連絡途絶
レイズたちが、王都レイグランズを発ってから一週間程度経過した。
通信珠によると、マリナとミーネが目撃情報があった騎士団基地へ飛んだとのこと。
レイズのみ、次の経路を予測して動いている、と。
まず、特徴のすり合わせ。リゼルである可能性が上がるのか、下がるのかの判断を。
次に、いつ、どこで、誰が見たか、その人物はどの方向へ向かったかを聞き取り、周辺調査へと向かう。
レイラと仲間たちは、随時情報を渡し合っている。
王都に残っているレイラは、仲間の情報を元に地図に記入していく。気づいた点があれば、逐一報告だ。
ただ、先回りしているレイズとは、あまり通信ができていない。彼が情報を受ける通信に反応はあるが、自分に渡せる情報はないのか、発信は少なめ。
今は、マリナと通信している。
「って感じ。一応消えた方向を見て回るつもり」
「……共通しているのは、わざと発見されるような町に出た後、人気のない方向へと向かっていることです」
「他の拠点でもそうなの?」
「はい。ミーネも同じような話でした。恐らくですが、「見られている」ことを意識しているようです」
自分で言うのもアレだが、自分たちは最強の龍力者の一人である。
よって、「見られている・意識されている」くらいは余裕で分かる。だから、「見られた・意識された」と判断した後に、町から消えている。
「なるほどね。ますます怪しいわ」
「はい。特徴も偶然とは思えないくらい一致しています」
「あのバカ、どういうつもりなの……?」
「本能的に、何かを察知しているのかも……」
彼は以前、呪いを受けた際、シャレムがいる霊峰に拘った。
居場所はもちろんのこと、彼女が呪いを解除できる使い手かどうか、認知していないはずなのに。
「国の各地に、何かがあると?」
「……彼はそう察知して言うのかもしれません。実際、私たちはこの国のことを全て知っている訳ではありませんから……」
「それはそうね」
地図は存在していても、それは一般的な物。
龍魂ードラゴン・ソウルーにより魔法をかけてしまえば、それは表に出てこない。
遺跡・神殿の隠し通路が分かりやすい例だ。
龍力による魔法は、一般人には認知できない世界。
彼が現れた場所には、その『何か』がある。きっと。
「じゃ、そろそろ行くわ。調査にどれくらいかかるか分かんないし。しばらく通信できないかも」
「分かりました。お願いします。貰った情報は、レイズにも共有しておきます」
「よろしく。上手くカチ合えばいいけど」
広い国で、たった一人を見つけ出すのは容易ではない。
手掛かりがあるとはいえ、情報は少ないのだ。会えない可能性の方が高い。
「はい。では」
レイラは通信を切り、レイズを呼び出す。
通信珠が数回温かい光を発した後、彼の声が聞こえた。
「ほいほい、どうした?」
「今いいですか?」
「あぁ。丁度町についたとこだ。これから基地に向かう」
「レイズ。マリナとミーネからの調査結果を共有しますね」
「あいよ」
レイラは二人から得た情報を共有した。
目撃情報の特徴と、リゼルの特徴が一致していることや、誰かに発見されたと確信した後、町から消えていることなど。
「そりゃあイイ。こっちから探さなくても、見つかりには来てくれるんだな」
「はい。逃げている訳ではないようです」
「なんかの導きかねぇ……」
「……無意味に行動する人ではないのは確かです」
「だな」
話している内に、レイズの足音が止まる。
「基地についた。一旦切るぜ」
「はい。『見る・意識する』について、共有をお願いします」
「了解だ」
通信珠が切れて、しばらく経ってからだ。
レイズの方から通信が入った。
「どうしました?」
「すまねぇ!!」
通信先のレイズは、非常に慌てている。緊急事態か。
「隣の基地で目撃情報があった!!すぐに向かう!!」
「!!」
まさか、いきなりのニアピン。
しかし、隣町とは。龍力ダッシュでも、数時間はかかる。
しかも、既に目撃されたということは、町から消えることが予測される。
「尾行は!!??」
「ついてもらった!けど、リゼルがガチれば、振り切られる!!」
「……!!」
それはそう。
完全潜伏が目的ではないのなら、多少の露出はする。しかし、知られたい相手ではない場合は、きっとまた消えてしまう。
気配を完全に消した龍力者を素人が見つけるのは、至難の業。実力が近しい龍力者でなければ。
ようやく掴んだ糸。それは、レイズにかかっている。
「……とにかく、お願いします……!!」
「あぁ!!とっつかまえてやる!!」
慌ただしく切れる通信。
心臓の鼓動を感じながら、通信珠を机に置くレイラ。そして、無意識に手を合わせ、指を組む。
(お願いします……!!見つかって……!!)
強く、強く祈るレイラ。
しかし、その後いつまで経っても、日を、週を跨いでもレイズから通信が入ることはなかった。
それだけではなく、別の場所にいるマリナ、ミーネからも通信は入らなかった。
(なん、で……どうして……??)
仲間がまた、消えていく―――――




