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THE ORION  作者: 黒羽感類
東編 ー迷霧ー
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それぞれの思い

アネッテは話し終わると顔を伏せたまま黙っていた。


突然の重苦しい告白に四人は戸惑ったが一瞬の沈黙が流れた後、オリオンは立ち上ってアネッテの両手を握った。


「顔を上げて、アネッテ」


アネッテは恐る恐る顔を上げるがオリオンの目を見ることができない。


暗示魔法をかけられていたとはいえ、アネッテは未だ、村を放火したことへの罪の意識を持っているのだ。


オリオンは言う。


「アネッテは優しいよな」


「・・・え?」


「エレクトラの事をずっと心配して、助けてあげて守ってあげて。アネッテは昔から優しくて強かったんだね」


「でも・・・私は・・・」


アネッテが懺悔の気持ちを吐露しようとするとオリオンはギュッとアネッテの手を握った。


「親友を失って辛かったね。俺も父さんと母さんを亡くしているから少しは気持ちがわかるつもりだよ。でも今は、俺達を頼って欲しい。俺達、仲間だろ」


その言葉にレンダが続く。


「アネッテの悲しみや寂しさを一緒に背負わせてほしい。僕達がいるから寂しくない、悲しくないって思ってほしい」


ガブリエルが「てかよ~、アネッテなんでそんな気まずそうな顔してんだよぉ。俺達にそんな話したってことはよぉ~」とここまでガブリエルが言うと、サレンがアネッテに抱き付く。


「アネッテちゃん。アタシたちを信じてくれてありがとう。話してくれてありがとう。アネッテちゃんが辛いなら、アタシとガブリエルが笑わすから、もう悲しい顔しないで!」


「サレン・・・」


アネッテは目に涙を浮かべる。


「みんな・・・・・・ありがとう・・・・・・」


オリオンはアネッテに手を差し伸べた。


「明日からもみんな一緒だ‼」


アネッテは笑顔で「うん‼」と言って、手を取って立ち上がった。




アネッテの首元にある獣の刻印が消えたことを屋根から見守っていたテピベラだけが認めたのだった。







その後、五人はそれぞれの時間を過ごした。


レンダとサレンは二人で崖の上から山の景色を眺めた。


サレンは言う。


「ねぇ、レンダ。あの日の事覚えている?」


サレンが問うた「あの日」がいつを指すのか、レンダは即座に理解した。


父親に毒を盛ろうとした日の事だ。


だが、レンダは何も言えなかった。


サレンは言う。


「レンダが考えていること、アタシわかるよ。お父さんに毒を飲ませようとしたことは覚えているけれど、その結果どうなったか思い出せないんでしょ」


レンダは驚いた表情でサレンを見る。


サレンは続ける。


「実はアタシもなんだ。あの日、自分がやったことが思い出せない・・・なんでだろうね」


サレンの目に涙が浮かぶ。


それを見たレンダは、さっき四人がアネッテに言ったことを思い出した。


「サレン。君の隣には常に僕がいる。思い出せなくても僕が一緒に罪を背負える。いつかオリオンとアネッテとガブリエルに言える日が来たら、一緒に受け止めてもらおう」


サレンはレンダに寄りかかり「そうだね」と言った。


二人で景色を無言で眺めながら、それでも意思は通じ合っていた。


サレンの小指から赤い糸が現れ、レンダの小指に結ばれた。サレンの魔法である。







オリオンとアネッテは焚火にあたっていた。


「さっきは急に重い話をしてごめんね」


「いいよ。寧ろ話してくれて嬉しいよ」


「うん」


「アネッテ。星を見なよ。綺麗だよ」


アネッテは暗黒の中を照らし出す星々を眺めた。


「こんなにゆっくり星を眺めたのは故郷にいた時以来だよ」


「アネッテが生み出す炎も戦争に苦しむ人達を照らしてくれるんだろうな」


「オリオン・・・?」


「人の受け売りで申し訳ないけど。アネッテの魔法はきっと人々を救うよ‼」


アネッテは思い出した。


火のマナしか集められず、忌避する炎を剣に纏った時、自分がこの力を使って良いのか。何故、自分がこの力を使わなければならないのか。


すぐにはその思いに決着をつけることはできなかった。


だが、クリファと修行して、アルガリドと戦い、そしてまた修行をして強敵と戦い、アネッテは炎と共に戦うことである考えが生まれた。


炎を扱えるのであれば、炎による脅威もなくすことが出来るのではないか。


炎によって人を救い、炎によって平和を守る。そんな魔法使いになれるのではないか。


いや、なるのだ。


アネッテはやる気に満ちた顔でオリオンに「ありがとう‼」と言った。








ガブリエルは一人、風を浴びながら散歩をして物思いに耽った。


(アネッテがあんな重い過去を忘れていたってどういうことなんだろう。俺にも何か覚えていないことがあるのだろうか・・・・・・)


その時、あることがガブリエルの脳裏をよぎった。


(修行初日に霧の中で聞いた女の声・・・。あれは俺と何か関係しているのか?)




ガブリエルは散歩を終え、小屋に入ろうとドアを開けた。


すると小屋の中では、仙人とカシアスが真剣な表情で話をしていた。


だが、すぐに会話をやめてカシアスが荷物を持ってドアの前にいるガブリエルの前に来た。


ガブリエルは言う。


「カシアス、出かけるの?」


「おう。ちと、リウさんから頼まれごとがあってな」


「そうか。仙人の弟子も大変だなぁ。こんな時間に出かけるなんて」


「そうだな・・・そうだ! そんなことよりも、ガブリエル!」


「なんだ?」


「強くなれよ‼ やることやったら、またここへ戻ってこい‼ それで今度は本気の勝負をしようぜ‼」


カシアスからその言葉をガブリエルは素直に喜んだ。


「おう‼ もっと強くなって戻ってくるぜ‼」


カシアスは笑みを浮かべると「じゃあな」と言って小屋を出て行った。


仙人は言う。


「儂はもう寝る。ガブリエル。外の四人に程々にするように言ってきてくれ。明日は早いからのう」

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