第5音 響き始めた疑惑
ヒーロータワーから戻った翌日。
ミオは机に突っ伏していた。
「疲れたぁ……」
「ミオ、昨日プロヒーローに囲まれてたもんね」
ビートが机の中でふわふわ浮く。
「しかも尋問みたいだったし……」
だが。
問題は別にあった。
「……ねぇ、ミオ」
後ろから声。
振り向くと、ユナがいた。
「昨日、どこ行ってたの?」
「えっ」
「放課後。急にいなくなったよね」
ミオの顔が引きつる。
(鋭い……!)
「ちょ、ちょっと買い物!」
「ふーん?」
完全に疑っている。
ヒーロータワー。
分析室。
リズ・クロムが大量のデータを見つめていた。
「面白い……」
モニターに映るのは、ミオの戦闘記録。
「音楽による感情安定化。ノイズ中和。音波制御……」
「こんなの、今までのヒーロー理論にない」
背後から声。
「危険性は?」
バルクラインだった。
リズは少し考える。
「制御できれば救世主級」
「失敗すれば?」
「街ごと共鳴暴走」
沈黙。
「だから協会が気にしてるんですよ」
昼休み。
ミオは屋上へ逃げ込む。
「もう絶対ユナ気づいてる……」
「99%」
「やめて数字で言わないで」
その時。
屋上の扉が開く。
「やっぱりここにいた」
ユナ。
ミオが固まる。
「ミオさ」
「な、なに?」
ユナは真剣な顔で言う。
「あなた、“あのヒーロー”なんでしょ?」
沈黙。
風だけが吹く。
ビートがフリーズする。
「CPU停止」
「止まるな!」
ミオは慌てる。
「ち、違うって!」
「でも声も似てるし!」
「似てない!」
「あと昨日、煙の中から出てきた時――」
その瞬間。
ビートの目が真っ赤になる。
「超高濃度ノイズ反応!!」
空気が震える。
ミオの表情が変わる。
「……近い」
突然。
学校中のスマホやスピーカーからノイズが鳴り始める。
キィィィィィ!!
「なにこれ!?」
生徒たちが騒ぎ始める。
窓ガラスに黒い波紋が走る。
「……まずい」
ビートが震える。
「今までのと違う」
校庭の中央。
地面から巨大な黒い塊が現れる。
その姿はまるで――
巨大なアンプ。
スピーカーのような顔面。
全身から轟音を放つ異形。
「グオオオオオオ!!」
衝撃波で校舎が揺れる。
ミオは前へ出る。
「ユナ、逃げて」
「ミオ……?」
「今は説明してる暇ない!」
ミオの目が本気だった。
ユナは言葉を失う。
そして理解する。
(やっぱり……)
ミオはデバイスを握る。
「スーツ起動!」
光が弾ける。
ユナの目の前で、ミオが変身する。
「……っ!」
ついに見られた。
秘密が。
全部。
「ジャンル選択――ROCK!!」
赤黒い光。
ギターアックスが展開される。
ノイザーが咆哮。
轟音が学校全体を揺らす。
「ビート!」
「解析中!」
ミオは走る。
ギターを振り抜く。
ドンッ!!
衝撃波が炸裂。
だがノイザーは笑うようにノイズを返す。
「っ!?」
音が乱される。
「ミオ! あいつ音を食ってる!」
「なにそれ最悪!」
ノイザーは周囲の音を吸収する。
悲鳴。機械音。振動。
どんどん巨大化していく。
「出力上昇止まらない!」
ミオが吹き飛ばされる。
「きゃあっ!」
壁へ激突。
ユナが思わず叫ぶ。
「ミオ!!」
その瞬間。
ノイザーが反応する。
「……え?」
ユナの声。
その“感情”に。
ノイザーがさらに膨れ上がる。
空が割れる。
高速飛行音。
ドゴォォン!!
バルクライン降下。
さらに――
「派手に暴れてるねぇ!」
重力を操るグラヴィナ。
「学校ごと潰す気?」
プロヒーローたちが到着する。
ミオは立ち上がる。
「遅い!」
「学生が無茶するな」
バルクラインが構える。
だが。
ノイザーはさらに進化する。
身体から大量のスピーカー腕を展開。
「……成長してる?」
グラヴィナの顔から笑みが消える。
「これ、普通じゃない」
ノイザーの中心。
そこに、一瞬だけ“人影”が見える。
誰かが笑っていた。
「いい音だ」
低い声。
「もっと聞かせろ」
ミオが目を見開く。
「……誰?」
そして。
巨大ノイザーが第二形態へ変貌する。




