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THE ORION  作者: 黒羽感類
西編 ー都市ー
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頼みごと

導きの鏡を潜ると目の前にはまた鏡があった。


目の前だけではない、無数の鏡に囲まれているのだ。


そしてもう一つ気が付く。


既に他の四人とは別れてしまったのだ、と。



ガブリエルは一人、寂しさを抱えながら目の前の鏡を次々に潜って行った。


そうして潜った鏡の枚数を数えることを止めてしばらく経ってようやく、最後の一面の前に立った。


最後の鏡の前でガブリエルは腹を括る。


(ここから先は一人だ。一人でなんとかしていくんだ・・・・・・‼)


ガブリエルは鏡を潜った。


鏡の先でガブリエを迎えたのは、木々が生い茂るいたって普通の森であった。


自分がどこに飛ばされたのか、森の中の情報だけでは特定できないため、森からの脱出を目的に歩き始めた。


昼間で良かったと安堵しながら歩いていると、少し先に、開けた場所が見えた。


ガブリエルは走って向かってみると、そこは丘になっていた。


丘から下を見ると、白い質素な家々が立ち並ぶ町があった。


「運がいい」と景色を眺めていると、首にかけている骨のペンダントが突如揺れ始めた。


「うわっ! またか⁉」


ペンダントの挙動に戸惑うガブリエルだったが、森の方からカサカサと音がして即座に振り返った。


するとそこに立っていた人物にガブリエルは驚いた。



「イエスタデイさん・・・・・・⁉」


森から出てきたのは大賢者イエスタデイだったのだ。


イエスタデイがこちらへ向かって歩いて来ようとすると骨の動きが止まる。


イエスタデイは「そろそろ来る気がしたんだ」と言ってガブリエルに握手を求めた。


ガブリエルは握手に応えながら「そろそろ?」と言った。


「導きの鏡が利用されたのを感じましてね」


「そんなこともわかるんだぁ」


イエスタデイは笑いながら言う。


「どうやら私のもとに導かれたのはガブリエル君だけのようですね」


「そーなんすよ! もう俺一人で心細くって!」


「頼もしい。私以外に君達を支えて下さる人がいるのですね」


「はい! 先生とか仙人とか・・・・・・あっ! イエスタデイさん、そういえばテピベラって犬知ってます? なんかイエスタデイさんの相棒とか言ってんたんですけど」


「もちろんです。彼は大切なお友達です」


イエスタデイは丘を下るように示し「私の家に招待しましょう」と言った。






丘から町へは舗装された道があり、容易に町へ入ることができた。


町の中の建物はどれも質素で特別栄えているようには見えなかったが、人々に活気がって貧しさは感じなかった。


大賢者の家も例にもれず質素で何の変哲もない小屋であった。


ガブリエルは案内されるがまま小屋に入ると、中もやはり一般的な内装であった。


ただ、ガブリエルの目を唯一引いた存在がある。


それは椅子に座る褐色肌の少女だった。


その少女はガブリエルに一度視線を向けたがすぐに興味を無くしたように視線を戻して虚空を見つめた。


知らない人間が入って来たという反応ではない。不思議な子だとガブリエルは思った。


イエスタデイが小屋に入るとその少女は立ち上がった。


イエスタデイは二人の間に立って「そうだ。紹介しないとね」と言った。


イエスタデイは少女を示しながら「ガブリエル君。この子はエバというんだ。私の弟子だ」と言うとガブリエルは驚いた。


「大賢者の弟子ぃ・・・⁉ てことは、次期大賢者ってこと⁉」


「そうです。私の唯一の使徒です」


「わぉ‼ すっげぇ‼ 俺ガブリエル・ヘルトブルクってんだ‼ よろしくな‼」


エバはコクリと頷いただけで、言葉は発さなかった。


イエスタデイは申し訳なさそうに「ごめんね。まだ、他人(ひと)とのおしゃべりに慣れていないんだ」


「そうですか! 少しずつ仲良くなっていきます!」


「そうしてくれるとありがたい」


自己紹介が終わったところで部屋の隅で何かが動くのをガブリエルは視界に捉えた。


部屋の隅に目をやるとそこには、パンをムシャムシャと頬張るテピベラの姿があった。


ガブリエルは言う。


「うお! テピベラじゃんか! いつのまに来てたんだよ!」


テピベラは口をモグモグさせながら応える。


「あん? 導きの鏡潜る時からいただろ。一緒に潜ったの気付いてなかったのかよ」


「マジかよ、いたのかよ。ホント神出鬼没だなぁテピベラは」


イエスタデイは言う。


「ガブリエル君よりも一足早く到着したのです」


ガブリエルが「そうだったのか。引き続きよろしく!」と言うとテピベラは少し間を空けて「ああ」とだけ応えた。






その日の夜、三人と一匹はテーブルを囲って晩御飯を食べた。


ガブリエルは学院に入ってからこれまでのことをイエスタデイに話した。


その中で、アネッテが魔法の熟練度が上ったことで忘れていた過去を思い出したという話をした。


イエスタデイは真剣な表情で静かに「そうか。思い出したか」と言った。


「なにか、知っているんですか?」


イエスタデイは笑みを浮かべて言う。


「その質問に答えるタイミングは今後、ガブリエル君の修行の様子を見ながら考えよう」


「・・・・・・修行? 修行ってもしかして・・・・・・イエスタデイさんがつけてくれるんすか‼」


「ええ。もちろんです。そのためにガブリエル君はここへ来たのでしょう」


ガブリエルは興奮する。


(おいおいおい‼ 大賢者から直々に魔法を教わるなんて‼ これってスーパーウルトラミラクル超すげぇ魔法を習得するチャンスなんじゃねぇか‼)


ガブリエルは興奮のあまり「おねっぎゃしゃっしゃしまぁすぅ(お願いします)‼」と言った。


イエスタデイは微笑む。


「それと修行の一環として一つ頼みごとがあります」


ガブリエルが調子よく「なんですか! なんでもやります!」と言うとイエスタデイは応える。




「ガブリエル君にはエバの世話係になってもらいます」

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