目撃情報
『グランズの崩壊』の黒幕、レイ=シャルトゥ(本名アレイン=リオレンス)を打ち倒した四英雄。
・レイラ=シュフール
金髪の美しい女性。髪の長さは肩から少し下くらい。
真面目で丁寧な性格。現国王。光龍を宿す。
・レイズ(レイジア=リオレンス)
茶髪の少年。長い前髪をやや左で分け、流している。
基本的に明るいが、悩む時はしっかり悩む普通の少年。太陽龍を宿す。
・マリナ=ライフォード
レイラと同じ金髪だが、黄色が強く出ている。毛先は外ハネしている。
根は真面目だが、基本的には大雑把。レイラと龍関係になると繊細になる。雷龍を宿す。
・ミーネ=マクライナ
蒼い髪の少女。髪型はサイドテール。
人見知りで控えめな性格。レイラたちと共にしている時はよく話す。氷龍を宿す。
当然、レイラは騎士団に残った。危機が去ったことや、騎士団員の龍力レベルが格段に上がったことで、現場に出る数は大幅に減っていた。
よって、長い時間、国の方針を考えるための情報収集や各騎士団基地とのコミュニケーションに使っていた。
表面上は、『あの日』以前の生活に戻っている。しかし、魔物は依然として強く、油断はできない。
また、失った人は、もう帰ってこない。
(お父様……)
思い出される、父の最期。
また、フリアが生きていた現実。それは、五英雄になるはずだった、リゼル=デスハイドの敗北を意味している。
遺体は発見されていないが、浮遊島の最後は木端微塵。
考えたくないが、彼も木端微塵に……いや、リゼルは自分を庇い、フリアの世界に囚われた。だから、今もそこで地に伏しているのかも……それか、フリアの死により、その世界が崩壊。外界に放り出されたのかも……
そして、何か奇跡が起きて、目を覚まして……ただ……
(動けるなら、真っ先にここに来そうなのに……)
ネガティブ・ポジティブな考えが浮かんでは消えていく。様々思考は巡るが、レイラは希望を捨てていなかった。
騎士団基地の情報網を使い、捜索願を出した。彼の情報を公開し、優先順位もできる限り上げてもらった。その成果もあってか、ここ最近、「闇色の髪の小柄な少年」の報告が上がるようになった。それも、やたら前髪が長い。
と、部屋の扉がノックされた。
「レイラ」
「はい。どうぞ」
入ってきたのは、レイズ、マリナ、ミーネ。苦楽を共にした、四英雄が揃う。
彼らは、騎士団に残った。危機は去ったが、心残りが大きいためだ。
レイズたちは、数枚のメモ用紙をレイラに渡した。
「確認してきたぜ」
「多分、間違いないと思う」
「聞いた限りだと、あたしも」
渡されたのは、リゼル=デスハイドの目撃情報についてだ。
「これは……!!」
彼らは、各基地から報告された情報を精査していた。
「あいつと特徴が一致してる」
闇色の髪と、目が隠れるくらい長い前髪。髪質はサラサラで、誰も寄せ付けない冷たい雰囲気。
同じ髪質の少年などごまんといるだろうが、その他の情報も追加されると、絶対値は少なくなる。
しかも、各騎士団には写真も渡している。
「写真はゲットできなかったけど、かなり可能性は高いと思う」
「……問題なのは、各地を転々としてること」
メモには、その少年の特徴と、目撃された場所が記録されている。
どれも王都とは離れていて、大陸もバラバラ。ただ、目撃日が別なため、無茶苦茶な情報って訳でもなさそうではある。不審な点は多いが。
「リゼル……」
彼の名を口にするレイラ。
「特徴はあいつそのものだが、何でこんなツアーを?」
当然の疑問をぶつけるレイズ。しかし、誰もその答えを持ち合わせていない。
「知らない。マジ意味わかんないわ。ここに帰るより優先されるコトなんてないと思ってるけど」
「そうだよね。動ける状況なら、一番に帰ってくるだろうし……」
「え……?」
ミーネは今、物凄く引っかかることを言った。
「「「動ける状況なら……?」」」
「え……なに……?」
レイラは視線を外す。
「動ける状況なら」真っ先に帰るはず。それなのに、帰ってこず、各地を転々としている。
自分に捜索願が出されているかどうか理解しているかは不明だが、完全に潜伏することはせず、顔を出して動いている。
「動けるけど、帰ってこれるだけの状況ではない……ってことか?」
「何?その状況……レイも倒したし、全部終わったんじゃ……」
「(リゼルだと仮定して話しますが)彼は、そう考えていないってことです……彼に何が見えているのか、想像もできませんが……」
それか、本当にリゼルとは無関係なソックリな人物なのか。
そんなソックリな人物が彼と入れ替わるように現れ、国を回っているのか。しかも、日付を確認する限り、間隔が短い。
それぞれの地域を短期間で発っている。観光もしないで。
「調査するよな?無関係でも、可能性がある以上は」
「……はい。どの道、他に手掛かりはありません」
レイラはメモを強く握りしめる。ようやく掴んだ、可能性の糸。
絶対に離すものか。
「おっけ、目撃日と基地の位置関係を確認して、移動先を予測するわ」
「目撃があった基地には?」
「……二回目があるかは分からない。先回り班と分かれた方がいいかもね」
観光ではなく、人に見られながらの大移動。目的が果たされるまで、カントリーツアーは続く(と思う)。
だから、目的が果たされるまで、彼は動き続けるだろう。
全て想像の域を出ないが、無視できない情報だ。徹底的に調べる。
「では、私も」
「レイラはここにいろよ。忙しいだろ」
「ですが……」
「可能性があるとはいえ、『かもしれない』に王様を引っ張れないわ」
「…………」
マリナの言うとおりだ。実際、レイラは暇ではない。
危機が去ったことで一区切りはしたが、やること・決めることは山のようにある。
以前のように睡眠時間を犠牲にする必要はないが、現場に出て、尚且つ国の内々のことをして……という時間はない。
「……お願いします」
「お願いされます。任せて」
ミーネは微笑み、拳を作る。
「サクッと調べて、ビンゴなら連れてきてやるよ」
「何かあったら通信珠で」
「うん。まずは班を決めようか」
頼もしい仲間をもった。レイラは、本当にそう思う。
「皆さん。よろしくお願いします」
王として、一人の人間として、彼女は仲間に頭を下げ、見送った。




