第7音 シンクロ100%
夜の学校。
巨大ノイズが空を覆う。
街中の音を吸収しながら、その身体はさらに膨れ上がっていた。
信号は沈黙し、スマホも音を失う。
世界から“音”が消えていく。
ミオたちの周囲だけが、わずかに音を保っていた。
ビートが必死に叫ぶ。
「あと数分で都市機能停止!」
「そんなのアリ!?」
ソラが驚く。
ルナは静かにノイズを見る。
「……あれ、誰かいる」
ミオも気づく。
巨大ノイザーの中心。
黒いコアの奥。
人影。
「やっぱり……」
その瞬間。
ノイザーが低く笑った。
「いい音だ」
空気が震える。
「人間の感情は……実に美しい」
ミオが目を見開く。
「喋った……!?」
黒い靄が集まり、人型になる。
細身のシルエット。
コートのようなノイズ。
顔には歪んだヘッドホン。
「初めまして、音の少女」
不気味に微笑む。
「俺は――」
#《ディストーション》
「ノイザーの進化個体だ」
プロヒーローたちの顔色が変わる。
リズが震える声を出す。
「知性持ち……!?」
「そんな存在、記録にない!」
ディストーションはミオを見つめる。
「君の音は特別だ」
「……気持ち悪い」
「はは、辛辣だね」
次の瞬間。
ディストーションが指を鳴らす。
轟音。
バルクラインが吹き飛ぶ。
「ぐっ!?」
グラヴィナの重力場が砕ける。
「うそでしょ!?」
プロヒーローたちが一瞬で押される。
「弱いなぁ」
ディストーションが笑う。
「ただ壊すだけの音なんて、退屈だ」
ミオは歯を食いしばる。
(強すぎる……!)
その時。
ソラがミオの肩を叩く。
「大丈夫?」
ルナも隣に来る。
「呼吸、乱れてる」
ミオは少し俯く。
「……怖くないわけじゃない」
今までの敵と違う。
明確な意思。
明確な悪意。
だがソラは笑う。
「じゃあさ」
ルナも小さく微笑む。
「一人で背負わなきゃいい」
ミオが少し驚く。
「ビート!」
「了解!」
ミオがデバイスを起動。
「ジャンル選択――EDM!」
青い光が走る。
高速リズム。
電子音。
ソラとルナも装置を展開。
「「シンクロ接続!」」
二人の動きが完全一致する。
さらに。
ミオのリズムと重なる。
ビートが叫ぶ。
「三重同期開始!」
空間全体がライブ会場のように変わる。
巨大な音の波。
リズムエフェクト。
ディストーションが初めて驚く。
「……ほう?」
ミオが走る。
ソラが前衛。
ルナが補助。
完璧な連携。
「右!」
「左!」
「今!!」
ギターアックスが閃く。
ソラの双剣がノイズを裂く。
ルナのフィールドが音を安定化。
ディストーションが後退する。
「面白い……!」
だが。
ディストーションが黒い音波を放つ。
「っ!?」
三人の動きが乱れる。
同期率低下。
92%
88%
「まずい!」
ソラが叫ぶ。
その時。
ミオがギターを強く鳴らす。
ドンッ!!
「合わせて!!」
その音は。
まるで心臓の鼓動。
ソラとルナが同時に笑う。
「「――了解!!」」
同期率再上昇。
95%
98%
99%
そして。
限界突破。
100%を超えた瞬間。
三人の周囲に巨大な光の譜面が展開される。
ビートが絶叫。
「未知領域!!」
ミオの髪が光に揺れる。
ソラとルナの装置が変形。
三人の音が完全に一つになる。
ディストーションでさえ目を見開く。
「それは……!」
ミオが笑う。
「これが――」
「「「私たちの音!!」」」
巨大な音の奔流が放たれる。
夜空を貫く、超巨大ライブのような一撃。
ディストーションが初めて苦しそうに歪む。
「ぐ……あぁぁぁ!!」
爆発。
ノイズが吹き飛ぶ。
静寂。
だが。
煙の向こうで、ディストーションは笑っていた。
「最高だ……」
身体が崩れながらも、楽しそうに。
「もっと聞かせてくれ」
「音羽ミオ」
そして消える。
静かな屋上。
ミオは座り込む。
「疲れたぁ……」
ソラがジュースを渡す。
「はい!」
ルナは隣に座る。
「今日から友達」
「決定なんだ」
ミオが笑う。
ビートも嬉しそうに回転する。
「ミオ、初めて同年代のヒーロー友達できた!」
「言い方やめて」
だがその時。
遠くのビルの上。
誰かが三人を見ていた。
黒いフード。
赤いノイズ。
「……見つけた」
新たな敵が、動き始める。




