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THE ORION  作者: 黒羽感類
西編 ー都市ー
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スパルテー

スパルテーとは西オビアス国にある都市で女王の城があり、西オビアスにとって政治と軍隊の拠点でもある。


晩御飯にパンと豆のスープが出され、三人で机を囲った。


リックの薦めで今晩二人はリックの家に泊っていくことになったのだ。


「普段はもうちょっと豪華なんだぜ」


「ご飯食べられるだけでもありがたいです」


「そうか・・・お前ら、何を目的に旅してんだ?」


その何気ない質問に二人は返答に困る。


正直、仙人のもとで修業を積むことが最善だと五人は考えたが、仙人はこの道を行くことが五人の抱える使命にとって有効だと言った。


オリオンは自信なさげに「強くなるため・・・」と言った。


それを聞いたリックは何かを察したような反応をした。


「なあ、一つ気になっていること聞いていいか?」


「・・・なんですか?」


リックは真剣な眼差しを二人に向けて言う。


「お前ら魔法使いだろ」


二人はお互いの顔を見合わせる。


「なんでわかるんですか?」


「見りゃわかる。自分で言うのもなんだが、俺もそれなりの魔法使いだからな」


「リックさんも⁉」


「リックでいいよ。俺は元々西オビアス軍の教育長をやっていたんだ」


「教育長?」


「軍学校を出た兵士を教育する隊のトップだ」


「おお! すげぇ! なんでやめちゃったんですか?」


「ため口でいいぞ。・・・・・・俺は教育者として兵士をなるべく死なせないように教育してきた。戦争中だからと言って死んでいい命なんてないと思っていたからな。だが、戦地に送り出した兵士の訃報を聞くたびに俺は一体何をしてきたんだって考えちまって、段々、戦争に関わることが嫌になっちまってよ」


「それで軍をやめたんですね」


「ため口でいいって。それより、お前らは何歳なんだ?」


「十二歳です」


「十二⁉ お前らは一体、どこで魔法を学んだんだ⁉」


その質問に簡単には答えられない。東の学院のことを話すべきなのかわからないからだ。


二人が返答に詰まっているとリックは「よっぽどのエリート家系でない限り、普通は十五歳で軍学校に入ってそこで魔法を習うんだがな。お前らの出身はどこなんだ?」と言った。


「それは・・・」


またも返答に詰まる二人を見てリックは「・・・お前ら・・・もしかして東から来たのか?」と言った。


その言葉にあからさまに表情を変えて、二人は顔を見合わせてしまった。


リックはその反応を見てプッと吹き出しながら「お前らわかりやすすぎだろ」と笑った。


二人は焦って「いいいいいやおおお俺達は・・・」と訂正しようとするが、リックは笑いながら「いや、もう遅いよ。てか、大丈夫だ。東の人間だからって俺は何もしないよ」と言った。


意外な反応に二人がポカンとしているとリックは「東の奴が西に逃げてくることは珍しいことではないからな」と言った。


「そうなの⁉」


「いや、まぁ、頻繁にあるわけじゃないけどな。ただ・・・お前らみたいに魔法使いが来たのは初めてだ」


「・・・・・・」


リックは真剣な眼差しで言う。


「正直に答えてくれ。何をしに西へ来た?」


二人はお互い目配せをして、リックが信用に足るかを相談した。


リックの落ち着いた態度と兵士を死なせたくないという考えの持ち主であることを考慮して二人は決断した。


正直にこれまでの経緯をかいつまんで話し、そして『戦争を止める』という本来の目的を明かした。


話を聞き終わるとリックは「なるほどな」と言って少しの時間黙った。


そして再び口を開いて「お前ら、西へ来て何か感じたことはあるか?」と言った。


アネッテは「東の全てを知っているわけではないけれど、東と比べて西はすごく発展していて驚いたよね。オリオン」と言った。


リックは言う。


「だろうな。おそらく東とは考え方が違うだろうからな」


「考え方?」


「ああ、そうだ。簡単に言えば、東は国のために西は国民のために。そう考えて都市を作っている」


「つまり、東は国の軍事力を高くすることを目的に国を運営して、西は国民の生活を豊かにするために国を運営しているってこと?」


「そういうことだ。特にここスパルテーは女王の城があるから都市の人間は女王や士師に対して直接陳情することがよくある。そうやって発展させてきたのがスパルテーの歴史だ」


その言葉に二人は驚く。


東では士師に会うことすらままならない。それは一般市民にとって士師は上位の存在だという認識が根付いているからである。


「それはどんな人でもできるの?」


「もちろん。東からの移民もスパルテーの住民と認められているし、そいつらが陳情を行って士師が動いたこともある」


「東とは全然違う!」


声を弾ませて反応する二人にリックは顔を少し伏せて話を続ける。


「だがなぁ。女王の本懐は西側主導でのオビアス統一だ。全ては殺し合いをするためにやっていることだ・・・・・・同じなんだ・・・結局」


リックのその何かを諦めているかのような口調が気になりはしたが、オリオンは我慢できずに言う。


「でも、それでも俺は諦められない‼ 戦争を止めたい‼ リック、女王に会う方法を教えてくれ‼」

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