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第30音 特別な時間と冷たい風

――2年前。


中学三年。


夏。


ミオにとって。


少し特別な時間だった。


修学旅行


新幹線。


騒がしい車内。


「うおぉぉ旅行だァ!!」


「寝るなよー!」


クラス全体が盛り上がっていた。


ミオも少し笑っていた。


その理由は。


「また同じ班だね」


レンだった。


ミオが少し照れる。


「……うん」


偶然。


また同じ班。


周りからは。


「お前ら仲良いなー!」


なんて言われたり。


ミオはその度に赤くなっていた。


ビートが小声で言う。


「分かりやすい」


「うるさい!」


観光地。


食べ歩き。


写真。


自由行動。


全部。


レンと一緒だった。


レンは本当に優しかった。


荷物を持ってくれたり。


迷子になりそうな子を助けたり。


疲れてる人に気づいたり。


自然にできる人だった。


ミオはそんなレンを見ていた。


気づけば。


目で追っていた。


旅館。


班ごとの自由時間。


みんなでトランプ。


大笑い。


ミオも久しぶりに心から笑っていた。


その後。


少しだけ外へ出る。


夜風。


静かな空。


レンも隣へ来た。


「楽しい?」


ミオは笑う。


「うん」


本当に。


レンは空を見ながら言う。


「こういう時間が続けばいいのにな」


ミオが少し黙る。


その言葉。


なぜか胸に残った。


修学旅行最終日。


帰り道。


レンが言う。


「夏休みさ」


「どっか遊び行かない?」


ミオの心臓が跳ねる。


「……え」


レンは笑う。


「嫌ならいいけど」


ミオは慌てる。


「い、嫌じゃない!」


「行く!」


レンが少し笑う。


「じゃあ決まり」


ミオはその帰り道。


ずっと顔が熱かった。


ビートが呆れる。


「青春してる」


「うるさいなぁ!!」


待ち合わせ場所。


駅前。


ミオは30分前に来ていた。


私服。


髪も少し整えて。


そわそわしていた。


「まだかな……」


時間が過ぎる。


10分。


20分。


1時間。


レンは来なかった。


メッセージもない。


ミオは不安になる。


「……何かあったのかな」


その日は結局。


来なかった。


夏休み明け。


ミオは急いで教室へ行く。


「レン!」


だが。


席は空。


先生が静かに言う。


「天城は転校した」


ミオの思考が止まる。


「……え?」


「急な家庭事情らしい」


それだけだった。


連絡先も繋がらない。


家も分からない。


まるで。


最初からいなかったみたいに。


ミオは呆然と席を見る。


心にぽっかり穴が空いた。


「……レン」


ミオが目を開ける。


崩壊した研究所。


瓦礫。


赤い警報の残響。


現実へ戻る。


どうやら。


レゾナンスたちとの接触後。


瓦礫で頭を打ち。


気絶していたらしい。


ビートが慌てて飛んでくる。


「ミオ!!」


ミオがゆっくり起き上がる。


頭が痛い。


でも。


夢みたいに見ていた過去が。


妙に鮮明だった。


レン。


あの夏。


あの笑顔。


ミオが小さく呟く。


「……どこ行ったんだろ」


胸が少し痛む。


理由は分からない。


ただ。


今思い返すと。


レンの目は時々。


どこか寂しそうだった。


研究所は崩壊寸前だった。


ビートが言う。


「早く出よう」


ミオは頷く。


瓦礫の中を歩く。


外へ出ると。


夜明け。


冷たい風。


遠くにはヒーロー協会本部が見えた。


ミオは研究所を振り返る。


失われた過去。


原初音。


ゼロビート。


そして。


レン。


全部が繋がり始めている気がした。


でも。


まだ答えは分からない。


ミオは拳を握る。


「……戻ろう」


ビートが隣へ飛ぶ。


「うん」


二人は歩き出す。


迫り来る戦いへ向かって。


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