14. 血の滲む唇
木々は高く、太陽の光は生い茂った葉に遮られて、ほとんど見えなかった。周囲からは葉が擦れる音と、風の静かな囁きが聞こえてくる。少し離れた場所からは、この世界の動物たちが立てる様々な音も聞こえていた。
レグルはすでにダンジョンの近くまで来ていた。エイレル村からそれほど離れていなかったため、走ってきた時間も長くはなかった。
彼はダンジョンの入口の前で立ち止まり、深く息を吸った。
「行こう」
レグルは数歩前へ進み、ダンジョンの中へ入った。入口を越えた瞬間、森の音が背後へ遠ざかる。中は異様なほど静かだった。天井から時折落ちる水滴の音だけが、石造りの壁に反響している。
レグルは立ち止まり、周囲を見渡した。目の前には長い石造りの通路が続いていた。壁には小さな青い結晶が埋め込まれており、その淡い光が通路を照らしている。道を見るには十分な明るさだったが、数十メートル先からはすべてが闇に包まれていた。
(つまり、ブランはこのどこかにいる……)
レグルは短剣を強く握り直し、ゆっくりと歩き始めた。今は余計な音を立てないように気をつけている。あの声が本当にブランの居場所を示したのなら、あとは彼を見つけるだけだ。
しばらく進んだところで、通路の奥から奇妙な音が聞こえてきた。
「シュ……シュ……」
レグルは足を止めた。
(何だ?)
耳を澄ます。
最初は何も起こらなかった。しかし数秒後、再び音が聞こえた。
今度は、かなり近い。
レグルはゆっくりと短剣を構えた。
曲がり角の向こうから、影が現れた。
「グルルル……」
そこにいたのは、狼に似た小さな魔獣だった。目は赤く光り、口から低い唸り声を漏らしている。
(魔獣……)
レグルは攻撃に備えた。
魔獣が地面を蹴った。
レグルは横へ一歩移動して魔獣の突進をかわし、そのまま短剣を振り抜いた。
魔獣は獣のような声を上げて鳴き叫んだ。その叫び声は、レグルの耳をほとんどつんざくほどだった。
「アンダル!」
レグルの背後に巨大な魔法陣が現れた。
そこから螺旋状の魔法攻撃が次々と放たれ、魔獣へと襲いかかる。
爆発音と小さな地響きがダンジョン全体を揺らした。
魔獣は地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
(こんな魔物が第一階層にいるなら、下には一体何が待っているんだ?)
レグルは再び歩き始めた。
魔物はそれほど多くなかった。
ここは、かつてリクが命を落としたダンジョンだ。
時折ゴブリンやスライムが現れる程度で、その数も少ない。
レグルは不思議に思った。
前回来たときは、ここは魔物で溢れ返っていたはずなのに。
「変だな……」
数分ほど進むと、通路が徐々に広がっていった。
やがて目の前に大きな洞窟が現れ、その中央には下へと続く石造りの階段があった。
(第二階層……)
レグルは階段の下を見つめた。
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そこからは、冷たい風が吹き上がってきていた。
(ブラン、待っていてくれ。必ず見つけ出すからな)
レグルは短剣を強く握り直し、階段を下り始めた。




