第2話 フォロワー、もうすぐ1000人
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第2話 フォロワー、もうすぐ1000人
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野良精霊たちが、私の、周りに、集まってきた。
最初は、一匹。……二匹。……それが、五匹、十匹、と。……おずおずと。……でも、確実に。……増えていく。
◇
『……ねえ、ねえ』
『……あなた、ほんとに、精霊が、見えるの?』
『……わたしたちのこと、見える?』
『……ねえ、こっち、見て』
……ふふ。
……見える見える。……ちゃんと、見えてるわよ。
私は、集まってきた、野良精霊たちを。……ぐるり、と、見回した。……小さくて。……弱々しくて。……でも。……私に、話しかけられて。……なんだか、少し、嬉しそう。
……そう。……この子たちは。……ずっと、誰にも。……気づいて、もらえなかったのね。……住処を、失って。……さまよって。……見える人も、いなくて。……ただ、独りぼっちで。……震えていた。
……なるほど。……わかるわ、その、気持ち。
……"誰にも、見て、もらえない"って。……いちばん、つらいもの。
◇
「――いいわよ!」私は、両手を、広げて、宣言した。「あんたたち、みんな、私が、見てあげる! ……フォロー、大歓迎!」
『……ふぉ、ふぉろー?』
「そう、フォロー!」私は、うんうん、頷いた。「……いい? 私を、フォローすれば。……私が、あんたたちを、認識する。……あんたたちは、もう、独りじゃ、ない。……私という、フォロワーが、ついてるんだから」
『……ふぉろわー……?』
「――フォロー、ありがとうございます!」私は、高らかに、言った。「……ふふ。……見て。……どんどん、増えていく。……このぶんだと。……もうすぐ、フォロワー、1000人、突破ね!」
……野良精霊たちが。……きょとん、と、私を、見上げた。
『……せんにん……?』
『……わたしたち……1000人も、いる……?』
「いるいる。……というか、これから、増えるの。……あんたたちが、仲間を、呼んでくれれば。……ね? ……あ、そうそう。……いいねと、コメントも、よろしく!」
『……いいね……?』
『……こめんと……?』
「わからない? ……いいから、やってみなさい。……こう、私に、向かって。……"いいね!"って」
『……い、いいね……?』
『……いいね!』
『……いいねー!』
……ふふ。……そうそう。……上手。
◇
「……ミライ」
……ふと、見ると。……五百旗頭が。……じとーっ、と、した、目で。……私を、見ていた。
「……あなた。……何を、やっているんですか」
「見て、わからない? ……ファンサービスよ」
「ファンサービス」
「そう。……この子たち、私の、フォロワーなの。……もうすぐ、1000人よ。……すごいでしょう」
「……ミライ」五百旗頭は、ため息を、ついた。「……喜んでいるの。……あなただけ、ですよ」
……む。
「……この子たちは、住処を、失って。……行き場を、なくして。……ここに、流れ着いた。……そう、あなたが、言っていたでしょう」五百旗頭は、静かに、言った。……そう。……五百旗頭には、精霊は、見えない。……でも、私が、話した、この子たちの、事情を。……ちゃんと、覚えて、いてくれた。「……行き場を、なくした、被災者、なんですよね。……それを。……フォロワーだの、いいねだの。……さすがに、不謹慎、では、ありませんか」
……。
……そう、言われると。……ぐうの音も、出ない。
「……ちっ。……わかったわよ」私は、口を、尖らせた。「……不謹慎で、悪かったわね」
◇
……でも。
そのとき。……私は。……気づいた。
……あれ?
さっきまで。……瓦礫の、陰で。……焼けた、木の、根元で。……小さく、震えていた、野良精霊たちが。
……いつのまにか。……瓦礫の、陰から。……出てきていた。
そして。……私の、周りを。……ふわふわと。……飛び回りながら。
『……いいね!』
『……フォロー、するー!』
『……ねえ、次は、なにするの?』
『……ぼくも、ぼくも!』
……なんだか。……さっきより。……ずっと。……元気に、なっていた。
◇
『……あの』
と、そこへ。……イフリートが。……そっと、寄ってきて。……小さな、声で、言った。
『……ミライさん。……あの子たち。……ここに、来てから、ずっと。……小さく、なって。……誰とも、口を、きかなくて。……もう、消えて、しまうんじゃ、ないかって。……心配してた、子も、いたんです』
「……そうなの?」
『はい。……でも。……ミライさんが。……あんなふうに。……明るく、話しかけて。……"見てる"って。……"独りじゃない"って。……言ってくれたから。……あの子たち。……久しぶりに。……笑ったんです』
……。
私は、改めて。……野良精霊たちを、見た。
……確かに。……彼らは。……笑っていた。……さっきまでの、あの、おどおどした、様子が。……嘘のように。……きゃっきゃと、はしゃぎながら。……私の、周りを、飛び回って、いる。
「……ふん」私は、そっぽを、向いた。「……当たり前でしょう。……この、湊ミライ様に、フォローされて。……元気に、ならない、わけが、ないわ」
『……あはは。……そうですね』イフリートは、なんだか、優しく、笑った。
◇
「……ミライ」
五百旗頭が。……ぽつり、と、言った。
「……なに」
「……いえ」五百旗頭は、少し、ばつが、悪そうに。「……私には、あの子たちの、姿は、見えません。……でも。……さっきまで、あなたの、周りは。……なんだか、沈んだ、空気でした。……それが、今は。……ずいぶん、賑やかで。……あたたかい。……あなたが、話しかけて、変わったんですよね。……"不謹慎"だなんて、言って、すみませんでした。……あなたの、あれは。……あなたなりの。……励まし、だったんですね」
「……はあ?」私は、心底、不思議そうに、首を、かしげた。「……励まし? ……何を、言ってるの。……私は、ただ。……フォロワーが、増えて。……嬉しかった、だけよ」
「……」五百旗頭は、しばらく、私を、見て。……それから、ふっと、笑った。「……ええ。……そう、ですね。……あなたは、そういう、人です」
……なによ、それ。……含みの、ある、言い方ね。
……まったく。……私は、ただ。……崇められて。……いい気分に、なってた、だけ、なのに。
(……もっとも。……その、"ただ、いい気分に、なってた、だけ"が。……この、荒れ果てた、精霊郷に。……最初の、小さな、灯りを。……ともした、ことに。……私は、まるで。……気づいて、いなかった)
(第2話 了)




