11. 襲撃の終わり
シトラは自分の足を見つめ、足の指を動かしてみた。
「すごい! レグルって治癒術師だったんだ!」
「えっと……俺は治癒術師じゃないよ」
レグルは後頭部に手を当て、苦笑いを浮かべた。
「え? 治癒術師じゃないなら、どうしてそんな高位の治癒魔法が使えるの?」
実際には、レグルは治癒魔法を使ったわけではない。
彼がやったのは、シトラの足に足りなかった骨と血液を創り出しただけだった。神経や細胞まですべて頭の中で思い描き、失われた部分を完璧に再現したのだ。
レグルは、自分の能力についてもっと詳しく知るまでは、そのことを黙っておくことにした。
「俺にもよく分からないんだ……」
シトラは疑うような目でレグルを見つめながら、ゆっくりと立ち上がった。
「そう。でも、とにかく助けてくれてありがとう、レグル」
少女は満面の笑みを浮かべ、心から嬉しそうに笑った。
レグルは頷くと、他の村人たちを助けるために歩き出した。
やがて辺りが暗くなり始め、生き残った村人たちは村の中央へと集まった。誰が生き残っているのかを確認するためだった。
集まった人々の中央へ、少し前にこの村へやって来た村長が進み出る。
「村の皆さん、エイレルの村へようこそ……と言いたいところですが、今はそんな場合ではありませんな。本日の被害について、心からお悔やみ申し上げます。どうやらゴブリンの女王セリーナは、我々との契約を破棄することを決めたようです」
「ゴブリンの女王? それって誰?」
レグルはシトラとクララと一緒に立っていた。クララは父親の姿がここにないことを知り、ひどく落ち込んでいる。
レグルの疑問に、シトラが答えた。
「彼女の名前はセリーナ・カンチェル。ゴブリンたちを支配していて、食料を手に入れるために村を襲っているの」
「だったら、どうして人まで殺すんだ? 血を流さなくても、食料だけ盗めばいいだろ」
「………………分からない。たぶん、戦わなければ私たちが食料を渡さないと思っているんじゃないかな……」
生き残った村人たちは、今回の襲撃について口々に話し、怒りや悲しみをぶつけ合っていた。
家は焼かれ、破壊され、村の食料は奪われた。そして、大切な家族や子供、両親までもが命を奪われている。
村全体が涙と悲しみに包まれていた。
クララは地面に座り込んでいた。
そんな彼女のもとへ、レグルが歩み寄る。
「シルラさんは?」
「………………家で寝てる」
「そうか……」
レグルは深く息を吐いた。
「クララ。俺が必ず君のお父さんを見つけるよ」
少女の視線がレグルへと向けられる。
その瞳には、希望を失ったような色と、疲れ切った様子が浮かんでいた。
「お父さんを……見つける? でも……もし死んでいたら?」
「………………遺体はどこにもなかった。だから、生きている可能性のほうが高いと思う」
「もし……ゴブリンたちが遺体を持っていって、食べるために……」
「それはないと思う。あいつらは村の食料を全部奪って、すぐに逃げていったから」
クララは何も答えなかった。
レグルはそのまま家へ向かい、シルラの様子を見に行った。
家の中へ入ると、シルラはベッドの上に座っていた。
「シルラさん? 起きていたんですか?」
「うん」
レグルはベッドの隣に置かれていた椅子へ腰を下ろした。
そして、シルラが何度も周囲を見回していることに気づいた。
まるで、何かを探しているようだった。
「あなたの旦那さんは、俺が必ず見つけます……」
「私に……旦那さんがいるの?」
(忘れた……)




