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憧れの『英雄』に殺されかけた僕は、革命軍に拾われたので、生まれ持った『未来視』で偽りの聖域を壊し尽くす  作者: 日影 聖真


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第42話:走れ



「ケホケホ。最悪なんですけど!あの流れ方ほとんど排泄物と一緒なんですけど!」


 薄暗い下水道の中、カミラが咳き込みながら起き上がった。壁にはヘドロが張り付き、足元には濁った水が流れている。どこかで水が滴る音だけが、静寂を埋めていた。


「ぅぅ………申し訳ないでヤンス」


 ノッチは申し訳なさそうに告げた。


「っていうか!説明してほしいんですけど!結局なんですか!裏切り者が六人中三人いたってことですか!何がどうなっているんですか!」


「カミラさん落ち着いて」


「落ち着けるわけないじゃないですか!下水道にドボーンしたんですよ!」


「ごめんなさい!皆さんにはどう謝っていいか。本当にごめんなさい」


 シノンは深々と頭を下げた。濡れた髪が顔に張り付いたまま、震える声で繰り返す。


「……シノン」


 家族のために仲間を裏切る。 

 家族のいないクラウンには少しファンタジーめいており、どちらの秤が重く、またその選択肢を強いられ実行することが苦悩の連続だったのか理解できなかったが、それでもクラウンは責める気になれなかった。

 しばらくの沈黙のあと、カミラが大きくため息をついた。


「で、ノッチ先輩は何だったんですか」


「ミーは裏切り者というか……。多分罠だろうなとはわかっていたでヤンスが。その……アクイ博士に久しぶりに会えそうだったでヤンスから」


「つまり、アクイ博士に会いたいから罠かもしれないけどわざと乗っかっていたってことですか?」


「そうでヤンス」


「そうでヤンス、じゃないですよ!シノンくんの話なら百歩譲って仕方ないとして!ノッチ先輩はただの我儘じゃないですか!どうするんですか!」


「でも仕方なかったんですよ。本部に裏切り者がいる可能性が高かったので相談できなかったんですよ」


 クラウンがすかさずフォローを入れる。


「それにしても色々回避できたと思いますけど」


「それはそうですけど……」


 カミラはもう一度大きなため息をついて、濡れた髪を手でかき上げた。


「ハァ。もういいです。脱出方法考えましょう。これ以上ここで怒っても時間の無駄ですし」


 四人はどちらが外へ繋がる道か分からないまま歩き始めた。水の流れる音だけが続く。


「そもそも皇国はなぜ土地神の回収とキメラ作りをしているのでしょうか」


 口火を切ったのはクラウンだった。


「エーテルを回収するためでヤンス」


「どういうことですか」


「エーテルを回収するにはどうすると思うでヤンス?」


「それは地面にエーテルがあるから掘り出すとか」


「そうでヤンス。でも、それだけでは足りなかったでヤンスよ。今の経済を支えるにはちまちまエーテルを掘り出すだけではとてももたないでヤンス。そこで考えたのが、エーテルが噴き出す源へ直接行って回収するという方法でヤンス。それでも何らかの手段で見つけ出したようでヤンスね。しかし、問題はまだあったでヤンス。それは、エーテルが噴き出す源には管理者がいたことでヤンス」


「管理者、まさか!?」


 クラウンはシナプスが走ったかのように理解した。


「そうでヤンス。それが土地神と呼ばれる存在でヤンス。しかも厄介なことに土地神は死んでも蘇るでヤンス。星がエーテルを持っている以上、永遠に生み出されるのが土地神でヤンスからね。これではエーテルの回収どころではない。そう行き詰まったときでヤンス。とある科学者が死んだままこちら側に留まらせる技術を思いついたでヤンス。何百年か、何千万年か知らないでヤンスが、とある名工が振った武器と同じく、この世に未だに残った生きた武器を作り出す方法を。その結果、無残に残った骸を再利用して作られたのがキメラでヤンス」


「ひょっとして、土地神に変な縫い跡があったのは――」


「おそらく武器素体として使われる時に解体されたからでヤンスね」


「武器ってどんなものになるんですか?」


「それはわからないでヤンス。元の素体と似た能力を持つらしいでヤンスが」


 能力?

 娼館で相まみえた男が持っていた武器がよぎっていた。斬った対象の経験と技術を模倣し、自分のものとする——まさにノッチが言った能力を持つ武器であった。クラウンの中で点と点が繋がった瞬間、背後から気配がした。 


「……何の音ですか?」


 カミラをはじめとした全メンバーが身構えると、音は次第に大きくなり謎の気配は濁流のような響きへと変わっていく。


『――アハハ!聞こえるか、下水道のネズミ共!』


 頭上の錆びついたスピーカーから、レックスの嘲笑が響き渡った。


『博士から「片付け」の許可が出たぜ。その区画、今から五分後に洗浄用の毒液をブチ込むことになった。ついでに、失敗作の「スクラップ」も数体放流してやったからよ。仲良く溶けちまいな!』


 言葉が終わるや否や、背後の通路からドロドロとした緑色の粘液を含んだ水が押し寄せてきた。


「五分!?ふざけないでくださいよ!逃げますよ!」


 カミラの合図で四人は一斉に走り出そうとしたその時――天井から数体のキメラが落ち、凄まじい爆音と衝撃に四人は吹き飛ばされて分断される。


 クラウンが武器に手をかけようとした時、ノッチの声が響いた。


「相手にしてはいけないでヤンス!一歩でも早くここから逃げるでヤンス!」


 ノッチの声が響くと同時に、四人は四方に走り出した。膝と足裏のちょうど真ん中くらいまある水嵩に足を取られながら、一分、一秒、一歩でも早く走った。


 凄まじい水音が迫るのを感じながら、蛇状のモンスターが大口を開けてクラウンを今まさに喰らおうとした直後――


 ――ゴォォォォォォォッ!!!


 水に呑み込まれた。

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