焦燥
レイラは焦っていた。
信頼している仲間からの連絡が、一つ、また一つと途絶え、完全にコールされなくなった。もちろん、こちらからコールしても、繋がらない。完全に音信不通となってしまった。
飛んだ先の騎士団基地によると、「確実に来場して基地を離れた」と。
「彼」が消えたであろう先で、消息不明となっているのだ。
平常心を保ち、気丈に振舞っているが、内心は不安で不安で仕方がなかった。
(誰かにやられたのでは……)
しかし、最強の龍力者であるレイ=シャルトゥを打ち倒した仲間たち。
勝てない敵など、そうそういないはず。対魔物も考えたが、レイより強い魔物は想像がつかない。
仮にいたとするなら、騎士団に依頼が転がり込むはず。そんな情報は、入っていない。
四聖龍に頼ろうかとも思ったが、彼らの方から地位を降りたとの報告があった。
今その席は、全て空いている。
露出の多いシャレムとアリシアは、表舞台の活動を一時休止している。まさか、四聖龍の座も退いたとは、思っていなかったが。
(こうなったら……)
向かう先は、騎士団本部。こんな状況で、呑気に王都に籠っていられない。直談判だ。
レイの一件にケリがつき、クラッツの業務量は格段に減った。
王都にいる時間も増え、こうして報連相がしやすくなったのが良い。
部屋に入ると、クラッツは「来たか……」という表情を見せる。
遠くない未来、来るだろうなと予測していたのだろう。それも当然。レイズたちが行方不明なのは、知られている。
「……レイラ様」
業務量が減り、すぐにコンタクトが取れるようになったのは良い。
……ただ、積極的に特訓する必要がなくなったために、鈍っているように見える。
直感でそう感じたレイラ。恐らく、その直感は当たっている。デスクワークが増えたのだ。仕方がない、か。
とにかく、今はレイズたちを追うことを許可してもらわねば。
自分は国王という立場だが、騎士団員でもある。よって、勝手に動くことはできない。
今までが例外だった。平和になったこと、強引だったリゼルがいなくなったことで、余計に自由度が無くなったのだ。
「……お願いがあります」
意を決し、レイラはクラッチを見る。そして、訴える。
彼はその間、黙って話を聞いてくれた。
その後。
「……許可します。というより、こちらからお願いします」
「ありがとうございます」
四聖龍を失い、四英雄も欠けた。ただ、四英雄は騎士団を去っていない。去る意志はない。
レイズたちは貴重な戦力であり、士気上昇の起爆剤でもある。放置するなど、考えられない。
しかし、一般団員では力不足。四英雄が消えるだけの事態。任せることはできない。
騎士団長クラッツとも相談し、久しぶりに自分が調査する許可も得た。
「……しかし、レイズ君たちが消えてしまった後も、「彼」の目撃情報は入ってくる……会えなかったのか……?」
「ということは……!」
「あぁ。新たな目撃情報だ」
聞けば、タッチの差で目撃情報が入ってきたとのこと。
「「彼」を追うか「仲間」を追うか……レイラ様にお任せします。現れた場所は、こちらです」
「……はい」
レイラはクラッツから情報を貰い、ここを発つ準備に入る。
そして、レイズたちの消息を追うか、「彼」を追うかを迫られる。
(どうしたら……)
どちらを選んでも、不正解ではないと思う。
レイズたちが消えてしまった今でも、「彼」はカントリーツアーをしている。
何か訴えたいことがあるのか。レイズたちを消したのは、「彼」なのか。
自分たちは、「彼」をリゼルであると前提して動いた。しかし、その結果彼らは消えてしまった。
ならば、その前提がおかしいのか……?しかし、聞いた特徴はリゼルそのものだった、と。
(リゼルそっくりの人物が、マリナたちを消している……?しかも、各地で時を空けずに……?)
そう考えると、「彼」の動きを押さえた方が良い気がしてきた。
辿り着くことができれば、どうやってレイズたちを消息不明にしたかが分かる。
消えてしまった行方を追うより、得られる情報が多い気がする。
(申し訳ございません。皆さん、少し待っていてください)
黒髪の桂を装着し、レイラから一般人へと変装する。この感じは、本当に久しぶりだ。
(行きましょう。時間が惜しいです)
レイラは、自らの足で調査に向かう。目指すは、「彼」が現れた騎士団基地。
必ず情報を掴み、レイズたちも見つけ出す。




