1. 裏切りの苦しみ
「レグル、どうして立っているだけで俺たちを助けなかったんだ!?」
「で、でも……」
「役立たずが! 俺たちが戦っている間、お前は立って魔物の攻撃を避けていただけじゃないか!」
「でも……」
緊張が高まっていく。
レグルは何度も言葉を遮られ、最後まで話すことすらできなかった。
彼らは森の中で立ち止まり、腕を組みながら眉をひそめ、全員がレグルを睨みつけていた。
「リックが死んだのはお前のせいだ!」
レグルは驚いた。
リックの死に、自分はまったく関係がない。それどころか、彼の命に影響を与えるようなことなど何もできなかった。
それなのに、かつて仲間だと思っていた者たちは、レグルに身勝手な言いがかりをつけ始めた。
その場の空気は、さらに重苦しいものへと変わっていく。
「俺はリックの死に関係ない! 俺は戦えないんだ! 俺の役目は、お前たちに必要な物資を用意することだった!」
すると、セレナという名の少女がレグルに近づき、彼の頬を平手で叩いた。
彼女の緑色の髪が風に揺れる。
パァンッ!
乾いた音が森に響き、まるで時間が止まったかのようだった。
その頬への一撃によって、レグルはようやく理解した。
自分は、ここでは必要とされていない。
レグルは叩かれた頬に手を当て、拳を強く握りしめた。
「お前たちは俺を責めるのか? そのくせ、自分たちはダンジョン第一階層の魔物すら倒せなかったじゃないか! お前たちはギルドの恥だ! それなのに、自分たちを勇者パーティーだと名乗っているのか? 笑わせるな! 戦うためのスキルを持っているお前たちが、あんな弱い魔物に負けたんだぞ!」
その瞬間、まるで誰かが自分の代わりに言葉を口にしているようだった。
レグル自身、自分がこんな言葉を言えたことに驚いていた。
だが、それだけの価値はあった。
彼らの驚愕した顔を見ていると、その表情は次第に怒りへと変わっていった。
「お前を殺してやる!」
回復役のミラがレグルに飛びかかろうとした。
しかし、それをガレットが止めた。
「落ち着け、ミラ! こいつを殺したら、法律上の問題になる!」
「チッ」
パーティーのリーダーであるガレットは姿勢を正し、レグルのすぐ目の前まで歩み寄った。
レグルには、ガレットの息遣いが聞こえた。
そして、激しい鼓動さえ感じるほどだった。
「お前は除名だ。役立たずのクズが」
ガレットはレグルのパーティーカードを取り出すと、それを破り、彼の目の前へと投げ捨てた。
そして彼らは振り返り、レグルを一度も振り返ることなく去っていった。
レグルには、彼らが歩きながら笑っている声が聞こえていた。
「やっと足手まといがいなくなったな」
「もっと早くこうすればよかったんだ」
「あと少しで、あの役立たずを殺していたところよ」
彼らはまるで、ダンジョンで仲間が死んだことなど忘れてしまったかのように、嬉しそうにギルドへと戻っていった。
こうしてレグルは、魔物がひしめく森の中に一人取り残された。
戦う才能など何一つ持たないまま。
(自分でも信じられない……。俺、あいつらにあんなことを言ったのか……。これからどうするか考えないと……)
レグルはガレットが家賃を払ってくれていた借家で暮らしていた。
しかし、もうそこへ戻ることはできない。
悔しかった。
ただ、それだけだった。
高ぶったアドレナリンによって、レグルはこれからどうするべきかを考え始めた。
王都へ戻ることも、今はできない。
あいつらに殺されるかもしれないと思うと、怖かったからだ。
他に何をすればいいのかも思いつかず、レグルはただ森の中を歩き続けた。
そして、しばらく道を進んだところで、一枚の看板を見つけた。
そこには、村の場所を示す文字が書かれていた。
しかし、村の名前は誰かによって消されていた。
転生してから、レグルはすぐにこの世界の言語と文化を覚えた。
そのため、看板に書かれた文字を読むことには何の問題もなかった。
(村……)
(選択肢はない……)
名前のない村へ向かうことを決めたレグルは、しばらく歩き続けた。
数分ほど歩いたところで、彼は小さな門と高い木製の柵を目にした。
なぜ自分がそこへ向かっているのか、レグル自身にも分からなかった。
ただ、絶望していて、どんな助けでもいいから求めていた。
だから、運に賭けてみることにしたのだ。
そして今、彼は小さな村の入口に立っていた。
コン、コン、コン。
レグルは門を叩いた。
「誰だ?」
「旅の者です。こちらに泊めていただきたいのですが」
レグルが顔を上げると、門の上から小柄な男がこちらを見下ろしていた。
まるでドワーフのような男だった。
「ちょっと待ってろ」
男は面倒くさそうに降りてくると、門を開けた。
すると、レグルの目の前に小さな家々が現れた。
彼は頭をかきながら、村の中へと入っていった。
(どうやら、ここの人たちは親切みたいだ)




