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THE ORION  作者: 黒羽感類
東編 ー迷霧ー
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導きの鏡

目覚めたダヴィは自分がベッドの上で眠っていたことに気付く。


横を見るとモラガが隣のベッドで眠っていた。


ダヴィは起き上がろうとするも胸の傷が痛んで起き上がれなかった。


すると、足元から声がする。


「士師というのは丈夫じゃのう」


その声の主が誰であるかダヴィはすぐにわかった。


「リウ・ジンロンか・・・」


「なんじゃ? がっかりしたかのう」


「ここは?」


「フィモス村の集会所じゃ」


仙人はダヴィの頭の近くに寄って顔色を見た。


「殺すつもりで貫いたのじゃが、元気そうでなによりじゃ」


「ふっ。それはお互い様でしょう。モラガは?」


「問題ない。一番軽傷だ」


「そうか・・・・・・なぜ、助けたのです?」


仙人は少し間を空けてから応える。


「君は士師だろうて。国を運営する者が減れば、それこそ国の危機じゃ」


「・・・・・アナタが国の事を考えているとは思いもしなかったですよ。もし、再びオリオンを殺そうとしたらどうするつもりです?」


「そうはならんさ」


「なぜ?」


「君は儂らに負けた。そして、霧の中で見たんじゃろ? 君の本当の想いを」


ダヴィは深い霧で見た少年時代の記憶を思い出す。


「あれはただの幻覚だ・・・」


仙人はポケットからと一枚の羊皮紙を取り出して「本当かのう」と言った。


それを見たダヴィは痛みを忘れ起き上がり、羊皮紙を受け取った。


それは十四歳の頃、フィリスが城に忍び込んでまで届けに来た絵だった。


十歳の頃、一緒にお互いの似顔絵を描いたのだ。


仙人は言う。


「君を処置しようとした際に、胸ポケットから出てきたそうじゃ。わざと見たわけではないからのう。怒らんでやってくれ」


ダヴィはじっとその絵を眺めた。


フィリスの笑顔と思い出が頭の中を駆け巡る。


「・・・フィモスの民に感謝しなければな」


ダヴィの目から涙が零れ落ち、羊皮紙を濡らした。


少し経って、ダヴィは涙を拭った。


そして、モラガの隣で眠るエルザを見る。


「すまない。僕がエルザを学院へ誘導したばかりに・・・」


「何を言っておる。あの子は運命を誰にも操られたりしておらん。あの子が自分で選んだんじゃ」


「そうか・・・・・・そうだな」


仙人はダヴィに問いかける。


「ダヴィよ。これから君はどうするのじゃ?」


ダヴィは少しの間を置いてから言う。


「僕には・・・まだやらなければならないことがあります・・・!」


仙人は頷いて「そうか。なら行くと良い。君の使命を全うしなさい」と言って、集会所を後にした。



                   ◇◇◇



オリオンは背中に痛みを感じながら目を覚ました。


起き上がろうとすると体に痛みが走り「いてっ」と声を出した。


すると、近くにいたのかアネッテ、ガブリエル、サレン、レンダがオリオンに駆け寄ってきた。


「オリオン‼」


「おい‼ オリオン大丈夫かよ‼」


「オリオンんんん~‼ 生きててよかったびょぉ~‼」


慌てふためくそんな三人とは違いレンダは冷静に「仙人と医者(先生)呼んでくる‼」と言って集会所を出た。


「ここはどこ?」


オリオンの問いにアネッテが答える。


「フィモス村だよ! 私たちが倒れてすぐ、カシアスさんとその仲間の人たちが助けに来てくれて、ここまで運んでくれたんだ!」


ガブリエルが続く。


「んで、フィモスの民は傷ついた俺たちを快く受け入れてくれて、そんで助けてくれたんだ!」


すると部屋の外から「俺も助けに行ったぞ!」とテピベラが入ってきた。


「テピベラ! 今までどこにいたの?」


その問いにテピベラの後から入ってきた仙人が答える。


「もしもの時に備えて、カシアスとテピベラには先にオッサ山を下りてもらって待機させていたんじゃ。一緒に戦いに参加させるよりも自由に行動できる部隊がいた方が良いと思ってな」


「そうだったんですね。ありがとうテピベラ」


「ま、これならイエスタデイにケチつけられなくてすむぜ」


アネッテがテピベラを肘で小突きながら「瀕死のアタシら見て、泣いてたらしいじゃん」と言うとテピベラは「カシアスの奴‼ また余計な事言いやがって‼」と照れ隠しをした。


オリオンは元気そうなみんなを見渡して「心配してくれてありがとう」と言った後、近くのベッドで眠るエルザに気が付く。


「あの、エルザ先生は・・・」


仙人はダヴィが集会所を立ち去る前に、言っていたことを話す。



『モラガの魔法は対象が気絶していなければ発動できない。死人は操れない。僕の攻撃で決して軽くないダメージを負ってはいるが、致命傷には至っていないはずです』



オリオンは言う。


「そうですか。助かるんですね」


フィモスの医者は言う。


「安心してください。必ず、元気な姿をお見せできます」


オリオンは再びお礼を言った。


その言葉に仙人は言う。


「まだ、感謝すべき人間がおるぞ」


「カシアスさんですね」


「まあ、それもそうだが、サレンのことじゃ」


サレンは言う。


「ピピッ‼ なんかアタシらが助かったのサレンちゃんのおかげらしいですぞぉ‼」


レンダが説明する。


「僕たちがドラゴンの攻撃を受ける瞬間、クマのぬいぐるみが盾になってくれたの覚えている?」


「ああ‼ そういえば‼」


「あれはサレンの魔法なんだ。ぬいぐるみが盾になってドラゴンの勢いを少しでも弱らせてくれていなかったら僕たちは死んでいたらしい」


「そうだったのか。今俺が生きているのはサレンのおかげなんだね・・・」オリオンはサレンの手を握って「ありがとう」と言った。


サレンは照れながらも少し悲しそうな表情をした。


「どうしたの? サレン」


「クマさんのぬいぐるみはね、この一か月半をかけてお守りとして縫ったモノなんだ。もし、アタシらに命に関わることが起きたら発動するように魔法をかけたの。つまり、奥の手というか、最低限アタシらの命を守る最後の手段。ホントに最後の最後の最後の切り札だったのに・・・」


「・・・・・・?」


「こんなにも早くクマちゃんを使うことになって・・・それで・・・あっけなく倒されて、みんなを攻撃から守り切れなくて・・・」


そう吐露するサレンをアネッテは抱きしめた。


「サレン、悲しまないで。私たち生きているじゃん。サレンがいなかったら、こんな風にサレンの暖かさを知ることが出来なかったよ。みんなの命の糸を繋いでくれてありがとう」


オリオンたちは、思わず涙を流すサレンを暖かく見守ったのだった。



                    ◇◇◇



暫くの間、フィモス村での療養生活を送り、元気なった五人を仙人は荷物をまとめさせ、呼び寄せた。


五人は、ただ「ついて来なさい」と言うだけの仙人とフィモスの民の長であるイゲティスの後ろを歩いて、森の奥へと進んでいった。


ある建物の前で立ち止まると、仙人がイゲティスに目配せをした。


イゲティスが五人に言う。


「この建物の中にフィモスの民以外の人間が入ることを禁止しています。ですが、リウ様と皆さんであれば、入っても良いと昨日の会議で採決が下されました」


ガブリエルが「そんなところに本当に俺らが入っていいのか?」言うと、イゲティスは「リウ様の気高き精神を敬うからこその判断です」と応えた。


五人が仙人を見る。


仙人は言う。


「儂は考えていたのじゃ。本当に君等のためになることはどんなことなのか。ダヴィが去った今、儂のもとに置いておくことも可能じゃないかと。しかし、それが本当に君等のためになるのか・・・」仙人は首元を押さえる「じゃが、イゲティスからこの建物の中にある存在(モノ)を教えられた時、気付いたのじゃ。君等が背負った使命を果たす手伝いをすることこそが、儂が今、君等にするべきことじゃないかと」


オリオンは言う。


「何があるのですか?」


その問いにイゲティスが「中に入ってから説明いたしましょう」と応えた。


仙人とイゲティスそして、五人は建物の中に入った。


建物の中には、フィモス村の建造物には珍しく、地下への階段があり、そこを下りていった。


薄暗い階段を下りると、一つだけドアがあり、それをイゲティスが開けた。


部屋の中は相変わらず薄暗かったが、狭かったため、五人はすぐに中にあるモノに気付いた。


部屋の中心には、一面の大きな丸い鏡が置いてあったのだ。


イゲティスが言う。


「これは大賢者イエスタデイ様が我々フィモスの民に与えて下さった『導きの鏡』です」


その説明にオリオンは先日聞いた、フィモスの民をイエスタデイが盗賊から守った話を思い出した。


「ダヴィが探していた魔道具ですね・・・・・・‼」


「そうです。再び我々に危機が訪れた時に使用するようにと言われています」


「なぜ、それを今?」


「この導きの鏡は、移動装置としての役割を持っているのです」


仙人は言う。


「導きの鏡の能力は、『鏡を潜った者を行くべき場所へ導く』というモノじゃ」


「それって、つまり鏡を潜るだけで別の場所に移動できるということですか?」


「そうじゃ。だが、この能力が何を意味するか気付いておるか?」


その問いにレンダは応える。


「必ずしも五人が同じ場所に行くとは限らない・・・」


「そうじゃ。五人がバラバラになる可能性がある」


五人はお互いの顔を見合った。


これまで五人で考え、五人で行動し、五人で強敵とも戦ってきた。


先生と会うことも叶わず、唯一頼れる仙人と別れた上で、戦争をしているこのオビアスで散り散りになる事は、五人にとって重大な決断である。


五人が不安を隠せずにいると、イゲティスは言う。


「安心してください。どこに行っても災難に会う我々に大賢者が与えて下さったモノです。必ず皆さんを正しい方向へ導いてくれるでしょう。フィモスの民を代表してワタシが断言します」


その力強い言葉に五人は、少し考えた後、目配せをして「よろしくお願いします‼」と返事をした。


仙人は言う。


「さて、これで本当のお別れじゃのう」


その言葉に五人が寂しそうな表情をすると、仙人は五人それぞれを抱きしめて「強く生きるんじゃ。どこへ行っても必ず、君等を助けてくれる人が現れる。もし、辛い時があれば、皆との引力の繋がりを感じるのじゃ」


五人は「はい‼」と応えて鏡と向き合った。


仙人は言う。


「元気でのう」




その言葉を聞くと、平和な未来を求め、五人は導きの鏡へと入っていった。

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