第4音 ヒーロー達の音
夜。
都市中央にそびえる巨大施設――
ヒーロータワー
正式名称、ヒーロー統括管理局。
公認ヒーローたちの活動管理、任務指令、ノイザー対策を行う中枢施設だ。
一般人は立ち入り禁止。
その最上階会議室では、複数のプロヒーローたちが集まっていた。
巨大モニターに映るのは――
音楽を使って戦う仮ヒーローの映像。
つまり、ミオ。
「また現れたのか」
腕を組む大男、バルクラインが低く言う。
その向かいでは、白衣姿の女性ヒーローが映像を分析していた。
「興味深いですねぇ」
彼女の名は――
《解析者》リズ・クロム
科学特化のプロヒーロー。
「音波兵器とも違う。精神干渉系能力にも近い」
「だが非公認だ」
別のヒーローが口を挟む。
高速機動型ヒーロー――
《閃光脚》ライトニング・ステップ
「未成年が勝手に戦うなんて危険すぎる」
「でも実力は本物でしょ?」
ソファで寝転がる女性ヒーローが笑う。
#《重力魔女》グラヴィナ
「少なくとも、その辺の新人より強い」
会議室がざわつく。
今、ヒーロー界では“音楽ヒーロー”の存在が大きな話題になっていた。
「……なんでこんなことに」
ミオは黒い車に乗せられていた。
隣にはバルクライン。
「逃げたら?」
「捕まえる」
「ですよねー……」
ビートが小声で言う。
「ミオ、完全包囲されてる」
「知ってる」
学校帰り。
突然バルクラインに呼び止められ、そのまま半強制的に連れて来られていた。
「安心しろ。拘束ではない」
「全然安心できないんだけど」
巨大エレベーター。
数え切れないヒーローたち。
ミオは完全に圧倒される。
「うわぁ……」
テレビでしか見たことがない有名ヒーローたちが普通に歩いている。
「本物だ……」
ビートは逆にテンションが上がっていた。
「サイン欲しい」
「やめて」
扉が開く。
中にいるプロヒーローたちの視線が、一斉にミオへ向く。
「……え、怖」
ミオは思わず後退る。
グラヴィナが笑う。
「ほんとに子供じゃん」
「年齢は?」
リズが聞く。
「16」
会議室が少し静かになる。
「若すぎるだろ……」
「しかも独学?」
「信じられん」
ミオはムッとする。
「悪い?」
「いや」
バルクラインが言う。
「むしろ異常だ」
「異常って言うな!」
リズが興味津々で前に出る。
「そのスーツ、自作ですよね?」
「う、うん」
「エネルギー源は?」
「音響共振コア」
「えっ、自作で!?」
今度はヒーロー側が驚く。
ミオは首を傾げる。
「そんな変?」
「変です」
即答だった
「しかし」
ライトニング・ステップが真面目な顔になる。
「なぜ“音楽”なんだ?」
「普通の武装じゃダメだったのか」
ミオは少し考える。
そして静かに言う。
「……音って、人を変えるから」
「?」
「怖がってる人を落ち着かせたり、元気づけたりできる」
「逆に、壊すこともできる」
ミオは自分の胸元を軽く叩く。
「だったら私は、“助ける音”で戦いたかった」
会議室が静かになる。
誰も少しだけ言葉を失う。
グラヴィナがニヤッと笑う。
「面白い。試してみる?」
「へ?」
次の瞬間。
重力が変化する。
「うわっ!?」
ミオの身体が床へ押し付けられる。
「模擬戦だよ、新人ちゃん」
「急すぎる!!」
ミオは即座にスーツを起動。
「ジャンル選択――CLASSIC!」
白銀のラインがスーツに走る。
クラシックフォーム。
精密制御と広域感知に特化した形態。
「へぇ、また変わった」
グラヴィナが笑う。
重力弾が飛ぶ。
ミオは音の波で軌道を読み、回避。
「見えてる……!」
「今の避ける!?」
プロたちがざわつく。
ミオはマイクを構える。
静かな旋律。
空気が整う。
暴れていた重力がわずかに安定する。
「重力の“リズム”を合わせた……?」
リズが驚愕する。
「理論無視じゃないですかこれ」
その時。
警報が鳴り響く。
【高濃度ノイズ反応確認】
空気が変わる。
バルクラインが立ち上がる。
「来たか」
モニターに映るのは――
都市全域に広がる巨大なノイズ反応。
今までとは比べ物にならない。
ビートが震えた声を出す。
「……これ、ヤバい」
ミオも感じていた。
音が。
街そのものが、軋んでいる
会議室を出ていくヒーローたち。
その中で、バルクラインがミオを見る。
「非公認」
「なに?」
「今回は特別だ」
彼は振り返らず言う。
「……来い」
ミオは少し驚き――
そして笑う。
「言われなくても」
音楽が、再び始まる。




