10. 血で汚れた白いストッキング
レグルは立ち上がり、辺りを見回した。家々はゴブリンたちが放った火矢によって燃えていた。人々は動かないまま倒れていたが、ブランの一行の姿だけはどこにも見当たらず、少年は不安になった。
レグルは村の外へ走り出すと、最後のゴブリンが茂みへ飛び込み、そのまま逃げていくのを目にした。
(どうやら、撤退しているみたいだ)
レグルは村へ戻り、家の方へ向かった。中へ入ると、クララがシルラの膝の上で眠っているのが見えた。
こんな状況で、どうして眠れるんだ……。
レグルが不思議に思っていると、シルラが指を口元に当てる仕草をした。
「しーっ」
「助けて!」
突然、隣の家から女性の助けを求める声が聞こえてきた。
レグルは迷うことなく外へ飛び出し、隣の家へ駆け込んだ。
そこで彼が見たのは、家の瓦礫に押しつぶされた少女だった。少女は床に倒れたまま、折れた足に乗っている大きな石を動かすことができずにいた。
「レグル? お願い、助けて……」
「シトラ! 今助ける!」
レグルはシトラのもとへ駆け寄り、彼女の足に乗っている大きな石を押し退けようとした。
その瞬間、シトラが痛みに耐えきれず叫び声を上げた。
「きゃああああ! ごめん……痛い……」
(何か方法はないか?)
「回答:もちろんあります。瓦礫をインベントリへ送ってください」
(そうか! ありがとう!)
レグルは空間をまるでジッパーのように開いた。
すると、周囲に散らばっていた瓦礫が次々と吸い込まれていき、あっという間に消えていった。
シトラは目を見開いた。
しかし、その直後、自分の足を見た瞬間、表情が恐怖に変わった。
「これ……私の足……?」
シトラは数秒間、自分の足を見つめていた。まるで自分の目を信じられないかのようだった。痛みのせいでほとんど動くこともできず、周囲には崩れた家の瓦礫が散らばっている。レグルは素早く彼女の状態を確認し、ここに残しておくわけにはいかないと判断した。この家はいつ完全に崩れてもおかしくない。
「動かないで。今、ここから出してあげる」
「でも……私の足……感覚がない……」
(意外と自分の足を見ても、かなり落ち着いているな)
「今は考えなくていい。まずはここから出よう」
レグルはシトラを慎重に抱き上げ、家の外へ運び出した。少女は最初、驚いたようにレグルを見たが、何も言わなかった。
外へ出ると、シトラは破壊された村と、負傷者を助けようとしている何十人もの人々を目にした。その表情がすぐに変わる。
「私の家族は……?」
レグルは黙り込んだ。
自分自身、村の住民がどれだけ生き残っているのか、まだ分かっていなかった。だから、何と答えればいいのか分からなかった。
「シトラ!」
崩れた家の陰から、腕に包帯を巻いた若い男が走ってきた。シトラの姿を見つけると、すぐに彼女のもとへ駆け寄る。
「生きてたのか! もうダメかと思った……」
「レオン……」
シトラはレオンを見つめ、ほっと息を吐いた。
「他のみんなは?」
レオンは視線を落とした。
「分からない。ゴブリンが門を突破した後、みんな散り散りになった。俺はお前を探していたんだけど、その途中で襲われたんだ。目を覚ました時には、村はもうこんな状態だった」
レグルはシトラを地面に下ろし、辺りを見回した。戦える人間は、もうほとんど残っていない。何人かの村人は燃えている家の火を消そうとし、別の者たちは負傷者を安全な場所へ運んでいる。
しかし、ゴブリンの襲撃が本当に終わったのかどうかは、誰にも分からなかった。
レグルの視線は生き残った者たちの中からブランを探していた。
だが、どこにもその姿は見えなかった。
「シトラ……その足……」
レオンがシトラの足の状態に気づいた。
シトラはもう一度、自分の足へ視線を落とした。
先ほどまでは、アドレナリンとショックのせいで、自分がどれほど深刻な状態なのか理解していなかった。
しかし今になって、少しずつ現実を理解し始める。
自分の右足の感覚が、まったくない。
レグルは、シトラの目に溜まっていく涙に気づいた。
「俺が治してみる……」
レグルはシトラのもとへ近づき、血で汚れた彼女の靴を脱がせた。
「きゅ……」
シトラは小さく声を漏らし、恥ずかしそうに顔を赤くした。
レオンはまるで雷に打たれたようにビクッと体を震わせ、視線を逸らした。
「俺は他のみんなを手伝ってくる」
そう言って、レオンは慌ててその場を離れていった。
レグルはシトラの足の裏に手を当てた。
すると、彼の手のひらが少しずつ温かくなっていく。
シトラは顔を赤くし、ときおり慣れない感覚に小さく声を漏らした。
「治療!」
次の瞬間、レグルの手のひらから柔らかな光が広がった。
シトラの傷が目の前で回復していく。
失われた血が戻り、折れていた骨もゆっくりと元の状態へ戻っていった。
数秒後、治療は完了した。
「終わった」




