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鬼と蜘蛛~泥の中で咲き誇る華~  作者: 桜 千夜子
いとあはれなり、紅蓮華よ
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 金曜日の夜から日曜日まで鬼封村に行く事にした。まだ小さい頃の嫌な思い出があるが、今はもう桃華も高校生だ。誹謗中傷も、辛いけど凌げる自信がある。

 彩子の車で、鬼封村の祖母の家に乗せてもらった。

――ああ、そうだった。こんなにも鬼封は綺麗だったんだ。


 桃華は、車から降りると深呼吸をした。ポケットに入れた岩の欠片が、熱くなった。

「ほら、桃華荷物出すの手伝ってよ。」

「はぁい。」

 布団は無い為、寝袋とスーツケースを出して家に入れた。

「じゃあ、お母さんお参りしてから帰るから、お墓と部屋の掃除よろしくお願いね。」

「うん。分かった。掃除用具は何処にあるの?」

「おばあちゃんの部屋の隣に、倉庫代わりの部屋があるからそこにまとめてあるから。」


 桃華は、紅蓮華と早く会いたいと思いつつも、心を落ち着かせる為先に掃除をしておこうと思い立った。

――まずは、お墓だよね。

久しぶりに家の中に入ると、ホコリっぽい匂いとカビの匂いがする。定番としては蜘蛛の巣が張っていそうなものだが、蜘蛛の妖魔の子孫であるこの家には何も無かった。

マスクをして、倉庫の部屋に入りバケツと柄杓線香を取り出す。

桃華がお墓に着いた頃、お参りを終えた彩子とすれ違う。桃華の肩をポンっと叩いて微笑んだ後、舞里へ戻っていった。



古びた井戸から水をくみ上げバケツに入れて、柄杓でゆっくりとお墓にかけて清める。

“おばあちゃん…長い事来れなくてごめんね。”心を込めて清めた後、線香を上げて祈った。

 祖母との悲しい別れの直後から今までの事を報告した。

 そして、掃除用具を抱えて帰ろうとした時だった。

何気なく、振り返るとお墓に…祖母が立っていた。

『お…い…れ…お…れ…』


 口を大きく開けて分かりやすいように、必死に訴えている。


「おばあちゃん?なぁに?」

『お…し…れ…』

 そして、今まで見た事も無い極上な笑顔を浮かべて頷いた後、スゥっと空気に溶けて…居なくなった。誰かに教わったわけでも無いが、感覚的に祖母はこれを伝える為にこの世に残っていたのだと理解した。


 理解したとたんに、涙が滂沱のごとく流れ出た。

「おばあちゃん。ごめんね…それから有難う。」


 それから、おばあちゃんの言っている意味を考えた。恐らく…「押し入れ」って言ったんだと思う。きっと、その押し入れに大切な物があるのか?

 日当たりのいい場所で、バケツと柄杓を置き乾燥させる。

それから、マスクをして祖母の部屋の押し入れを開けた。ぶわっとホコリが舞い散る。彩子は、表面的に目立つ所は掃除をしてくれていたようだが、押し入れは手を付けていないようだった。中には引き出しが沢山あるタンスがあった。

――着物が入っているのかな?

 そっと上から順番に開けていく。特に変わった物は無いようだが…

一番下の引き出しを開けると、分厚いノートを発見した。その表紙にはマジックで

『桃華へ』と書いてあった。祖母が伝えたかった事はこれに間違いはないだろう。

 そっと捲ろうとしたら、開かない。

「ん?蜘蛛の糸?」

 どうやら祖母が紡いだ糸で、一般の人が開けないようになっていた。

そっと、糸を巻き取ると紙は劣化しておらず、文字が見えた。


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