第8音 ノイザー
雨。
静かな夜だった。
ヒーロータワー最上階。
重苦しい空気の中、プロヒーローたちが集められていた。
巨大モニターには、先日の戦闘記録。
そして。
そこに映る存在――
ディストーション。
会議室には沈黙が流れていた。
リズ・クロムが震える声で言う。
「……確認されました」
「知性型ノイズ生命体」
「コードネーム――“ノイザー”」
ミオが眉をひそめる。
「ノイザーって、敵全部の名前じゃなかったの?」
バルクラインが低く答える。
「違う」
「本来、“ノイザー”とは――」
彼はモニターを切り替える。
そこに映ったのは。
4年前の映像。
崩壊する都市。
燃える空。
そして。
無数の黒い人影。
突然現れた謎の組織。
《ノイザー》
彼らは宣言した。
> 「世界はノイズに満ちている」
>
> 「人間という“不純物”を消去する」
その日から戦争が始まった。
ヒーロー協会とノイザーの全面戦争。
後に呼ばれる。
## 《第一次ノイズ大戦》
モニターに五つの影が映る。
「ノイザーには最高幹部がいる」
「――破音五人衆」
一人目。
## 《ディストーション》
歪みの音を操る異形。
二人目。
## 《デッドエコー》
死者の声を再現するノイズ使い。
三人目。
## 《ハウリング》
暴走音波で都市を崩壊させる怪物。
四人目。
## 《サイレンス》
“音そのもの”を消す女。
五人目。
画面が乱れる。
ノイズ。
「……記録なし?」
リズが険しい顔になる。
「存在以外、何も分かっていません」
次の映像。
そこにいたのは――
白銀のロボットヒーロー。
圧倒的だった。
一人で戦場を変える存在感。
「この人……」
ミオが息を呑む。
バルクラインが静かに言う。
「4年前、最強だったヒーロー」
## 《ゼロビート》
「彼だけが、ノイザーのボスに届いた」
映像の中。
ゼロビートが巨大な黒い存在へ一撃を放つ。
世界が白く染まる。
そこで映像は終わる。
「……倒したんじゃないの?」
ミオが聞く。
誰も答えない。
代わりにグラヴィナが呟く。
「消えたんだよ」
「ゼロビートも、“奴”も」
その瞬間。
警報。
真っ赤なランプ。
【全域ノイズ警報】
空気が凍る。
ビートが震える。
「……来る」
窓の外。
空が黒く染まり始める。
音が消えていく。
完全な静寂。
ミオが嫌な汗を流す。
「なに……これ……」
都市上空。
巨大な黒い円が開く。
そこから。
“何か”が降りてくる。
人型。
長い黒コート。
顔は仮面で覆われている。
だが。
存在感だけで全員が理解する。
格が違う。
ソラが震える。
「……息、できない」
ルナも初めて恐怖を浮かべる。
「音が……消えてる」
その存在は静かに街を見下ろす。
そして。
ゆっくり口を開く。
「――まだ残っていたか」
声だけで空間が軋む。
ミオが睨む。
「……あんた誰」
沈黙。
そして。
世界そのものが震える。
## 《終焉の指揮者》
# ノクターン
ノイザーを統べる者。
破音五人衆を従える絶対存在。
4年前。
最強のヒーロー・ゼロビートと戦い、消滅したはずの怪物。
ノクターンが一歩踏み出す。
その瞬間。
都市中の音が消える。
風も。
機械音も。
鼓動すら遠くなる。
「っ……!?」
ミオのスーツが停止しかける。
ビートが落下。
「システム……停止……」
プロヒーローたちですら動けない。
ノクターンは静かにミオを見る。
仮面越し。
なのに。
確実に視線が合った。
「……見つけた」
ミオの背筋が凍る。
「お前の音は――」
ノクターンがわずかに笑う。
「“彼”に似ている」
その瞬間。
ノクターンの背後に、四つの巨大な影が現れる。
破音五人衆。
世界最悪の敵組織が、再び動き始めた。




