源泉
レイラは「彼」が発見された町の騎士団基地へ飛び、情報収集を行った。
今は、彼が消えて行った方角へと歩を進めている。すぐに山に入り、道が消えた。
道なき道を行くこの感じ、非常に懐かしい。しかし、状況は最悪だ。懐かしんでばかりはいられない。
魔物にも遭遇するが、ソロだと逃げやすいし、負ける相手でもない。
数体の群れも、閃光で視界を奪い、逃げるなり倒すなりを選択していた。
対魔物でエンドとなることはなさそうではある。レイズたちは、別の何かで連絡が途絶えていると予測する。
(さて……)
手には、地図と聴取した情報が書かれたメモ用紙が握られている。
時折視線を落とし、地形を確認しながら思考を巡らせる。
(……マリナとミーネが共有してくれた特徴と一致……高確率で同一人物でしょう)
闇色の髪と、目が隠れるくらい長い前髪。髪質はサラサラ。
雰囲気は冷たい。少なくとも、親しみやすい感じではない、と。
服装だが、騎士団のモノではなくなっていた。同じような裾長の上着ではあるが、団支給品とは全くの別物だと言う。
(着替える時間も意思もあった、と……)
どういう意図で着替えたかは不明だ。多分、食事も睡眠も取っているだろう。
そこまで自由に動けているいるのに、なぜ戻らないのか。
何かしらの強いメッセージを感じるが、内容は全く想像つかない。
(リゼル……そこまで飛び回らなくても、手紙なりいただければ……)
わざわざ自分の足でカントリーツアーしなくても、手紙と言う便利な物がある。
帰ってこれない事情があるにしても、連絡手段はあるのだから……否、それすらも使いたくない状況なのか。
と、レイラは足を止める。
「この感じ……」
道はないが、大自然の中におり、心地よい。しかし、不思議な、言葉にできない感覚を覚えるようになった。気付いたときには、その間隔の中だ。
レイの駒の一つであった「フリア=サメラード」が王都全体を殺気で包んでいた時のモノではない。嫌な感じは一切しない。が、感じる。いったい、いつから……
それだけでなく、その源泉がどこなのかも、理解できる。確かに、そちらから感じる。
レイズたちも、この不思議な感覚に吸い寄せられたのだろうか。
何かある。「彼」に繋がる手がかりではないかも知れないが、仲間たちが消えてしまった手掛かりがあるかも知れない。
草木を踏みしめ、レイラは感覚のままに従う。
彼女が違和感も覚えるまで、そう時間はかからなかった。
「変……ですね……」
いくら進んでも、何も見えてこない。それに加え、感覚の源泉が極端に移動しているのだ。
限りなく近づいたと思えば、ふとした瞬間に離れたところから感じるようになる。それの繰り返し。
「ん……???」
感覚が鈍っているのではない。これに関しては、自信がある。
それなのに、こう何度も源泉が移動するだろうか?何か、見落としている……?
レイラは目印に石を置き、再度挑戦する。念のため、進む向きも。
感覚を追い、目印。感覚を追い、目印を繰り返す。
土地勘がない場所で、しかも山の中。道もない。さっき通ったな、とは感じにくい環境ではある。目印は、非常に役に立った。
「……二回目です」
移動した先に、間違いなく自分が置いた石ころがあった。次に進むつもりの向きも、この目印と同じ。
「……移動しているのは、私……?」
一気に鳥肌が立つ。
何らかの方法で、視認できない状態にあるのか。こんなの、思い当たるのは一つしかない。
(龍眼……!!)
龍魂ードラゴン・ソウルーを発動させ、力を目に集中させる。
龍力が集まることで、一時的に龍の視力を得る技術「龍眼」だ。
この瞬間には特に変化はない。ただし、今度はこの状態で、感覚を追う。
するとどうだ。
あっという間に、その源泉に辿り着いた。
「ッ……!!」
先程までは、確かに何もなかった。そのはずなのに、今は巨大なオブジェが聳え立っている。
外周も家くらいあり、背は周囲の木々よりも大きい。なのに、地図にはない。それも当然か。龍力による保護。生身では、発見できない。
そのオブジェを見て、再度思う。本当に不思議な空間だ。
レイラは場に立ち尽くし、目の前に広がる光景を呆然と眺めるのだった。




