第39:リスク
クラウンはその言葉を聞きながら、作戦会議の夜を思い出していた。
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本部との作戦会議が終わると、ミロットはアッシュ・ドッグスのメンバーだけをそっと会議室に呼び出していた。
「何ですか?こんな遅くに呼び出して。作戦会議なら、本部の方々も呼んだほうが」
「うーん。ちょっとそれは難しいかな」
「?」
呑気に質問するクラウンとは対照的に、ミロットの表情はいつになく固かった。クラウンは多少の違和感こそ感じつつも、関係性が他のメンバーに比べ薄いこともあってか楽観的であった。
「実はヴェーラから別に頼まれていることがあってね」
「何ですか?改まって」
クラウンの問いに、ただでさえ固かったミロットの表情は数段階引き締まりまっすぐに伝えた。
「今の革命軍には――裏切り者がいる可能性が高い。しかも今回本部から来たメンバーの中に」
その言葉に、空気がピシャリと一瞬固まった。
「根拠は?」
沈黙を真っ先に破ったのは、扉の隣で壁によりかかっていたスイレンだった。
「この頃続いている待ち伏せや先回り、内部から漏れていなければ説明がつかない。時期的にも、本部と連絡を取り始めた時期が一致しているしね」
「あの、なんで本部にこちらの作戦を共有する必要があるんですか?」
「袂を分かったとはいえ援助は受けているし、最低限互いが邪魔しないように連絡はとっておく必要があるからでヤンス」
「ま、こっちは本部の作戦は教えてもらえないけどね」
「でも、たまたまなんじゃ?先回りされてるからって裏切りがいるとはそれに――」
クラウンはその言葉を紡ぐのをやめた。言ってはいけない言葉であり、新参者のクラウンが口にするにはあまりに重い一言であったがためだ。
「私もヴェーラも、アッシュ・ドッグスだけが先回りされていたのならそう考えたかもしれないね。でも、全国に散らばる革命軍内で同じことが起きているのなら、話は変わる。幾ら皇国の諜報網が凄くても、各地の支部の動きを正確に看破することはまず不可能だよ」
「なるほど。各地に散らばった革命軍の作戦が何故か先回りされる。それも、本部に共有した途端に。おまけに、うちだけじゃなくて他の支部でも似たような事が起きてるとくれば、情報が集まる本部に工作員がいると見るのが自然だね」
「そんな!でも今回のメンバーに裏切り者がいると確証があるわけじゃ――」
「支部の作戦を知れるのは本部の諜報部門だけ。本部が狙われると知った工作員が全力で阻止しようとするなら、今回のメンバーに紛れているのが一番都合がいい。勿論、あくまで可能性の話だ。でも、警戒するに越したことはない」
覚悟を感じる硬い声にスイレンはミロットを尻目に、ボソリと漏らすように告げる。
「……。リスクじゃない?裏切り者がいる状態で潜入任務なんて。しかも、作戦の立案も経路もあっち任せなんて」
「わかってる。でも、内部に裏切り者を抱えておくわけにもいかない。何百何千の革命軍、ひいては国民の命がかかっているんだ。裏切り者を特定するには絶好のチャンスだ。最悪、裏切り者と相打ちになってもらうけどね」
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