第12話 美味しいところ持ってくよね
国が。……できた。
……人間にも。……魔族にも。……精霊にも。……認められた。……聖女の、国。
……で。……その。……できあがった、国で。……私は。……何を、して、いたか、というと。
◇
……特に。……何も。……していなかった。
いえ。……正確には。……"象徴"、として。……どーん、と、構えて。……精霊たちと、一緒に。……土地を、耕したり。……社を、掃除したり。……野良精霊と、じゃれ、あったり。……そういう、ことは。……して、いた。
……でも。……国の。……大事な、ことは。
……全部。……五百旗頭が。……やって、いた。
帝国との、交渉。……近隣国との、折衝。……ギルドの、運営。……住民の、揉め事の、仲裁。……そういう。……面倒で。……大事な、ことを。……一手に、引き受けて。……最近では。……ひんぱんに。……帝都まで。……出向いて、いた。
……そして。……そのたびに。……国に、戻ってくると。
「……ただいま、戻りました」
……なんだか。……ちょっと。……得意げ、なのだ。
◇
「……ねえ、いおきべさん」ある日。……私は。……帝都から、戻ってきた、五百旗頭を。……つかまえて、言った。「……ちょっと。……いい?」
「……なんでしょう」
「……最近さ」私は。……唇を、尖らせた。「……うち。……私。……精霊たちと、しか。……喋って、ないんだけど」
「……はあ」
「……で。……あんたは。……なんか。……帝都、とか。……行ったり、してさ。……楽しそう。……だよね」
「……楽しそう、というか」五百旗頭は。……きょとん、と、した。「……忙しいん、ですけど」
「……なに」私は。……じとっと。……五百旗頭を、見た。「……私は。……蚊帳の、外、ですか」
◇
「……ちょっと、前から。……思ってたんだけどさ」私は。……腕を、組んだ。「……あんたって。……そういうところ。……あるよね」
「……そういうところ、って。……なんですか」
「……肝心な、ところ。……美味しい、ところ。……全部。……持ってくよね」私は。……ずばり、言った。「……なんか。……こう。……"承認欲求。……強め、女子"、っていうの?」
「……え? ……え?」
「そういう、女子ってさ」私は。……したり顔で。……続けた。「……嫌われる、のよ。……いい? ……こういうこと。……はっきり、言って、あげられるの。……私、だけ、なんだから。……感謝、しなさい」
……五百旗頭は。……ぽかん、と。……口を、開けて。……私を、見ていた。……たぶん。……自分が。……なぜ。……"承認欲求、強め、女子"、呼ばわり、されて、いるのか。……本気で。……理解、できて、いない、顔だった。
◇
……そのやり取りを。
……少し、離れた、ところで。……見て、いた。……少年が。……そっと。……五百旗頭に。……耳打ち、した。
「……やばい、ですね、五百旗頭さん」少年――トウリが。……小声で、言った。「……ミライさん。……ふてくされて、きましたよ、あれ」
「……そうね」五百旗頭も。……小声で、返した。「……どうしましょうか」
「……何を。……こそこそ。……喋ってるの」私は。……むっと、した。「……どうせ。……"ミライは。……精霊としか。……喋れない。……陰キャ"、って。……言いたいんでしょう」
「……いや。……ミライ。……冷静に」
「……どうせ。……私なんか」私は。……ヒートアップ、した。「……あんたが。……勇者、として。……外で。……ちやほや、されて。……注目、されたいから。……私を。……国に。……押し込めてる、んでしょう! ……知ってるん、だから!」
「……ちょ、ミライ!」
……私は。……ぷいっ、と。……背を、向けて。……その場を。……立ち去った。
「……あ、ミライ、待っ……」
……五百旗頭の、声を。……振り切って。
◇
……ちなみに。
……これは。……完全に。……私の。……八つ当たり、である。
……頭では。……わかって、いる。……五百旗頭が。……ちやほや、されたくて。……働いてる、わけじゃ、ない、こと。……むしろ。……私が、やったら、国が、傾く、面倒ごとを。……全部。……引き受けて、くれてる、こと。
……でも。……なんか。……もやもや、するのだ。
……最近。……五百旗頭は。……忙しそうで。……私と。……あんまり。……喋って、くれない。……昔は。……二人で。……くだらない、ことで。……ずっと。……漫才、みたいに。……喋って、いたのに。
……なんか。……寂しい。
……いや。……寂しく、なんて。……ないけど。……ただ。……なんか。……もやもや、するだけ。……そう。……もやもや。
◇
『……ミライー。……どうしたのー?』
ふてくされて。……一人。……社の、裏で。……膝を、抱えて、いると。……精霊たちが。……心配そうに。……集まってきた。
「……聞いてよ、あんたたち」私は。……ここぞとばかりに。……愚痴った。「……五百旗頭さんが。……さあ。……最近。……全然。……かまって、くれないの」
『……ふむふむ』
「……あの人さ。……昔から。……自己主張。……強いのよね」私は。……ずるずると、愚痴を、続けた。「……なんでも。……自分で。……仕切りたがるし。……そういう。……クセの、強い、五百旗頭さんの。……友達で。……いられるの。……この、広い、世界で。……私、くらいの、ものよ。……ほんと。……私って。……心が。……広い、わよね」
……精霊たちは。……顔を、見合わせた。
『……いや。……それ。……逆じゃない……?』
「……なにが?」
『……なんでも、ない』
◇
『……でもさ、ミライ』一匹の、精霊が。……とことこ、と。……寄ってきて。……言った。『……なんか、さー。……今の、ミライ、見てると。……あれ、っぽいよね』
「……あれ?」
『……ほら。……"スローライフ、主人公"、っぽい』
「……スローライフ、主人公?」
『そうそう』精霊たちが。……口々に、言った。『……荒れ地に、来て。……精霊と、仲良く、なって。……土地を、耕して。……国を、作って。……で、今。……のんびり。……田舎で。……ふてくされたり、してる。……これ。……完全に。……スローライフ、系の。……主人公、ムーブだよ』
「……スローライフ系の。……主人公……」
……ぴくっ。
……私の、耳が。……反応した。
◇
「……主人公……」私は。……ぽつり、と、呟いた。「……つまり。……私は、今。……主人公、ムーブを。……して、いる、と」
『そうそう』
『……都会(帝都)で、あくせく、してる、勇者より。……田舎で、精霊と、まったり、してる、聖女の、方が。……絶対。……物語の、主役、っぽいよ』
「……そう。……そうよね」
……なんだか。……急に。……機嫌が。……直って、きた。
……そうよ。……よく、考えたら。……帝都で。……書類仕事に。……追われてる。……五百旗頭さんより。……ここで。……精霊たちと。……のんびり、暮らして、いる、私の、方が。……ずっと。……物語の、主役、っぽい。……うん。……そう。……私が、主役。……当然。
「……ふふ。……あんたたち。……いいこと、言うじゃない」私は。……ふふん、と。……胸を、張った。「……そうよ。……私は。……スローライフ、主人公。……主役、なんだから。……ちやほや、されて。……当然、なのよ」
『……はいはい』
『……単純だなあ、ミライは』
……なんとでも、言いなさい。
……ふん。……ちょっと。……機嫌、直しちゃった、けど。……べつに。……五百旗頭さんを。……許した、わけじゃ。……ないんだからね。
(……もっとも。……この。……"ちょっとした、拗ね"、が。……このあと。……国を、揺るがす。……とんでもない、事態に。……発展する、なんて。……この、ときの、私は。……精霊たちの、慰めで。……いい気に、なって。……これっぽっちも。……考えて。……いなかった)
(第12話 了)




