5. いいアイデア
「すみません、すみません、すみません、すみません!」
レグルは何度も何度も頭を下げ続けていた。ブランは目を真っ赤にしながら、タオルに包まれて床に座り込んでいる。
「大丈夫だ。俺が不注意だっただけだ」
「すみません、すみません、すみません、すみません、すみません!」
「それより、これは何なんだ?」
男は目をこすりながら、シャンプーの入った小瓶を手に取った。
「僕の故郷では、これをシャンプーって呼んでいます」
「シャンプー? 変わった名前だな」
これから自分の能力をどう使うか考えていたレグルの頭に、ひとつの良いアイデアが浮かんだ。それは――商売だった。自分が作り出した物を売れば、お金を稼げるだけでなく、スキルのレベルも上げられるかもしれない。
「お父さん? レグル? お父さんの叫び声が聞こえたけど、何かあったの?」
クララが家の角から顔を出し、二人のところへ近づいてきた。レグルは申し訳なさそうな顔になり、まるで電撃でも受けたかのようにビクッとした。そしてブランのほうを振り向くと、また謝り始める。
「すみません、すみません、すみません!」
「大丈夫だ。ただ、変わった名前の道具を試していただけだ」
「どんな道具?」
その瞬間、クララの鼻がふわりと漂ってきた心地よい香りを捉えた。
「何の匂い?」
「これは髪を洗うためのシャンプーです」
「やっぱり変な名前ね。えっと……私も使ってみていい?」
「い、いいけど……シャンプーが目に入らないように気をつけてね」
「うん」
クララは頷くと、ブランからシャンプーの入った瓶を受け取った。
それからというもの、この珍しい道具の噂はあっという間に村中へ広がり、シャンプーを買うためにレグルのもとへ人々が集まり始めた。ブランが村中にシャンプーのことを話してしまったため、やがて隣の村からも人が訪れるようになった。人々は次々と現代のシャンプーで髪を洗い、その髪が以前よりずっと綺麗になったことに驚いた。
特に女性たちは大喜びで、夫たちをシャンプーのおかわりを買いに行かせるほどだった。
「シャンプー一本でいくらだ?」
「銀貨二枚です」
最後の客が代金を支払い、ミントの香りがするシャンプーの瓶を持って帰っていった。
(さて、どれくらい貯まったかな?)
「回答:現在の所持金は銀貨342枚です」
「うわっ、ちょっと! なんで言うんだよ!」
「回答:あなたが尋ねたからです」
「ただの独り言だったんだけど……」
(結構貯まったな。勇者パーティーにいた頃だって、もらっていたのは銀貨100枚だけだった。それなら、いろんな街や王国で商売を始めたらどうなる? それに、シャンプーだけじゃなくて……)
レグルは作業台の前まで歩いていき、頭の中で石鹸と歯磨き粉を思い浮かべた。いつもの緑色の光が輝いた直後、目の前の作業台には二つの商品が現れた。
「すごい!」
レグルは液体石鹸を少し作り、さらに普通の石鹸をいくつか、そして歯磨き粉のチューブも何本か作り出した。これなら、自分のスキルを使って本当に財産を築けるかもしれない。
「出ていくことを伝えないとな。それと、泊めてもらったお礼もしないと」
レグルはそう呟くと、工房を出て、自分を助けてくれた家族の家へ向かって歩き始めた。
しかし、そのとき――遠くから突然、大きな叫び声が響き渡った。
「ゴブリンだ! ゴブリンが攻めてきたぞ!」




