20. さようなら、セリナさん
4時間が経過した。
「……再生が完了しました」
少年は両腕を下ろしたまま、ゆっくりと立ち上がった。セリナの身体は、まだ動かずに横たわっている。レグルは彼女のもとへ歩み寄ると、額にかかった髪をそっと払い、手のひらで半ば開いたままの瞳を閉じさせた。彼女の顔にはまだかすかな笑みが浮かんでいた。その表情を見た瞬間、レグルの胸は強く締めつけられた。
レグルは拳を握りしめ、そのまま地面へ叩きつけた。
「くそっ! くそっ、くそっ、くそっ!」
「警告:あなたは過度に動揺しています。落ち着くことを推奨します」
「黙れ!」
「…………………」
レグルはセリナを抱き上げ、そのままダンジョンの外へと連れ出した。道中では何匹ものゴブリンと遭遇したが、彼らはレグルを見ながら笑っていた。
「おい……どうして笑ってるんだ?」
奇妙なことに、ゴブリンたちは襲いかかってくることはなく、それどころか小さな子供のように逃げていった。レグルはセリナの身体を抱えたまま歩き続け、やがて、彼女を埋葬するのに相応しい場所を見つけた。恐ろしい出来事を経験した少女を、静かに眠らせるための場所だった。
「創造」
レグルの手の中に一本のスコップが現れた。彼はそれを使って地面に穴を掘り、そこへセリナの身体をそっと横たえると、土をかぶせていった。墓標を立てることはしなかった。知能の高い魔物に墓を掘り返され、その身体を食べられる可能性があったからだ。
レグルはセリナの墓の前に長い間立ち尽くし、なかなかその場を離れることができなかった。辺りは静まり返っており、聞こえてくるのは風に揺れる草の音と、森の中から聞こえるわずかな物音だけだった。レグルは目の前にある新しい土を見つめながら、ほんの数時間前まで、この少女が自分と話し、笑い、そして自分に感謝していたことを思い出していた。それなのに、今ここに残っているのは、彼女の墓だけだった。
「………………」
レグルはゆっくりと俯いた。何か言葉を残したかった。しかし、相応しい言葉が見つからなかった。ただ「さようなら」と言うだけでは足りないように思えた。それでも、それ以外に何を言えばいいのか分からない。結局、少年は重いため息をつくと、墓から背を向けた。
「エイレルに戻らないと……」
レグルは数歩進んだ。しかし、そこで足を止め、もう一度だけ振り返った。脳裏には、セリナの笑顔が浮かんでいた。レグルは拳を強く握りしめ、静かに口を開いた。
「絶対に……君のことを忘れない……セリナさん」
そう言い残すと、レグルはようやく歩き始めた。身体はすでに再生によって回復していた。それでも、心の中には重いものが残っていた。エイレルへ戻ったら、ブランや村人たちに何を話せばいいのか分からない。ダンジョンで何が起きたのかを理解してもらえるのかも分からない。そして、セリナの死をどう説明すればいいのかも分からなかった。
レグルは森の道を歩き続け、少しずつエイレルへと近づいていった。しかし、その間も彼の思考は何度も起きた出来事へと戻っていた。
レグルは足を止め、自分の手を見つめた。もう手は震えていなかった。それでも少年の脳裏には、初めて自分が創造した武器を手にしたときの感覚が、今もはっきりと残っていた。
「どうして……全部、こんなことになったんだ……?」
答えは返ってこなかった。
ただ、いつもの声だけが再び頭の中に響いた。
「助言:落ち着くことを推奨します」
レグルは数秒間目を閉じ、それから重いため息を吐いた。
「…………」
レグルは再び歩き始めた。前方にはエイレルの村が待っている。しかし、彼はまだ知らなかった。
このあと村へ戻った彼を待っている会話が、自分の持つスキルに対する考え方を大きく変えることになるとは。
村の門をくぐると、レグルの目にブランがこちらへ向かって走ってくる姿が映った。
「このクソガキ! 一体、何をしたんだ!?」
ブランの目には涙が浮かんでいた。その表情は、絶望に満ちていた。




