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THE ORION  作者: 黒羽感類
西編 ー都市ー
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意味

オリオンの急な懇願にリックは困惑しつつも冷静に話し始める。


「東から来た兵士候補生に戦争を辞めろと言われて、黙っていられる気性じゃないぞ、女王は。


国民の声を聞いてより良い国、つまり国民が幸せを感じられる国にしようとしているのは確かだが、さっきも言ったが、それらは全て戦争によるオビアス統一が目的だ。


女王と士師がいかにも国民第一で動いているかのようにアピールすることで、国民に自分達を英雄視させる策略だ。


東の移民も含めて外から人を受け入れているのは、単なる兵士の数を増やすためだ。英雄ってのは人の信仰心を集めたり、一致団結させるために重要だ。


行きつく先が血みどろの戦争でも『この人について行けば何も考える必要はない』『自分達は幸せになれる』って思わせれば、支持される」


「俺らにとって女王は、敵ということ・・・?」


「女王は・・・・・・悪人ではない。国や国民に対する思いは本物だ。だが、なんの伝手もなしに会いに行くのは無謀だ」


アネッテは言う。


「じゃあ、士師から説得していくのはどう?」


「スパルテーは女王が直接統治していて、士師はここ以外の領地をあてがわれ、統治しているんだ。プロパガンダのためにスパルテーにやってくことはあるが、基本的にスパルテーにはいない。士師の中で唯一話の通じそうな第六士師は今どこにいるかもわからない」


「じゃあ、それぞれの領地に行くしかないか・・・」


「う~ん。正直、士師のような一流の魔法使いがお前らを見たら、一目で魔法使いだってバレるだろうなぁ。その年で魔法使いってのは、西じゃあ、怪しすぎる。東の兵士だって知ったら軍は黙っちゃいないだろうし。兵士なら情報を聞き出そうとするだろうな」


「陳情作戦は無理か・・・・・・」


導きの鏡によってスパルテーに飛ばされた意味は、陳情にあると考えた二人であったが、実現の難しさに意気消沈した。


深刻な顔で悩む二人を見てリックは、迷う。


(今のこいつらを女王に会わせることは、死にに行かせるようなもの。一人の大人として子どもを守るためには、諦めさせることが正解だ・・・・・・でも・・・・・・)


リックが悩んでいるとオリオンが口を開く。


「俺は戦争をやめることがオビアスを守ることだと思う。イエスタデイさんが言ってた。この国は元々一つの国だったんだって。なら、第三勢力の脅威がある今、東西で争うんじゃなくて、一致団結して、国を守るべきだと思う」


アネッテが続く。


「私達は奪うためじゃなく、守るために強くなれとイエスタデイさんに教わって学院に入ったの。スパルテー(ここ)にチャンスがあるなら、私達は諦めたくない」


オリオンとアネッテの覚悟の決まった目を見たリックも覚悟を決めて話し始める。


「東が第三勢力に責められたという話は知らなかったが、国はその情報を掴んでいるのだろうか。もし、それを脅威と思っているのならば、頑固一徹ではない女王は聞く耳を持つかもしれない」


「チャンスがあるってこと?」


「・・・付け入る隙はあるかもな」


その言葉に二人の口元が緩む。







しかし、リックは悩ましい表情で一瞬考えて、口を開く。


「だが、待て。今のお前らを女王に会わせるわけにはいかない」


オリオンは言う。


「なんで?」


「今のお前らでは、女王の前に立った瞬間、最悪死ぬ」


「死ぬ・・・⁉ 立っただけで?」


「さっきも言ったがお前らが魔法使いだってバレバレなんだよ。怪しまれたら女王にアレを使われる」


「なに、アレって?」


「魔眼だよ。女王の左目には魔眼が埋め込まれている。お前らが魔法使いなら、出会った瞬間、魔眼を発動されて、お前らの力を試される。戦いに行くわけではなく、交渉であっても女王の前に立つにはそれ相応の能力がいる」


「じゃあ、どうすればいいの?」


「俺がお前らを鍛える。それで素質があれば、陳情に行く伝手を俺が手配してやる」


「本当に‼」


「ただし! お前らでは力不足だと感じたら、きっぱり諦めてもらう。いいな?」


二人は目を合わせて意思を通じ合わせ、応える。


「わかった。必ず、リックとの修行で納得させて見せる‼」



                ◇◇◇



翌日、オリオンとアネッテ、リックは町外れにある草原にいた。


リックは言う。


「これからお前らの実力を見る。的を用意したからそこへ向かって魔法を放ってくれ」


二人の前には丸い的が二つ立てられている。


「あの小さな的でいいの?」


「ああ。なにか問題か?」


「いや、なんでもない」


最初はアネッテが的に向かって構える。


アネッテは「累燃火‼」と言って炎の剣で的を切り落とした。


リックは「ほう。中々の出力だ。次、オリオン」


オリオンは的から少し離れた位置で両手を前へ突き出した。


オリオンの制御された引力は、地面に突き刺された木の杭ごと的を手元まで引っ張った。


リックは驚いた表情で「・・・今の引力か?」と言った。


「魔法って言っても俺はまだ、引力操作しかできないんだ」


リックは困惑しながらも「いや、十分だ・・・これだけの引力を放てるなら一般兵士と比べても遜色ない」と言った。


「いや、今のは五十パーセントくらいしか出してないよ。アネッテも一番出力の高い技はまだ見せてないし。ね、アネッテ」


「うん。的が小さいから、これくらいがいいのかなって」


リックは二人の実力とポテンシャルに驚愕しながらも考える。


(これは・・・とんでもないガキ共と出会っちまったぜ・・・・・だが・・・・・・まだだ。これでもまだ、足りない。問題は女王が本気で魔眼を発動させた際に、生き残れるかだ)


リックは言う。


「お前らをさらに上の魔法使いにするために、とある技術を教える」


「技術?」


「その名も『回路』だ」

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