人形
道を逸れたところでガブリエルとサレン、レンダが話し合う。
「どうやって探す?」とサレンが質問すると「エルザ先生の動向は?」とレンダが返す。
ガブリエルが答える。
「山頂に向かっている」
「なら魔法使いも山頂へ向かって移動しているはずだ」
「レンダ。なんか作戦あるのか?」
「任せて。取りあえず、エルザ先生との距離は開けれらすぎないように僕らも進もう」
「わかった」
「あと、魔法使いは一人とは限らないから気を付けて」
「承知したぁ‼」
三人は走って、エルザとの距離を詰める。
オリオンとアネッテで交戦をして足止めしている間に三人も足を止める。
レンダは弓矢を取り出して鏃にポケットから取り出した瓶の中に入っている液体を塗る。
そして、弓矢を構えて、山頂の方向へ空高く矢を放った。
放たれた矢が、弧を描いて飛んでいき、その天辺に辿り着くと鏃に着いた液体が一度タベラリウム君二号に変化すると、すぐに破裂して無数のタベラリウム君一号になってエルザ周辺広範囲に落ちていった。
「レンダ、なにしたのぉ?」
レンダは人差し指を口に当てた。
「静かに。もうすぐ聞こえるよ」
すると少し離れた場所から「ピィーピィーピィー」と音が鳴った。
レンダが「あっちだ‼」と言って音が鳴る方へ走り出したため他の二人もついて行った。
レンダが向かう先にはタベラリウム君だったであろう液体がそこら中に零れ落ちている。
「見つかるのを防ぐために破壊して回っているんだ」
「あの疑似生物鳴くんだな」
「鳴くというより、体をこすれ合わせることで音を鳴らしているんだ」
と話していると、頭上から大音量で「ピィーピィーピィー」と鳴る。
三人が見上げると、木の上にモラガが立っていた。
ガブリエルが言う。
「お前か‼ エルザ先生を操っているのは‼」
モラガは言う。
「モラガと申します。ダヴィ第五士師の秘書をやっております。以後お見知りおきを」
「下りて来い‼ ぶっ飛ばしてやる‼」
「ぶっ飛ばしますか。それはあまり魅力的な申し出ではありませんね。お断りします」
そう言ってモラガは別の木に飛び移り、山頂を目指す。
「待て‼ コラァ‼」
三人は走り出す。
サレンは言う。
「アタシに任せてぇ‼」
サレンはここに来るまでに走りながら、拾った木の枝に草を絡ませて魔法をかけていた。
サレンは草を絡ませた枝をモラガが着地するであろう木を予測して、そこへ投げる。
枝が狙った木にぶつかると急激に太くなり、木から伸びる枝に当たり、枝をへし折った。
モラガは着地する枝を失って、地面に着地する。
「あらあら下りてしまいました」
すかさずガブリエルは殴りかかる。
ガブリエルの拳は避けられるが、モラガの反撃をガブリエルも避ける。
モラガとガブリエルが互角の体術戦を繰り広げる中、サレンはモラガを囲むようにこっそりと草を絡ませた木の枝を落としていった。
モラガがガブリエルと距離を取った隙にレンダは矢を打ち込む。
モラガは颯爽とかわし、レンダに狙いを定めると速度を上げて、接近した。
その瞬間、サレンが設置した罠が発動する。
モラガの顔を目掛けて枝が急激に伸びたのだ。
しかし、モラガはそれを片手で受け止める。
続いてレンダが放った矢を簡単に避けて、背後から迫るガブリエルの拳を受け流した。
余裕綽々に見えるモラガだったが、今しがた避けたばかりの木に刺さった矢から木の枝が伸びてきていることに目前で気づき、避けきれなかったモラガの顔面に直撃する。
サレンは喜び跳ねる。
「やったぁ‼ アタシらの共同作業成功‼」
サレンは予め、魔法をかけた枝をレンダにわたしており、レンダはそれをタベラリウム君の液体の粘着性を利用して矢につけて放ったのだった。
三人は攻撃の手を緩めない。
サレンが足を振り上げ、力いっぱい地面に下ろすと、大きな音と共に設置した全ての罠が発動して、モラガ目掛けて伸びていく。
「これはさすがに危ないですね」
と言ってモラガ飛び上がると、即座にレンダは進行方向に矢を放って動きを止める。
そこへガブリエルが拳を構える。
「今度こそ当てる‼」
モラガは顔面に向かってくる拳をかわすと、ガブリエルに反撃する態勢をとる。
だがその時、モラガは誤算に気付く。
「残像パンチ‼」
ガブリエルの残像の拳がモラガの顔面にめり込んだのだ。
モラガは後退させられる。
「やりますね・・・」
「エルザ先生を解放しろ‼」
「それはできません・・・・・・こうなればアレを使うしかありませんね」
その言葉に三人は構える。
その瞬間、モラガは両手を上げたかと思うと、エルザの方へ引っ張られるようにかなりの速度で飛んで行ってしまった。
「あいつ飛べるのかよ‼」
三人はエルザのいる方へ走り出した。
「ピピッ‼ アタシわかっちゃったぁ‼」
「どうしたのサレン?」
「あのおじさん今飛んだように見えたでしょ? あれ多分飛んだわけじゃないと思う」
「ならどうやったの?」
「おじさんの魔法は、多分操り人形みたいな感じでしょ。だから操っているエルザ先生と糸か何かで繋がっているんだと思う」
「なるほど。今、エルザ先生は魔法によって瞬発力と速度が格段に上がっている。その力を利用して引っ張らせたんだ」
「そーう‼ 大正解‼ さすがレンダァ‼ 普段は引っ張られないように糸を操る『主導権』みたいなもんが発動しているんだと思うよ」
ガブリエルが言う。
「サレンって頭いいんだなぁ」
「えっへん‼」
三人はエルザと対峙するオリオン、アネッテと合流する。
オリオンは言う。
「見つけてこれたみたいだね」
レンダは言う。
「そっちはどう?」
「エルザ先生に引力を当てるのに苦労している」
「やっぱり、あの魔法使いを止めなきゃいけないみたいだね」
エルザの出力を利用して高速移動を行うモラガを引力で捕らえるため、五人は動き出す。
ガブリエルとサレンはエルザの標的になるようにエルザの周辺で並走する。
アネッテとレンダはモラガに隙を作るために攻撃を仕掛ける。
オリオンはいつでも引力を放てるように準備をする。
モラガは思う。
(エルザさんの操作がおざなりになれば、あの強力な引力を持つ少年に動きを止められる。そうなれば素手で四人と戦わなければいけない。彼らの連携と体術、魔法のレベルを鑑みるに全員の相手をして私が勝つのは難しい。だからといって私に向かって来る二人に意識を向けないというのもまた不可能。こうなればエルザさんを最大限利用するしかありません)
モラガはエルザの背後に隠れながら、エルザによる攻撃を四人に向ける。
「ダイキリ」
炎の斬撃が四人を襲う。
エルザはモラガの顔に手を当てて「ドラケ」と詠唱する。
するとガブリエルの打撃により出ていた鼻血が止まる。
アネッテは剣に炎を滾らせる。
「炎累弾‼」
炎の弾丸がモラガ目掛けて飛んでくるが、エルザの俊敏性を生かして避けきった。
レンダはタベラリウム君二号が付着した矢を放ち、モラガの頭上で爆ぜさせることで無数のタベラリウム君一号を降らす。
レンダはモラガに言う。
「その子たち毒持っているから気を付けて」
モラガはエルザに炎の斬撃を頭上に撃たせることでに最低限の対策をする。
そこへアネッテが炎の縄である軌炎縄を携えて、現れる。
モラガは炎の縄を避けるため、スプリッツァーの放出方向を極端に絞り、急激な横移動を行った。
それを待っていたかのように、植物で作った網をサレンが投げる。
網は急激に大きくなり、モラガとエルザを覆いかぶさっていく。
モラガはスプリッツァーによる高速移動で回避しようとするも、二つ目の網が目の前に現れる。
「ふひひ‼ 一つだけじゃないよ~ん‼」
モラガは焦る。
(これだけの大きな網、スプリッツァーによる広範囲攻撃が必要だ。しかし、それを行ってしまうと高速移動ができず、炎の縄に捕まる。・・・・・・仕方ない‼)
モラガはスプリッツァーの勢いを利用してその場で回転をすることで炎の渦を作り出し、網を焼き、炎の縄を弾く作戦にでた。
だが、それは失敗だとモラガはすぐに気が付いた。
その場に留まってしまってはオリオンの引力の餌食となる。
オリオンが引力を発動してモラガを捕えるとガブリエルが飛び上がる。
ガブリエルが言う。
「食らえ‼ 拳技チャレンジ‼ 魔髄‼」
ガブリエルの拳技チャレンジの技の一つ『魔髄』は、対象を殴った瞬間、目の前に対象が存在する限り、オートで殴打を続けるという能力。
ガブリエルがモラガに拳を当てる瞬間、オリオンは引力を解除する。
ガブリエルの拳がモラガの頬にめり込む。
そしてそのままオートで殴打を連発すると、モラガはそのまま山頂の方へ投げ出された。
しかし、まだモラガの魔法は解けていないため、エルザも一緒に飛ばされていく。
五人はエルザを追って走り出した。




