第52話:生きる価値
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村へ降りると、聞き慣れない楽器や曲調が鳴り響き、中央に設置された櫓にこの町の女性達が繋がれその周りを奇怪なダンスをして回る一種の儀式が行われていた。
無論、その様な行為をこの国を愛し、領主とともに国に残った者たちが行うはずもなく、この祭りに参加する者たちは移民たちであった。
どうやらクラウンが領主を討った事がどこからか漏れ、この有様らしい。
綻びかけたクラウンの心は限界だった。
この国を愛し、無念にも散った男が死んだのだ。
それなのに、移住させてもらっている分際でなぜここまで人の心を逆撫でし、侮辱する?
もしこの状況においてなお、彼らが何の感慨もないのなら⋯⋯彼らはこの国にいるべきでは無い。
――視界の端で、何かが揺れた。
櫓の頂上に、見知らぬ旗がはためいていた。
この行為が示すことはただ一つしかなかった。
彼らは領主が死んだことをいいことに、この領を自らの国であることを宣言したのである。
「ウーハァー、ウーハァー、ウーハァー!」
クラウン達が現れてなおもダンスは続けられ、彼らはニヤニヤと下卑た笑みで挑発的にクラウンの目の前でダンスをし、クラウンの頬に唾を吐きかけながら目を吊り上げるジェスチャーをとる。
それは皇国人への差別的なジェスチャーであり、住まわせてもらっているもの達がけして行ってはいけない行為であった。
クラウンはそのジェスチャーの意味は知らなかったが、何かしらの侮辱であることは理解できた。
それでも、クラウンは耐えていた。
感情に駆られ、動いたとあっては先ほどの二の舞。
組織に入った以上自分一人の感情で動くわけにはいかない。
ミロットにも言われた『秘めろ』という言葉を守り、クラウンは怒りのあまり吐き気すら催しながらも何とか抑え込んで耐えていた。
だが――
彼らはクラウンのその様子を臆病者と認識したのか、彼らの行動はより過激になる。
クラウンを取り囲むように煽り続ける移民達の奥で、住民達が縛られている櫓に彼らは火を放とうとしていたのだ。
どこか信じていた。
同じ人間同士だ。
分かり合える日が来るのだと。
しかし、彼らは違う。
この国の人間が持つ倫理観やモラルとは違う価値観で生きている。
そんな人間たちをこの国に入れればどうなるか?
結果は、火を見るより明らか。
いや、目の前の起きている状況こそが真実だ。
クラウンは目の前の移民達へ決定を下した。
入れてはいけない。
殺すべきだ――いや、駆除すべきだと。
あれは人ではない。
害虫に相違ない。
この国は、この国の人だけが住むべきであり、愛国心もなく居座る彼らは紛うことなく敵であると。
そこからは早かった。
明らかに目つきが変わったクラウンは、今もなお奇っ怪なダンスで煽り続ける彼らのうちの一人――十歳にも満たない子供の首をスパッ!と切り裂いた。頭部は宙を舞い、身体は力なく沈み込み、切り口からは血潮の噴水が際限なく噴き出しクラウンを赤く染めた。
身体は驚くほど軽かった。
先程まで纏まりついていた呪いは解かれ、浮かび上がりそうなくらい身体は軽く感覚は鋭敏になっているのを感じていた。
クラウンは沈むように重心を下げ、瞳だけを動かし強張り悲鳴をあげる素振りをとったものから順に首を刎ねていった。
悲鳴は知性あるものの嘆きや恐怖の象徴、彼らに悲鳴を上げる権利すらない。
そう告げているかのようにクラウンは殺戮ではなく、作業を始めた。
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