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冒険者パーティーを追放された俺、実は生産スキルが勇者のスキルより強かった  作者: 月兎
第1章

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12. 優しい触れ合い

 シルラは視線を逸らした。


「シルラ様? 何か気になることでもありますか?」


 少女はベッドから立ち上がると、窓辺まで歩いていき、村人たちを見渡した。そして、シトラと一緒に座っているクララへと視線を止めた。



「ただ……あなたの話では、あの女の子が私の娘で、ブランという男性が私の夫なんですよね。でも、私はその女の子を初めて見るし、ブランという男性についても何も聞いたことがないから、そう言われてもなんだか変な感じがして……」

「分かりました……。あなたが思い出すまでは、なるべくそういうことは言わないようにします」

「ありがとう」


 レグルには分かっていた。


 シルラが彼らを思い出すことはない。


 彼女にできるのは、もう一度、彼らを好きになることだけだった。


 レグルは村人たちのところへ戻ろうと思い、シルラに背を向けた。




「ま、待って……お願い……」

「え?」

「行かないで……。こんな知らない場所に一人でいるの……怖い……」


 レグルはその場で立ち止まり、数秒間、何も答えられなかった。もう少しで部屋を出るところだったため、シルラの言葉は完全に予想外だった。


 少年はゆっくりと振り返り、シルラを見た。彼女はまだ窓辺に立っていたが、今はもう村人たちを見ていなかった。その視線はまっすぐレグルへと向けられており、その表情には不安が浮かんでいる。


 シルラにとって、この家は本当に知らない場所だった。そして、窓の外にいる人々も完全に見知らぬ人たちだった。自分がどこにいるのかも分からず、クララが誰なのかも、ブランが誰なのかも覚えていない。それどころか、この日より前の自分の人生さえ思い出せなかった。


「分かった……。行かないよ」



 シルラは照れくさそうに微笑むと、ベッドに腰を下ろした。


「座ってください。立っていなくてもいいですよ……」

(え……?)

「僕は立っていても大丈夫です。別に疲れていないので」

「お願い……隣に座って……」


 レグルはごくりと唾を飲み込み、ゆっくりとベッドへ近づいた。そして、シルラに言われた通り、その隣に腰を下ろす。


 少年は針のむしろに座っているような気分で、身動き一つ取れなかった。特に、今までとは違うシルラとの距離に、どうしていいのか分からず戸惑っていた。


(何なんだ、この状況……。なんだか気まずい……)


 すると、シルラがレグルの膝にそっと手を置いた。


「ひっ……!」



 突然のことに、レグルの身体がびくっと震える。


「シ、シルラ様?」


 シルラは、レグルがびくっと震えたのに気づき、少し驚いたように彼を見た。まるで自分でも、なぜ彼の膝に手を置いたのか分かっていないようだったが、それでも手を離そうとはしなかった。


 しばらく黙って少年を見つめたあと、シルラは小さく微笑んだ。


「ごめん……驚かせちゃった?」

「い、いえ! 大丈夫です!」


 レグルは慌てて顔を逸らした。顔が少し赤くなり、シルラの手を意識しないように、再び身動きせずに座った。




(なんでこんなに緊張してるんだ……? ただ、僕にそばにいてほしいだけなのに……)

「あなたは……行かないよね?」

「行かないって言ったじゃないですか」

「嘘じゃない?」

「はい、嘘じゃないです」

「なら、よかった……」


(まるで子供みたいだ……。なんかかわいいいな……)



 シルラは少し落ち着いたようだった。それでも、彼女はレグルの膝に手を置いたままだった。そばに誰かがいることで安心しているようだった。


 一方のレグルは、未だにどこを見ればいいのか分からなかった。窓を見たり、床を見たりしながら、必死に今の状況を意識しないようにしていた。


 窓の外には、相変わらず村人たちがいた。その中にはクララもいる。少女は時々こちらの家へ視線を向けていたが、レグルには、今シルラが自分の隣にいることにクララが気づいているのか分からなかった。


(クララ……たぶん、これを見たら辛いだろうな……)


 レグルは重いため息を吐いた。


 今はシルラのそばにいてあげるのが一番だと分かっていた。彼女はすべての記憶を失い、この世界のことも何も知らない。だからこそ、彼女を一人にしたくなかった。


「レグル……」

「はい?」

「少し、この場所について教えてくれない?」


 少年はシルラを見た。


「この場所についてですか?」

「うん。自分がどこにいるのか……少しでも知っておきたいの……」


 レグルは少し考えたあと、村エイレルのことや村人たちのこと、そして今回何が起きたのかをシルラに話し始めた。



 シルラは口を挟むことなく、レグルの話をじっと聞いていた。彼女はその話を聞いても何一つ思い出せなかった。それでも、そばに自分を支えてくれる人がいるということだけで、少しだけ安心することができた。


 そしてレグルは話し続けた。



 これから自分が、シルラがもう一度、この世界に慣れていけるように支えていかなければならない。


 たとえそれが、自分が彼女のために奪った世界だったとしても。

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