第40話:咆哮
―――――――――――――――――――――――
クラウンはキメラの骸を見下ろしながら、ミロット達との会話をフラッシュバックさせていた。
「……。」
シノン達へ視線を向けた後、静かに息を吐き、思案を巡らす。
ノッチの言う通り誘導されているのなら、やはり本部から来たメンバーの誰かが裏切り者である可能性が高い。
このままでは作戦は失敗に終わる。
何としてでも裏切り者を見つけ出すか、裏切り者と別行動をするしかない。
クラウンはそう結論付け、ノッチと意見を交わそうとすると――
「わかっていると思いヤンスが、本部には内緒でヤンスよ」
「はい……」
クラウンがノッチに意見を求める前に、ノッチから釘をさされた。クラウンは内心ちょっとだけ安堵した、ノッチも警戒をしているのだと。
しかし――
「大丈夫でヤンスよ。アクイ博士の事でヤンス。力技で制圧はないでヤンスよ」
ノッチのその一言に不穏極まりない嫌な予感がした。
「ノッチさん!アクイ博士のこと知っているんですか?」
「知っているでヤンス。ミーは元ここの研究者でヤンスから」
頭蓋を無視して、脳を直接ハンマーで叩かれたような衝撃に襲われた。
元研究者ってことは、敵の本丸たるアクイ博士その人と直接面識があるということだ。
本部のメンバーだけではなく、ノッチが裏切り者である可能性もあるということだろうか?
いや、だとしたらそんな事を言う必要は……。
落ち着け。
クラウンは今一度自分に言いつけ、冷静に考える。
革命軍の情報は何も一支部だけを狙い撃ちにして先読みされているわけではない。
全国に散らばる革命軍全体の情報が奪われているとミロットも言っていた事を思い出す。
しかし、それはノッチが確実に白であるという確証にはなり得ない。
最悪、クラウンの独断で判断することが強いられる。
そう考えたのも束の間、通路の先にかろうじて見えるその扉の向こうから気配がした。
「グァァァァアアアアアアアアアアアアア!」
地面が揺れた。その声だけで骨が軋み、内臓は破裂しそうなほど重低音が響いた。猛獣というにはあまりに威圧的で、威嚇というには恐怖として成立しすぎていた。
「なんすか今の!」
怪物の咆哮にも似たそれに、丁寧な口調だったカミラが思わず素でしゃべりだすほどクラウン達の緊張感が跳ね上がる。
「……。」
「っ!?」
「逃げましょう!」
カミラに続き、三者三様の反応を見せた。どこか意味深に沈黙するノッチに、身構えるクラウン、撤退を促すシノン。
「どうするんすか!逃げますか?」
「待ってください!このまま逃げてどうするんですか!僕たちの仕事に何百何千の革命軍と民間人の命がかかっているんですよ!」
カミラの問いに、クラウンは待ったをかけた。
「そんなこと言ってる場合ですか!こっちが死にますって!助けるどころじゃないですよ!」
「死ぬ事をリスクだと考えていては、僕は戦えません!」
「クラウンさん、僕も行きます!」
「さすがミロット殿が勧誘しただけあるヤンスね」
「もうヤダ革命軍。みんな覚悟決まりすぎですって!」
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった』『続きが気になる』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。




