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THE ORION  作者: 黒羽感類
西編 ー都市ー
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煙人間

数日後の昼。ガブリエルとエバは町の手伝いにはいかず、町から少し離れた丘の上にイエスタデイと共にいた。


イエスタデイは言う。


「ガブリエル君。闇魔法の修行お疲れ様です。これから、エバと共に試練を受けてもらいます」


「はい‼ どんな試練ですか?」


「その前に。ガブリエル君のそのペンダントを私に貸していただけないでしょうか」


ガブリエルは不思議に思いつつ「いいっすよ」と言って骨のペンダントをわたした。


イエスタデイはペンダントを預かると、片手で空を撫でた。


するとガブリエルの目の前に大きな一面の鏡が現れた。


イエスタデイがその鏡にペンダントを持った手を伸ばすと、そのまま鏡の中に手が入っていった。


そして鏡の中から手を出すとイエスタデイの手にはペンダントが無くなっていた。


イエスタデイは言う。


「ガブリエル君とエバにはこの鏡の中に入ってもらい、先ほどのペンダンを見つけ出し、破壊して来てもらいます」


ガブリエルは困惑する。


「は、破壊⁉ イエスタデイさん! あれは生まれた時からかけている大事なやつなんですよ!」


「それでは聞きますが、ガブリエル君はアレが何かご存じですか?」


その質問にガブリエルは一瞬言葉を詰まらせる。


「わかりません。でも・・・」


「ガブリエル君。鏡の中に入ればアレが正体を現します。それを見て、壊すか判断してください」


イエスタデイを信頼するガブリエルは、決心を固め鏡に入ることにした。


「エバ! 入ろう!」


鏡にガブリエルとエバが入ろうとするとイエスタデイは言う。


「おそらくガブリエル君がここへ飛ばされたのは私に会うためでしょう」


ガブリエルは闇魔法の修行の事を思えば、その言葉に同意であった。


だが、イエスタデイの言葉には何か含みがあるように思えた。


「なぜそう思うのです」


「試練を突破したら話します」


二人は鏡の中へ入っていった。






鏡の中は、真っ白な世界だった。


ガブリエルとエバが鏡の中を眺めていると、少し離れた場所でペンダントにしていた骨が浮かんでいた。


「あれだ」


二人が近付くと、骨は大きく揺れ始めたかと思うと、真っ黒な魔力を煙のように放出し、それに包まれていった。


「気をつけろ、エバ!」


真っ黒な煙は次第に人の形をしていき、二メートル程の大きさになった。


煙人間は、黒い魔力で構成されており、体の中心にはペンダントにしていた骨が見える。


ガブリエルは黒い魔力を色と感覚から闇の魔力であると断定した。


煙人間は、右手をエバに向けると黒い煙の鎖を放った。


即座にガブリエルが鎖を捕まえようとするが、鎖に実態がないのか掴むことが出来ない。


そのまま鎖はエバを縛り上げて、絞めて殺そうと力が加えられる。


「まずい‼」


ガブリエルは急いで煙男本体に向かい、殴り掛かる。


しかし、鎖と同じように黒い煙の部分を攻撃しても実態を捕らえることは出来ない。


「くそう! これは骨が折れるぜ」


すると煙人間の力が弱まり、鎖が解けていく。


異変を感じてガブリエルがエバを見ると、エバの体を光の魔力が守っていた。


困惑する煙人間の臍のあたりにある骨に一撃を入れると煙人間は後退しながら、ガブリエルと距離を取った。


「エバ! 大丈夫か!」


エバは小声で「うん・・・精霊さんから・・・力を・・借りてきた・・から」と言った。


「そうか! よし! やるぞ!」


ガブリエルは警戒する煙人間に攻撃を仕掛ける。


煙人間はエバに向かって両手から鎖を放った。


「俺の事は無視かよ‼」


ガブリエルは唯一実体がある骨に拳技チャレンジを放とうとするが、ガブリエル以上の身体能力でいなしていく。


「お前は何者なんだ! どうしてペンダントから出てきた!」


煙人間に意思はないのか何も応えない。






煙人間が放った二本の鎖をエバは精霊から預かった光の魔力で対抗する。


エバの魔法使いとしてのポテンシャルは非常に高く、ただ存在するだけで精霊に好かれ、力を与えられる。


本来、精霊の力を借りる御呪いは生活の知恵のようなモノで出力の高い魔法は使えない。


だが、エバの御呪いはイエスタデイの御呪い以上の規模の出力を放つことができる。


エバが放出する光の魔力に押されている煙人間は、体を構成する闇の魔力を鎖に送りこむことで鎖の威力を上げた。





その間もガブリエルは骨への攻撃を何度も試みる。


暫くその攻防が続いたが、鎖に魔力を送り続けていた煙人間の出力が落ちたのをガブリエルは見逃さなかった。


(アレをやるか‼)


ガブリエルは即座に拳を構え集中した。


そのガブリエルの変化に気を取られた煙人間はエバへの攻撃が疎かになり、光の魔力が体に直撃してしまった。


煙人間は体を投げ出され、地面に倒れる。


ガブリエルが煙人間に近付くと、弱りながらも起き上がって抵抗しようとする。


「ようやく、コレが使えるくらい魔力を失ってくれたな」


ガブリエルがそう言うと拳を実体のない煙人間にぶつけた。


すると、煙人間の体を構成する闇の魔力がガブリエルの拳に集まっていった。


(こいつの体を影と同じように一つの塊として捉える。そうすれば引力操作でマナを集められる)


煙人間はそのまま闇の魔力としてガブリエルの拳に吸収された。


ガブリエルの拳には闇の魔力が滾っており、一撃限定ではあるが強力な殴打が可能な状態になった。


二人の目の前にはペンダントだった骨が浮かんでいる。


ガブリエルは闇の魔力に包まれた拳を叩きつけて、骨を砕いた。







二人は鏡から出ると、イエスタデイに粉々になった骨を見せた。


イエスタデイは言う。


「よく試練を突破しました。これだけ砕ければ残留魔法は維持できなくなる」


ガブリエルは疑問をぶつける。


「これは一体、何だったんですか?」


イエスタデイは遠くを見つめながら言う。


「そうですね。そろそろ話してもいい頃ですね」

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