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火球しか使えない私が、異世界最強の英雄に祭り上げられる(と、本人は不服である)  作者: SSS
借りてきた猫だった私が、なぜか国際会議で帝国を屈服させた聖女と讃えられる(と、本人は脳汁が足りず不完全燃焼である)

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第11話 その気配は察してたわ



「――さ、今日も、お祈りに、行きましょうか」


 悪口の件で、ひとしきり、ぷりぷりした、あと。私は、気を取り直して、立ち上がった。



  ◇



 うちの国では、私は、時々、地元の、精霊を、祀った、社に、お参りに、行く。……いえ、お参り、というか。……精霊たちと、じゃれに、行く、というのが、正しいかも、しれない。


「……ハンカチ、持った? ……あんたたち、スマホは?」


『みんな、持ってませーん』


「……そうよね。この世界、スマホ、ないもんね」


 ……我ながら、なんの、確認だ。……令和の、癖が、抜けない。


 ……で、私は、数匹の、精霊を、連れて。……のんびりと、社への、道を、歩いて、いた。……もちろん、頭の中は、まだ、半分。「誰よ、Cランクを、コネだなんて、言ったやつは」で、占められて、いたけれど。



  ◇



 社の、ある、広場に、着くと。……ちらほらと、参拝に、来た、住民の、姿が、あった。


「あ、聖女様だ!」


「聖女様、こんにちは!」


「ふふ。こんにちは」


 ……この国の、住民は、みんな、いい人ばかり。……聖女の、噂を、聞いて、遠くから、移り住んで、きた、人たちも、多い。……私に、笑顔で、挨拶を、してくれる。


 ……で。その、住民の、一人が。……こちらに、向かって。……にこやかに、歩いてきた。


「こんにちは、聖女様」


「はい、こんにちは」


 ……そして。……その、住民が。……私と、すれ違う、瞬間。……ふところから、すっと、光る、ものを、取り出して。……私に、向かって。……振りかぶった――



  ◇



 ……次の、瞬間。


 ――ばちん!


 と、乾いた、音がして。……その、住民は。……何かに、弾かれた、ように。……その場に、崩れ落ちた。


「……あら?」


 私は、きょとん、と、した。


「……どうしたの、この人。……急に、倒れちゃって」


 ……見ると。……さっきまで、にこやかに、挨拶して、きた、住民が。……白目を、剥いて。……ぴくぴく、と、痙攣しながら。……地面に、伸びて、いた。……その、手からは。……鋭い、短剣が。……ころり、と、転がって、いる。


『……ミライ』精霊が、呆れたように、言った。『……今の、暗殺者だよ。……ミライを、狙ってた』


「……あら、そうなの?」



  ◇



「……ふうん。……道理で。……なんか、嫌な、気配、したものね」私は、腕を、組んで、頷いた。「……その気配は、察してたわ。……だから、あんたたちが、なんとかしてくれる、と、思って、安心してたの」


『……いや、絶対、気づいてなかったよね?』


「……失礼ね。……気づいてたわよ。……ちゃんと」


『……ほんとに?』


「……ほんとよ」


 ……嘘である。……まったく、気づいて、いなかった。……"Cランク、コネ、疑惑"で、頭が、いっぱいで。……目の前の、暗殺者にすら。……気づかず。……のんきに、挨拶を、返して、いた。


 ……でも。……まあ。……結果的に。……精霊たちが、守って、くれた、から。……いいでしょう。……いつも、そう、なんだから。



  ◇



「……それにしても」私は、倒れた、暗殺者を、見下ろして、しみじみと、言った。「……私を、狙う、なんて。……今日は、モテますわね」


『……モテ……?』


「そうよ。……刺客に、狙われる、なんて。……それだけ、私が、魅力的で、価値が、ある、って、こと、でしょう。……ふふ。……"美少女ランキング、一位から、狙われる"、って、噂は。……本当だったのね」


『……そんな、ランキング、あるの……?』


「……知らないけど。……たぶん、あるわ」


 ……あくまで、前向き。……命を、狙われて、なお。……"モテ"、として、処理する、この、鋼の、メンタル。……我ながら、天晴れ。



  ◇



「……ま、でも。……勘違いしないで、ね」私は、念のため、付け加えた。「……こういう、刺客とか。……私を、狙う、殿方とか。……そういうのに、興味は、ないから。……私、恋愛は、二次元、専門、なの」


『……いや、刺客は、恋愛じゃ、ないと、思う……』


「……とにかく。……三次元の、男には、ときめかないの。……そこは、譲れないわ」


 ……そう。……いくら、私が。……見目麗しい、殿方を。……愛でるのが、好きだと、いっても。……それは、あくまで。……鑑賞。……眺めて、楽しむ、だけ。……本命は、いつだって、二次元。……そこは、ぶれない。


 ……まあ。……この、痙攣してる、暗殺者は。……そもそも、愛でる、対象にも。……なりそうに、ないけれど。



  ◇



「……で。……この人、どうしましょうか」私は、精霊たちに、聞いた。


『……どうする? ……もう一発、いっとく?』


「……いえ。……殺しちゃ、だめよ」私は、首を、振った。「……生きたまま。……捕えておいて。……ギルドに、引き渡しましょう。……誰かに、雇われて、来たんでしょうし。……ちゃんと、調べて、もらわなきゃ」


『……はーい』


 ……こうして、私は。……自分を、殺そうとした、暗殺者を。……あっさりと、無力化し。……そして、生かしたまま、捕えて。……ギルドへと、突き出した。


 ……このとき、私は。……ただ、"物騒な、人が、いたから、捕まえた"、くらいの、軽い、気持ち、だった。


 ……でも。……この、"殺さずに、生きたまま、捕える"、という、私の、何気ない、判断が。……実は。……"聖女の、存在を、消したい"、あの、王国に、とって。……最も、都合の、悪い、一手だった、なんて。


 ……このときは。……もちろん。……知る由も、なかったのだった。



(第11話 了)

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