目的
ヴグレたちは、正式加入したリエラを連れ、町に帰還した。
その道中、この世界のことを色々教えてもらった。
「そんな感じだ」
「ッ……」
その現実は、リエラの直感とは著しく乖離していた。
まず、ヴグレたちは、とある人物の駒として、日々任務に明け暮れているのだと。
その人物と会ったことはないとのこと。連絡手段は、通信珠で、こちらからも発信は可能らしい。ただ、任務完了の連絡意外の用事で、それをすることはなかった。
「ただ、顔も名前も知っている」
「え……?」
「有名なんだ。ムカつくけどね」
「南方騎士団長、ジュアスだ」
「南、方……?」
「……記憶なしか」
「いえ……騎士団は一つだと……」
「いつの時代の話だ」
聞けば、現在の騎士団は、五つに分かれているらしい。
中央騎士団、北方騎士団、東方騎士団、西方騎士団、南方騎士団。
「『五揮将』と世間からは呼ばれている」
「今はその五揮将が王の盾となり、剣となっているんだ。表向きは、ね」
「表向き……?」
「そ。裏では、みんなが色々動いてて、王になろうとしてるんよ」
「……穏やかではありませんね」
「それに気付いているのは、俺たちみたいな「飼い犬」だけだ」
話の流れで、何となく分かった。
他の五揮将にも、同じような飼い犬部隊がいるのだと。
「では、国民の皆さんは……」
「全く気付いていない。五揮将にも表向きの顔がある。だから、裏でコソコソ動ける人間が必要だ」
裏でコソコソ。公表できない、裏の戦力。
リエラの中で、謎の言葉が口から出る。
「四聖龍のようですね……」
「「「?」」」
しかし、ヴグレたちの反応は薄い。聞こえなかったか、意味不明すぎたか。
「……俺たちは、邪魔者を消すことが多い。魔物も、人も」
「!」
「騎士団が表立って動けない問題を対処するのが俺たちだ。拒否権はねぇ」
「…………」
「が、俺たちも俺たちで使われるだけなのは気に食わねぇ」
「何を、する気ですか……?」
「ジュアスは当然だが……他の騎士団も全部獲る」
「そんな、こと……」
騎士団を獲る。それは、ゆくゆくは王になることを目的としているから?
不安そうなリエラの表情に気付いたか、クワイツとイヨイは効果があるか分からないフォローを入れる。
「……ボクたちは解放されたいんだ。表じゃ生きられない、手も汚れる、こんな環境から」
「それをするには、ぶっ壊すしかないんよ」
「…………」
大丈夫なのか。ただ、もう逃げられないし、行く当てもない。
いざとなれば、彼らは自分の命に拘ることはしないだろう。それは、困る。だが、この目的を聞いてしまった今、どうすれば……
が、頭が回らず、リエラは話題を変える。
「ヴグレさん……皆さんは、二つの龍魂を扱うようですが……」
「…………」
「あ、いえ、答えたくなければ、構いません……」
「……俺たちは、全員『実験体』だ」
「!!」
「身寄りがなく、今日を生きるにも精一杯だった。が、南方騎士団に拾われた」
話を聞いてしまったから分かる。拾われたことは、彼らにとっていいことばかりではない。
「表向きは、救済。だが、実際は双龍の実験だった」
「!!」
「俺たちは、非龍力者だった。が、その実験で、メインの龍と、サブの龍を入れられた」
「そんな、ことが……」
「ボクたちの他にも、何人もいたんだよ。けど、生き残ったのは、ボクたちだけだった」
一魂につき一龍。これが大原則だと記憶がないなりに認識している。
それが、ひっくり返された。ただし、リエラが思う双龍とは、少し違うらしい。
「……一つの体に一つの龍。この認識は間違いねぇ。だから、『工夫』をされている」
「工夫……?」
「それぞれの龍に、弱体化が入っているんだ。それは他二人も同じだと思うよ」
「!!」
「わたしも、劣化龍が入ってる」
「弱体化の割合は各々だ。一人で複数の属性を扱えるメリットの代わりに、龍力レベルが単龍より低くなりやすい」
「…………」
それは、デメリットの方が高くないか?
単龍でも、他属性の力は扱える。難易度が高かったり、威力が落ちたり、媒介が必要だったり、確かに容易ではない。ただ、レベルを落としてまで手に入れる必要があるかは、疑問が残る。
「それは俺たちが望んだことじゃねぇ。その実験の結果、こうなってるだけだ」
考えを読まれたのか、追加でヴグレに言われる。
確かに、彼らは被験者で、希望したわけではない。ジュアスの意向で、こうなっているだけ。
「……他の騎士団も、裏では同じような実験をしているはずだ。他勢力(俺たち)に対抗するために」
「ボクたちは、双龍状態の反動に慣れることとか、劣化しているなりに力を上げることを目標に、毎日を生きてるんだ。任務もこなしながら、ね」
「そう、だったんですね……教えてくれて、ありがとうございます……」
消え入るような声で、そう言うしかできないリエラ。
彼らが置かれている環境や、国の現実は、自分が創造するよりも、混沌としている。




