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火球しか使えない私が、異世界最強の英雄に祭り上げられる(と、本人は不服である)  作者: SSS
精霊と築く私の国が、なぜか勝手に建国されて聖女国家と呼ばれる(と、本人は思っていない)

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第8話 魔王が、会いたいそうです



 国づくりが。……軌道に、乗り始めた、ある日。


 思いがけない、来客が。……あった。



  ◇



 ……といっても。……人間の、客じゃ、ない。


 その日。……見慣れない、精霊が。……ふらり、と。……精霊郷に、やってきた。


『……あの。……こちらに。……"聖女様"が。……いらっしゃると、伺って』


「……あら。……あなた、誰?」私は、首を、かしげた。「……見ない、顔ね」


『……はい。……私は。……魔王領から。……参りました』


「……魔王領?」


 ……ざわ、と。……周りの、精霊たちが。……色めき立った。


『……そう、警戒しないで、ください』その、精霊は。……おっとりと、言った。『……精霊に。……人間の、国境なんて。……関係、ありませんから。……私たちは。……人間領も。……魔王領も。……自由に。……行き来、するんです』


 ……ふうん。


 ……なるほど。……精霊には。……国境なんて、ない、のね。



  ◇



『……それで。……本題、なのですが』魔王領の、精霊は。……言った。『……我らが、あるじ。……"魔王"が。……聖女様に。……お会いしたい、と』


「……魔王が?」


『はい。……秘密裏に。……一度。……お話が、したい、と。……仰って、います』


 ……。


 ……魔王。


 ……あの。……魔王軍の。……頂点。


 ……その、魔王が。……この、私に。……会いたい、と。



  ◇



「――絶対に、ダメです」


 話を、聞いた、五百旗頭は。……即座に。……断言した。


「……なんで?」


「なんで、じゃ、ありません」五百旗頭は。……厳しい、顔で、言った。「……相手は。……魔王ですよ。……人類の、敵。……そんな、相手の、"会いたい"、なんて。……どう、考えても。……罠です。……のこのこ、出向いて。……そのまま。……殺される、かも、しれない」


「……でも。……向こうは。……"話が、したい"、って」


「……そう、言って。……油断させて。……討ち取る、つもりかも、しれないでしょう」五百旗頭は。……ため息を、ついた。「……いいですか、ミライ。……これは。……国の、命運が。……かかった、問題です。……安易に。……近づいては。……いけません」


 ……ふうん。


 ……五百旗頭が。……そこまで、言うなら。……確かに。……危険、なの、かも。


 ……でも。



  ◇



 ……魔王に。……会いに、行く。


 ……敵の、本拠地に。……単身。……乗り込んで。……頂点と。……差し、で。……渡り合う。


 ……。


 ……脳汁が。……どっぱどぱ、出てきた。


 ……なにそれ。……かっこ、よすぎる、でしょう。……"魔王と、対峙する、聖女"。……もう。……絵が。……できあがってる。……そんな、おいしい、イベント。……行かない、なんて。……あり得ない。


「……行くわ」私は、即答した。


「――ミライ!」


「だって!」私は、言い返した。「……向こうから。……"会いたい"、って。……言ってきてるのよ。……しかも。……わざわざ。……精霊を、使いに、寄越してまで。……これ。……無視、できないでしょう」


「無視、できます。……というか。……無視、するべきです」


「……それに」私は。……もっともらしく。……付け加えた。「……この、話。……魔王領の、精霊が。……わざわざ。……届けて、くれたのよ。……精霊の。……頼み、なの。……精霊の、頼みを。……無下には。……できないでしょう」


 ……我ながら。……いい、言い訳。


 (……本当は。……ただ。……かっこいい、シチュエーションに。……飛びつきたい。……だけ、なのだけど。……そこは。……精霊への、義理、という。……大義名分で。……うまく、包んで、おく)



  ◇



 ……それから。……私と、五百旗頭は。……延々と。……揉めた。


「危険です」「行きたい」「罠です」「脳汁が」「国が傾きます」「絵になる」「話を聞きなさい」「聞いてる」……。


 ……堂々巡り。


 ……で。……最終的に。……折れたのは。……五百旗頭、だった。


「……はあ。……わかりました」五百旗頭は。……こめかみを、押さえて、言った。「……あなたが。……こう、なったら。……止まらないのは。……よく、知っています。……止められないなら。……せめて。……私も、一緒に、行きます。……あなた、一人には。……絶対に。……行かせません」


「……ふふ。……そうこ、なくちゃ」


「……ただし」五百旗頭は。……鋭く、言った。「……少しでも。……怪しい、動きが、あれば。……即座に。……離脱、します。……いいですね」


「はいはい」


「……返事は、一回」


「はーい」


 ……こうして。……私と、五百旗頭。……そして、精霊たちで。……魔王との、会見に。……向かう、ことに、なった。


 (……ちなみに。……アリシアは、警備。……少年は、留守番。……"あなたたちは。……万が一の、ときの。……国の、要だから"、と。……五百旗頭が。……連れて、いかなかった)



  ◇



 ……で。……会見の、前夜。


 私は。……眠れなかった。


 ……布団の、中で。……何度も。……寝返りを、打った。


 ……明日。……いよいよ。……魔王に。……会う。


 ……どんな、やつ、かしら。……怖い、顔?……大きい?……角、生えてる?……何を。……話す、つもり、かしら。……あと。……そうだ。……明日の、服装。……どうしよう。……敵陣に、乗り込むんだから。……やっぱり。……"映える"、格好で。……行かなきゃ。……第一印象って。……大事だし。……いや、待って。……そもそも、魔王って。……写真、いえ。……肖像画とか。……残す、文化。……あるのかしら。……もし、あるなら。……ちゃんと。……盛れる、角度を。……研究しておかなきゃ……。


 ……そんなことを。……あれこれ。……考えて、いたら。


 ……結局。……一睡も。……できなかった。


 ……まるで。……遠足の、前の、日の。……小学生。……いえ。……修学旅行の、前の、夜の。……中学生、みたいに。


 ……ふん。……べつに。……緊張なんて。……してないんだから。……ただ。……楽しみ、なだけ。


 ……そう。……ただ。……楽しみで。……仕方が。……なかったのだった。



(第8話 了)

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