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ショートショート集  作者: 桜餅 詩音


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10/11

「理想の顔」

ほんの少しの時間を、この物語に預けてみてください。

あなたの心に何かが残れば嬉しいです。

矢田は容姿にコンプレックスがあった。

ある日、「一日で理想の顔になれる」という美容外科の広告を見つけた。

手術は驚くほど簡単だった。眠って、起きたら終わっていた。

鏡を見て、矢田は息を呑んだ。完璧だ。まさに理想の顔。

街を歩くと、みんなが振り返る。モテるようになった。仕事もうまくいった。

半年後、矢田はカフェで雑誌を読んでいた。

隣のテーブルに座った男性が、ふと顔を上げた。

矢田と目が合った。

男性の顔は、矢田と全く同じだった。

「あ…」男性も驚いている。

矢田は慌てて店を出た。だが、駅で、スーパーで、公園で、次々と「同じ顔」に出会った。

震えながらクリニックに戻ると、受付嬢が微笑んだ。

「ああ、気づかれましたか。当院の『理想の顔』は一種類だけなんです」

「なぜそんな…」

「だって、人間の理想って、みんな同じでしょう?」

矢田が鏡を見ると、そこには数え切れないほどの「自分」が映っていた。

クリニックの待合室は、全員が同じ顔だった。

お読みいただき、ありがとうございました。

この物語が、皆さまの時間に少しでも寄り添えていたら嬉しいです。

よろしければ、次の話も楽しみにしていただけると幸いです。

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