18. 狂気
レグルはセリナとともに地面へ倒れ込んだ。視界がぼやけていく。レグルには、その男が誰なのか分からなかった。
「終わった。ゴブリンの女王は無力化した」
「よくやった、ラーク!」
洞窟の通路から、さらに何人かの冒険者たちが姿を現した。どうやら、ゴブリンの女王が危険だという依頼を受けて、ここへやって来たらしい。
レグルはセリナへ目を向けた。彼女は微笑んでいた。
「ありがとう……」
そう言い残すと、少女は目を閉じ、微笑みを浮かべたまま息絶えた。
「嫌だ……嫌だ、嫌だ、嫌だ……」
レグルは彼女の手を握った。セリナが死んでいることは分かっていた。それでも、少年はそれを信じたくなかった。何かが、彼を死なせずにいた。
「見ろ、こいつはまだ生きている」
「こいつ、一体何者?」
ピンク色の髪をした、自信過剰な少女がレグルのもとへ近づき、彼のそばにしゃがみ込んで、その様子をじっと観察した。
「こいつ、生き……」
突然、レグルは彼女へ向かって手を伸ばし、親指を彼女の右目へ突き立てた。
「きゃあああああああああ!!」
少女は後ろへ飛び退いた。彼女の悲鳴がダンジョンの壁に反響する。
その場にいた全員が、驚きのあまり凍りついた。
レグルは立ち上がった。ラークはレグルへ向けて剣を構え、仲間たちも同じようにさまざまな武器をレグルへ向けた。
レグルは死なずに済んだものの、胸に開いた傷は激しく痛み、その動きを大きく鈍らせていた。
「このクソ野郎を殺せ……」
冒険者たちは負傷したレグルへ向かって歩き出した。
「警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険! 警告:危険!」
「警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています。警告:あなたの精神状態が損傷しています」
「助言:落ち着いてください」
しかし、レグルは聞く耳を持たなかった。
レグルは前方へ手を伸ばした。
「創造」
彼の手が震え、両手の中にミニガンが現れた。
レグルはその武器を握り、引き金を引いた。ミニガンの銃身が回転を始め、徐々に速度を上げながら熱を帯びていった。
「「これは何だ?」
ミニガンが動き始めた。灼熱した弾丸の嵐が冒険者たちへと襲いかかり、耳をつんざくような銃声がダンジョン全体を埋め尽くした。ラークは自分へ向かって飛んでくる弾丸を剣で必死に弾きながら、どうにか石壁の陰へと身を隠した。
ほんの数時間前に出会った少女を失った悲しみと怒りに支配されたレグルは、五人の冒険者たちが倒れるまで撃ち続けた。
レグルが振り返ると、目を傷つけられたピンク色の髪の少女も逃げ出していた。彼女が残した痕跡はあったが、レグルは追いかけようとはしなかった。
突然、心臓に激しい痛みが走り、レグルは片膝をついた。ミニガンが大きな音を立てて地面に落ち、その数秒後、レグルも意識を失った。
「痛い……」
ピンク色の髪の少女は物陰からレグルの様子をうかがっていた。レグルが意識を失ったことを確認すると、彼女はこの機会を利用することにした。
「痛い……怖い……私の目……もうない……右目が見えない……私の綺麗な顔が台無しになった……あなたのせいで……」
少女はスカートの下から毒が塗られた短剣を取り出し、レグルの肋骨の間へ突き立てた。これで終わりにするには十分なはずだったが、少女はそれだけでは気が済まなかった。
少女は立ち上がると、レグルの顔を蹴った。そして、もう一度蹴った。
その後、少女の視線はレグルのそばに落ちていたミニガンへ向けられた。
「もう、あなたには必要ないでしょう」
少女は大きな力を振り絞ってミニガンを持ち上げ、そのまま持ち去った。
レグルは意識を失ったまま、その場に倒れていた。
ラークとピンク色の髪の少女は、倒れた仲間たちを残したままダンジョンを後にした。洞窟には、レグルとセリナ、そして何人かの冒険者たちの遺体だけが残された。
しばらくの間、辺りは静寂に包まれていた。
しかし突然、レグルの身体が光り始めた。




