加入
暗闇の中のリエラ。
身体の感覚が復活し、指がピクリと動く。伝播するように前腕、上腕が動く。
「んっ……」
若干の痛みを覚え、顔が歪む。
眼前の闇が消えて行き、光が差し込む。瞼の向こう側の世界のものだ。
彼女は、ゆっくりと目を開けた。
「……!!」
そこには、魔物の死体が転がっていた。何なら、自分も魔物の死体にもたれかかっている形だ。
「え……!?」
訳が分からない。何も思い出せない。否、正確には、大ピンチになる直前までの記憶は引き出せる。ただし、肝心のこの状況になった経緯が思い出せない。
最近、記憶を失いすぎでは……
困惑していると、ヴグレの声が聞こえてきた。
「……起きたか」
視線を走らせると、木を背もたれにして休んでいるヴグレ、クワイツ、イヨイがいた。
三人とも、どこか辛そうである。
「あの、大丈夫、ですか……?」
「……早速人の心配かよ。問題ねぇ」
……大丈夫そうは見えないが。
「『双龍』の影響だ。休めば戻る」
「双龍……」
双龍(そうりゅう:デュアル・ドラゴン)状態。これは、一人で複数の属性の力を操ることができる状態らしい。
しかし、そんなのは龍魂の原則に反している……
「お前。つえぇな」
「驚いたよ」
「……そやね」
「…………」
ヴグレたちの様子から、「コレ」をやったのは自分らしい。
自分が戦闘が出来るとは思えない。ただ、『もう一人の自分』なら……?
記憶を失う前に感じた、意識が沈み、何かと入れ替わる感覚。自分の中に、知らない・思い出せない「誰か」がいるとするなら……
「……信じられねぇってツラだな」
「……はい」
「確かに、アレは別人だったね」
「……まぁ、そやね」
「お前は、光龍を使えるらしい。それも、バカみてぇに強力なヤツをな」
「光龍……」
……なぜだろう。なんだか、懐かしさを感じる。
「キラーベアを一撃だよ。ま、ボク達が削ってたからかもだけど」
「まぁ、動きと力だけで、強いやんっ!て思った」
「ここまで言われても、知らねぇ、ってか」
「……いえ、少しだけ、懐かしさがあります。それに、意識が入れ替わる感覚?を一瞬感じました」
噓偽りなく、リエラは話す。頼りは、彼らしかいないのだ。
「記憶がないのは、そこからです。ただ、なんでしょう……この剣も、先程より身近に感じます」
「……変わり始めたか」
「ヴグレ?」
「所詮俺の憶測だが、お前は何らなの影響で部分的に記憶を失っている。ただ、完全に抜け落ちているのではないらしい。だから、危機的状況で意識が入れ替わり、龍力を解放した。恐らく、お前の龍が強引に、な」
「普通ならほぼ暴走状態なんだけど、そうじゃなかったよ。アレは」
「そやね。キラーベアだけを認識しよった。あたしらを攻撃してもおかしくなかったのに」
内に潜む龍であれば、自分たちが宿主をどうしようか理解しているだろう。
表面上は友好的な空気を出しているが、内に潜むモノは隠せない。龍なら、見抜く。が、それをせず、自分たちを生かした。
「そして、お前の龍が表面に出たことで、以前の記憶にも影響を及ぼしている。剣に対する変化もそれの一つだろうな」
「で、どう?龍魂は?」
クワイツに促され、龍魂との干渉を試みるリエラ。
「……申し訳ございません。まだ、分かりません。ただ、最初よりも『何か』を感じます」
「引き出せる程ではないって感じやね」
ボソッと呟くヴグレ。
「お荷物がよ……」
「「…………」」
聞こえないふりをする二人。どうせ売るのでは?と思うが、この呟きの意味は。
「ち……まぁいい。お前。俺たちと来い」
「え……」
最初からそんな空気では?と思ったが、言わない。残念ながら、主導権はあちらにある。
「お前の身元の詮索はしない。荷物も返す。その代わり、俺たちのチームに入れ」
顎で示された先には、手つかずの荷物が見える。
「……分かりました」
「いい判断だぜ」
「……すこし風に当たってきていいですか?血の匂いが……顔も拭きたいです」
「あぁ。(荷物)持っていけ。ただし、逃げるなよ」
「分かっています」
それに、龍魂を自由に発動できない状況では、追いつかれる。確実に。
リエラが離れてから、クワイツとイヨイは口を開く。
「どうしたんだい?」
「どしたん?」
「……気が変わった。あの力は可能性の塊だ。それに、身の危険がトリガーなら、売り物には適さねぇ」
元々、他人では持ち上がらない剣もセットである。今の一件で、より商品としての不適切さが増した。
また、あの力を掌握できれば、一気に形勢はひっくり返る。
「確かに」
「でも、お金が……」
「お前は乗り気じゃなかっただろ」
「は~い……」
莫大な金が手に入ることはなくなったが、可能性を手に入れた。
こいつを何とかして使えるレベルまで引き上げて、戦力に加える。
「戻りました」
「あぁ。俺たちも良くなった。まずは下山だ」
こうして、チームというには首をかしげたくなるような、一方的に利用しようとしているモノができあがった。
リエラの不安と、ヴグレたちの思惑。お互いが解消し、純粋に手を取り合うこと日は来るのだろうか―――――




