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火球しか使えない私が、異世界最強の英雄に祭り上げられる(と、本人は不服である)  作者: SSS
詠唱が長いだけの私が、精霊に代わりに戦ってもらって最強の聖女と崇められる(と、本人は思っていない)

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第11話 治療もイケメンに限る



 魔王軍は、撤退した。……皇太子軍の、救出は、成った。


 でも。……戦いの、爪痕は、深く。……あたりには、傷ついた、兵士たちが、大勢、倒れていた。


 そして、その、中心に。……重傷の、皇太子が。



  ◇



「……ミライ。……治療、できますか」五百旗頭が、皇太子の、傍らで、言った。「……かなりの、深手です」


「任せなさい」私は、進み出て。……傍らの、光の精霊に、呼びかけた。「光の精霊。……お願い」


『はい』


 金色の、光が、皇太子の、体を、包む。……傷が、みるみる、塞がって、いく。


「……うーん」私は、その、皇太子の、顔を、見て。……少し、考えた。「……これは。……ちょっと、ダメ、かも、ね」


「え?」五百旗頭が、慌てた。「……そんなに、重傷、なんですか」


「いえ。……傷は、治るわ」私は、頷いた。「……問題は、そこじゃ、ないの」


 ……そう。……この、皇太子。……なかなか。……顔が、整っている。……凛々しい、眉。……通った、鼻筋。……なるほど、なるほど。


「……少年」私は、傍らの、少年を、呼んだ。「……この、皇太子の、鎧と、上着を、脱がしなさい」


「……え?」



  ◇



『……あの、ミライさん』光の精霊が、遠慮がちに、言った。『……治療なら。……別に、服を、脱がさなくても。……上から、できますよ』


「いいから」私は、きっぱり、言った。「……脱がすの。……そのほうが、治療の、効きが。……いいかも、しれないでしょう」


『……いえ、ほとんど、変わらな……』


「いいから!」


 ……というわけで。……戸惑う、少年に、手伝わせて。……皇太子の、鎧と、上着を、脱がせた。……あらわに、なる、鍛えられた、上半身。……そこに、光の精霊の、癒しの、光が、降り注ぐ。


 ……ふむ。……なかなか。……眼福。


「……次。……あそこの、重傷の、将校。……あれも、脱がして」


「は、はい」


「……あっちの、若い、兵士も。……あれは、脱がして。……で、そっちの、髭面の、おじさんは。……服の、上から、でいいわ。……あ、あの、太った、兵士は。……帝国の、ヒーラーに、任せましょう。……こっちは、いいの」


 ……私の、指示は。……妙に、細かかった。



  ◇



 ……気づけば。


 私の、周りには。……上半身を、あらわに、した、イケメンの、兵士たちが。……ずらり、と、横たわり。……そこに、金色の、癒しの、光が、燦々と、降り注いで、いた。


 ……ふおおお。


 ……なにこれ。……なにこの、光景。……傷ついた、精悍な、男たちが。……肌を、さらして。……並んで、いる。……肩が、触れ合いそうな、距離で。……苦悶の、表情で。……あるいは、安らかな、寝顔で。


 ……夢? ……幻? ……桃源郷?


 (……ぐわあああ。……これは。……よだれ、ものですなあ……!)


 私は、その、絶景を。……両手を、組んで。……うっとりと、眺めた。



  ◇



「……ミライ」


 ふと、気づくと。……五百旗頭が。……じとーっ、と、した、目で。……私を、見ていた。


「……あなた。……さっきから。……脱がしてるの」


「……治療よ?」


「……全員。……顔が、いい、人ですよね」


 ……。


「……髭面の、おじさんは、服の、上から。……太った、兵士は、他の、ヒーラーに、丸投げ。……で、脱がして、並べてるの。……全員、若くて、顔の、いい、男」五百旗頭は、淡々と、指摘した。「……ミライ。……あなた、下心。……ばっちり、見えてますよ」


 ……ちっ。


「……ばれたか」私は、悪びれずに、言った。「……でも、いいでしょう。……私、ヒーラーだし。……傷は、ちゃんと、治してるんだから。……役得。……役得よ」


「……役得」


「……ふふ。……たまには、いい、思いを、しないと。……やってられないもの」



  ◇



「……あの、ミライさん」少年が、おずおずと、聞いてきた。「……その、脱がすのって。……本当に、治療に、必要、なんですか?」


「必要よ」


『……いえ、必要ない、です』光の精霊が、正直に、言った。


「うるさいわね! ……いいの! ……これは、私の、ヒーラーとしての、こだわりなの!」


 ……ちなみに。……念のため、言っておくけれど。


 ……私は、別に。……この、イケメンたちと。……どうこう、なりたい、わけじゃ、ない。


 ……付き合いたい、とか。……そういう、生々しい、話じゃ、なくて。……ただ。……こういう、精悍な、男たちが。……肌を、さらして。……無防備に、並んでいる、この、"絵"が。……最高に、尊い、というだけ。


 ……そう。……私は、あくまで。……鑑賞、する、側。……見る、専。……眺めて、愛でて、心の中で、供給を、いただく。……それだけ。……当事者には、ならないの。……そこは、ぶれないわ。


 (……ほんとうの、本命は、二次元、だしね)



  ◇



「……はあ」五百旗頭が、ため息を、ついた。「……あなたって、人は。……こんな、戦場でも。……ぶれませんね」


「当然でしょう」私は、胸を、張った。「……どんな、ときも。……自分に、正直。……それが、私の、モットーよ」


「……もっと、ほかに、正直に、なるべき、ことが、ある、気も、しますが」


 ……失礼ね。


 ……で。……ひとしきり、眼福を、堪能した、私は。……満足げに。……治療を、終えた。……ちゃんと、全員、傷は、治した。……役得は、あくまで、おまけ。……仕事は、きっちり。……プロ、だもの。



  ◇



 ……ところが。


 治療が、終わって。……意識を、取り戻した、兵士たちと、皇太子は。


 ……なぜか。……私を、見る、目が。……微妙に。……引いていた。


「……あの、聖女様。……私、なぜ。……服を、脱がされて……?」


「……治療に、必要だったの」私は、しれっと、言った。


「……いや、隣の、太った、彼は。……服の、上から、治療されて、いたようですが……」


「……気のせいよ」


「……」


 ……皇太子と、兵士たちの。……生温かい。……白い、目が。……私に、突き刺さった。


 ……ちっ。……人が、せっかく、治して、あげたのに。……失礼な、連中ね。


「……ミライ」五百旗頭が、肩を、すくめた。「……ほら、言わんこっちゃ、ない」


「……うるさいわね」


 ……こうして。……皇太子救出戦は。……無事、幕を、閉じた。……のだけれど。


 ……私の、名は。……この日、帝国に。……「幹部を、退けた、聖女」としてだけ、でなく。……「イケメンを、脱がしたがる、変な、聖女」としても。……ひっそりと。……刻まれた、のだった。



(第11話 了)

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