をふさがれた罠にも有効とは分からない、それこそ本当に罠だったとしたらレンは死ぬかもしれない。
「なら俺も行く」
「奴隷の為に自分も危険に入っていく人がいますか!私が1人でいきます」
止めていた足を動かして自分も入ろうとするとレンに前を塞がれ止められる
「なら俺が1人でいく」
「はぁ!?」
驚きと怒りの表情をこちらに向ける、前にもこの顔見たな
「お前自分で奴隷がぁ~とか言っておきながら主人に「はぁ?」はないだろ」
「あ、ついごめんなさ・・・じゃなくてですね!そんな事言うからびっくりしたんです!」
「え?なに?びっくりしたら「はぁ?ふざけんなニート!」とか暴言言っていいんスカ?」
「そんな事言ってません!勝手に酷くしないでください! じゃなくてなんでご主人様が1人でいくんですか!?」
「お前が1人で行くって言うからだろ!」
「奴隷の私とご主人様を一緒にしないでください!」
「こんな男と一緒にしないでくださいだって!?」
「言ってません!!!! もういいです私がいきますのでここで待っててください」
しびれを切らしたレンが俺を無視して歩き出す
「待てって!誰がいいって言った?それとも君は主人の命令を聞けない悪い子なんですかぁ?」
レンの腕をつかむが振りほどこうとされもみくちゃになる。
「いい加減にしてください! 死んだら終わりなんですよ!?」
「それはお前も同じだろうが!いいから待てよ!」
「一緒じゃありません!離してください!」
「ほらまた一緒って言った! うわ!?」
「きゃ!?」
レンの腕をつかんでいた俺がレンの無意識に飛ばした髪飾りでバランスを崩し前に倒れつかまれていたレンは一緒になって部屋に入ってしまう。
「レン!早く下がれ!」
「ご主人様!早く下がってください!」
「真似すんなよ!」
「それはご主人様でしょ!」
「それよりも構えろ来るぞ!」
「むー! 分かりました!」
2人とも武器を構えて周りを警戒する。
俺はM202ロケットランチャーを構えて発射準備を整えた が
「・・・・・・」
「・・・・・・来ませんね」
「来ないな」
「あ!」
「なんだ!?」
気を引き締めてレンの見ている先を見ると一体のゴブリンが居た、ただの雑魚のようだ。
ギャギャギャー!
結局罠は発動せずにただの広場になっていたようだ。
言い合いになった事と警戒が無駄になった怒りを鉛玉としてゴブリンに雨の様に打ち込んだのは至極当然の行為だっただろう。




