双龍
ヴグレたち対キラーベアの群れ。その戦闘は、ハイレベルだった。
彼らがどういう組織なのかは分からない。服装が別々であることを考える限り、公的な組織には属していない。
ただ、見ている分には、連携はそれなりに取れている。だから、組んでから暫くは経過している感じ。
属性はもちろん、好む技や間合いなど、戦い方を理解し合っている。
リエラは、彼らの影に隠れながら、その戦いを見ていることしかできない。
「……!!」
自分には記憶がない。それなのに、なぜか分かることがある。
彼らが扱う力が龍魂で、その属性。そして、力の優劣など。
リーダーのヴグレが一番強く、時点でクワイツ。イヨイが一番弱いが、レベル自体は低くない。
言ってしまえば、クワイツとイヨイに大きな差はない。それに、勝負となったら話は別。
クワイツは斧を使い、イヨイは双剣を使う。機動力の差で、イヨイが勝つ未来も見える。
「…………」
上手く表現できないが、なぜか分かってしまう。そして、その理解を疑わない。
未知な力であるはずの「龍魂」について、なぜこうも腑に落ちるのか。なぜ、その力について自分が扱える未来が見えないのか。
(……間違いなく分かる……!!なのに……!!)
ここまで理解できるのなら、自分にも扱える未来が見えてもおかしくない。なのに、見えない。想像がつかない。
自分が非龍力者だから?それはない。あの剣は、ヴグレたちでは持ち上がらなかった。それも、龍力が関わっているからだ。
だから、自分が非龍力者なら、彼らと同じように持ち上げることができないはず。
なら、どうして……
リエラがコソコソしている間にも、彼らは目まぐるしく戦場を駆けまわっている。
攻撃を繰り返し、キラーベアの注意を引く。リエラは、そのヴグレたちの背後に回り、敵と対峙しない陣営。
「ヴグレ!!こいつら、しぶといぞ!!」
「分かっている」
数もそうだが、キラーベア一体一体が強い。
ヴグレたちが力不足なのではなく、相手の体力の問題。そして、攻撃力も。
「ちょっと!手が足りんやん!!」
「チィ……!!」
こちらは三人に加え、相手は五体。しかも、こちらよりもチームワークが良い。
龍魂を使い、龍の力で戦闘力を底上げしていても、相手は素。力の基盤が違う。
「風裂斬!!」
キラーベア一体を切り飛ばし、フリーになっている別のキラーベアに対峙。
技を叩き込んでも、戦闘不能まで持っていけない。よって、ジリ貧の戦いとなっていく。
(足手まといが……)
ヴグレは群れの中で一番強い個体と、時点で強い個体を意識して戦っていた。
これらの個体は、あの二人ではキツイ。ただ、守りながらの戦いでは、こちらも思うように動けない。
「闇影刃・双撃」
技の連撃。それでもキラーベアは止まらない。
血も噴き出しているし、手ごたえもある。が、倒れない。
「地追破ッ!!」
クワイツも斧の一撃を叩き込む。が、決定打にはならない。ダメージに繋がっているとは思うが、キラーベアの動きは変わらない。
そんな中、ヴグレはリエラを見た。
彼女は、物凄く不安そうな顔で、自分たちの戦いを見守っている。
(そんな顔でみてんじゃねぇ……クソが……)
時に移動し、時に縮こまる。ただ、彼女の位置取りは完璧に近かった。
「あいつ……」
リエラは、決して自分たちの邪魔はしない。
自分たちは彼女の前にいるのだから、普通かもしれない。だが、戦闘で動き回ったり、武器の間合いや技範囲で、後方にも龍力が及ぶことはある。
なのに、彼女は技が影響しない範囲かつ、キラーベアと対峙しない位置を維持している。
(マジで何者だ……?)
偶然とは思えない立ち位置。
戦闘スタイルは見ていれば分かるだろうが、それを三人分、更に魔物の位置も考えて。
(……勿体ねぇかもな)
活動資金に変えるつもりだったが、興味が湧いた。
「……仕方ねぇ。まだ慣れねぇんだがな」
彼は呟き、『月龍の力も』発現させた。
「!?」
リエラは、分かりやすく驚く。
(あれは!!闇龍と月龍の力……!!)
これも、すぐに理解した。そして、その力は共存できないことも。
「ヴグレ!!無理すんなよ!!」
「……やるやん」
そう言って、クワイツとイヨイも『別の属性』を発現させた。
クワイツは炎。イヨイは光。
力が増し、龍力オーラも変化した。ただ、三人とも、明らかにきつそうな顔をしている。
それも当然だ。人一人に対して、龍魂も一つが常識。なのに、三人とも別の龍を発動させている。
何かの媒介もなく、完全に自分の体から。
「黒光斬」
「地裂紅蓮!!」
「聖風翔!」
明らかに桁違いな技が、キラーベアを襲う。
「!!」
効いてる。キラーベアが怯んでいる。
が、三人とも、先程の比ではないくらい動きが落ちている。
複数の属性と、大技で消耗しているのだろう。
と、そのスキを一体のキラーベアが刺した。陣形の乱れと、硬直のスキ。
「一体抜けた!!」
「ヤバ……!」
キラーベアとリエラの視線がぶつかる。
あれは、完全に「食う」目。
「「リエラ!!」」
叫ぶ声も、届かない。
恐怖で身体が硬直し、全く動かない。
「……!!」
弾丸のような速さで、一気に巨体が近付いてくる。
そして、血にまみれた爪を振り上げる。生身であの爪を食らって、生き残れるとは思わない。
完全に、死――――――
全身の毛穴が空き、様々な毛が逆立つ。
爪が振り下ろされた瞬間、リエラは意識が沈んだ。
代わりに、何かと「入れ替わる」感覚を微かに感じながら――――――




